【第41回】「御義口伝」要文編⑥ 化城喩品第7 中国方面青年部長 升田美樹雄
広宣流布とは、妙法を弘めた果ての到達点ではなく、どこまでも「二陣三陣」と妙法を弘めゆく流れそれ自体であり、生きた仏法の現実社会への脈動といえます。
師弟が織り成す広宣流布の大河は、より良き社会を築きゆく人材輩出の大河であり、生命尊厳を第一義とする世界平和建設への大河でもあります。
具体的な目標を化城として掲げて挑戦しゆく広布と人生の労苦は、妙法の力用によって一つ一つがそのまま即宝処として、かけがえのない価値創造を発現する実証の姿となる。
さまざまな試練も、煩悩を即菩提へと転じ、歓喜に満ちあふれた功徳の宝聚として、「一生成仏」「人間革命」への糧にしていけるのです。
化城を宝処に転ずる「即」の力用は、私たちの瞬間瞬間の一念によって決まっていく。
譬喩に示されているような師弟旅の深き「念々」、すなわち師弟が共に妙法を唱え、広宣流布の実現に向けて「一念に億劫の辛労」を尽くして戦い、一つ一つ勝ち越える「異体同心」にして「不二の心」にこそ、この化城即宝処の妙用は発揮されていくのです。
「いつか」「どこか」ではない。
「今、この瞬間」「ここから」仏の大生命を輝かせていけるのが、大聖人の仏法です。(中略)
いかなる場所であろうと、妙法を持ち、行ずる私たちにとって、そこが宿命転換の本舞台となり、地涌の使命を果たしゆく誓願の宝処となるのです。
第三代会長に就任し、最初の関西訪問を前に、私は日記に記しました。
「一人ひとりに、親しく接しよう。一人ひとりと語り、論じ、そして、生涯、苦楽を共にしてもらおう。
これが私の信条だ。私は進む。私は戦う。私は苦しむ。
如来の使い、大衆の味方の誉れ高き、無冠の勇者として」
さあ、全人類の宿命転換をかけた世界広宣流布という壮大な師弟共戦の旅を、いよいよ朗らかに続けていこう!
核兵器の悲惨さを伝え続ける原爆ドーム(1985年10月、池田先生撮影)。
先生は小説『新・人間革命』の冒頭に記した。「平和ほど、幸福なものはない」と。
師の心を受け継ぎ、中国方面の青年部は、友の心に平和と幸福の種をまく語らいに駆けている
平和を築く人材の大河を
今年もまもなく、8月6日を迎えます。
池田先生は、今回学ぶ講義の中でつづってくださいました。
「(小説『人間革命』の)連載終了から半年後、『広島原爆の日』の8月6日に、私は続編となる小説『新・人間革命』の執筆を、師弟の思い出の天地・長野で開始しました。
今日の『世界広宣流布』即『地球民族の平和の連帯』の広がりこそが、恩師の真の偉大さの宣揚になると考えたからです」
先々月、広島でG7(先進7カ国)サミットが行われました。
先生も提唱してこられた被爆地・広島でのサミットが実現し、さらなる平和への潮流をと決意しました。
私は、被爆3世です。
私が物心つく頃、母方の祖母の喉元にある傷痕を見て、「何の傷なん?」と尋ねると、祖母は一言「原爆に遭ったんよ」とだけ言いました。
その時の悲しげな顔は忘れることはできません。核兵器なき世界へ、師の平和構想を実現しゆく弟子の使命を改めて痛感しています。
今回研さんする法華経化城喩品第7の「御義口伝」には、「今、日蓮等の類い、南無妙法蓮華経と唱え奉る者は、化城即宝処なり。
我らが居住の山谷曠野、皆、皆常寂光の宝処なり云々」(新1024・全734)と仰せです。
先生はこの御文を拝して、「私たち一人一人にとって、この娑婆世界こそが、わが使命の大舞台です。
ゆえに、自分自身がいる場所で断じて勝つことです」とつづられています。
どこか遠いかなたではなく、自分が今いる職場や地域を宝処へと転じていく――。
平和建設への原理にも通じる大事な指導であると思います。
私は創価大学を卒業後、地元・広島で就職。複写機メーカーで営業職として働いていましたが、成果の上がらない