【世界広布の源流 青年に語る創価の魂】第28回 小説「新・人間革命」完結から5周年

·  師弟の精神を伝える一書

· 〈出席者〉池田主任副会長、梁島男子部長、林池田華陽会委員長、田島学生部長、先﨑女子学生部長

「さあ、共に出発しよう! 命ある限り戦おう! 第二の『七つの鐘』を高らかに打ち鳴らしながら、威風堂々と進むのだ」――小説『新・人間革命』連載最終回の舞台となった本部幹部会で、世界の青年に励ましを送る池田先生(2001年11月12日、東京戸田記念講堂で)。男子部・女子部の結成50周年を記念する集いでもあった

 ◆先﨑 まもなく、学会にとって幾重にも意義深い佳節である9月8日を迎えます。特に本年は、小説『新・人間革命』の連載完結から5周年を刻みます。
  
 ◇池田 連載完結に先立つこと1カ月前の2018年(平成30年)8月6日――。「広島原爆忌」であるこの日、池田先生は『新・人間革命』を脱稿されました。
 また、この日は1993年(同5年)に先生が、『新・人間革命』の執筆を開始された「起稿の日」でもあります。
 先月、起稿30周年を記念して、インド・ガンジー研究評議会議長であるニーラカンタ・ラダクリシュナン博士のインタビューが、本紙に掲載されました(8月5日付)。
 博士は、93年の「起稿の日」に先生と会見された時のことを語り、先生から小説の具体的な構想を聞いたことについても言及しています。
 また、「(池田)先生に直接、接する機会はなくても、先生を自身の師匠と決めて、自らの人生を開いていく人が、世界には数えきれないほどいます」と述べ、「この師弟の力の淵源は何なのか」と自問します。
 そして、「小説『新・人間革命』を学び、実践する中で、その師弟不二の精神に迫っているのでしょう」との結論を導き出します。
 博士は、ガンジー研究の第一人者ですが、直接ガンジーと会ったことはありません。ガンジーの高弟であったゴヴィンダン・ラマチャンドラン氏に師事し、マハトマ(偉大なる魂)の研究を重ねてきました。
 研究を通して、博士の中で、具体的な“ガンジー像”が形成されていきます。その“ガンジー像”が、池田先生の姿と一致したのです。だからこそ、博士は先生のことを「生きているガンジー」とたたえたのです。
 先月10日、本紙に掲載された先生の随筆に、こうあります。
 「『創価三代の師弟の魂』を受け継ぐ若人とは、この書を通し、いつでも、どこでも、未来永遠に対話が続けられると確信する」(「随筆『人間革命』光あれ」〈未来の勝利は今にあり〉)
 「この書」とは、小説『人間革命』『新・人間革命』のことです。
 苦難の壁にぶつかった時こそ、小説を開き、師との対話を通して、自らの人生を切り開いていってほしいと思います。
  
 ◆梁島 連載完結からの5年間で、小説研さんの潮流が大きく広がっています。青年部では2020年(令和2年)、「新・人間革命」世代プロジェクトが開始。山本伸一の戦いを学び、それぞれの使命の場で実践を続けています。
  
 ◇池田 7月の本部幹部会で、コートジボワール創価学会のピエール・ヴェ理事長が、小説『人間革命』『新・人間革命』を学び、直面した広布破壊の烈風を乗り越えたことを発表しました。世界各地で、小説研さんの機運が高まっています。
 小説が連載された1993年から2018年の25年間は、創価学会が宗門の権威主義の鎖を断ち切り、世界宗教へと飛躍した期間でもありました。
 先生は日本中、世界中を駆け巡り、同志の激励や各界の識者との語らいをされながら、執筆を続けられました。
 10年(平成22年)6月3日の本部幹部会の前夜、先生は、こう強調されます。
 「弟子の君たちが、団結して、しっかりやりなさい。皆が、創価学会のすべての責任を担って戦う時が来ているのである」「私を頼るのではなく、君たちが全責任をもって、やる時代である。私は、これからも君たちを見守っているから、安心して、総力を挙げて広宣流布を推進しなさい」
 後事の一切を託すことを宣言されたのです。そして、幹部会の席上、第3代会長辞任直後の1979年(昭和54年)5月3日に認められた「大山」「大桜」の揮毫を、初めて披露していただきました。
 この本部幹部会以降、先生の広布の闘争は、『新・人間革命』をはじめとする執筆活動が中心となっていきます。

1993年8月6日、長野研修道場でラダクリシュナン博士を迎える山本伸一(小説『新・人間革命』第30巻〈上〉「雌伏」の章から、内田健一郎画)

広布の使命果たす永遠の後継の流れ

 ◆田島 本部幹部会が開かれた2010年6月3日、本紙で第23巻「敢闘」の章の連載がスタートしています。
  
 ◇池田 「敢闘」の章の舞台は、男女青年部が結成されて25年となる1976年(昭和51年)7月から始まります。
 冒頭、「時代も、社会も、時々刻々と変化を遂げていく」との一文に続き、次のように記されています。
 「いかに時代や環境が変わろうが、絶対に変わってはならないものがある。それは、広宣流布に生き抜く『創価の師弟の精神』である。(中略)山本伸一は、男女青年部が結成二十五周年を迎え、広宣流布の新しい時代に入った今こそ、後継の青年たちに、その精神を脈々と伝え抜いていかねばならないと考えていた」
 まさにこの言葉通りに、2010年以降、先生は、『新・人間革命』を通して、「創価の師弟の精神」を青年たちに教えてくださったのだと思います。
 10年から連載完結までの8年間を振り返ってみると、広宣流布大誓堂の完成(13年)、創価学会会則「教義条項」の改正(14年)、創価学会会憲の制定(17年)など、学会にとって、未来万代にわたる堅固な基盤を整えるための重要な期間とも重なっています。
 特に16年には、会則の前文に「創価学会仏」との言葉が加えられ、学会の宗教的独自性がさらに明確になりました。「創価学会仏」については、『新・人間革命』第30巻〈上〉「大山」の章に詳述されています。
 法華経には、さまざまな仏が、それぞれの世界の衆生を教化する姿が説かれます。不軽品に登場する「威音王仏」は、人々に法を説き、入滅しました。その後、次に現れた仏も「威音王仏」と名乗ります。そして次の代、さらに次の代へと続き、「二万億」もの威音王仏が出現し、同じ名前で長い歳月をかけて、衆生を救ってきたと説かれています。
 戸田先生は、“これは、威音王仏の名を冠した「組織」「和合僧団」とはいえまいか”と洞察され、「未来の経典には、『創価学会仏』という名が厳然と記されるのだよ」と語られました。
 同章には、「『創価学会仏』を永遠ならしめていく要件」について、3点挙げられています。
 ①一人ひとりが「広布誓願」の生涯を生き抜くこと②「師弟不二」の大道を歩み抜くこと③「異体同心」の団結、です。
 さらに、こう記されています。
 「学会は、『創価学会仏』なればこそ、永遠なる後継の流れをつくり、広宣流布の大使命を果たし続けなければならない。また、それゆえに、第六天の魔王は、牙を剝いて襲いかかるのである」
 ここに、青年部の使命もあります。皆さん一人一人が力を磨き、いかなる障魔の嵐にも一歩も退かず、自身の人間革命に挑んでいってこそ、後継の流れは開かれていきます。
  
 ◆林 第30巻〈下〉の「あとがき」をつづられたのも、連載が完結した2018年(平成30年)9月8日でした。
  
 ◇池田 1957年(昭和32年)9月8日、戸田先生が「原水爆禁止宣言」を発表されます。
 この歴史的宣言の意義をとどめ、恩師の平和への思いを胸に、「あとがき」を執筆されたことは言うまでもありません。
 先生は記されています。
 「小説『新・人間革命』の完結を新しい出発として、創価の同志が『山本伸一』として立ち、友の幸福のために走り、間断なき不屈の行動をもって、自身の輝ける『人間革命』の歴史を綴られんことを、心から念願している」
 さあ、連載完結5周年の「9・8」から、新たな決意で、師弟共戦の凱歌の歴史をつづろうではありませんか!

池田主任副会長に話を聞く梁島男子部長、林池田華陽会委員長、田島学生部長、先﨑女子学生部長(学会本部別館で)

【参照】
 ◆小説『新・人間革命』=第23巻「敢闘」、第30巻〈上〉「大山」、第30巻〈下〉「あとがき」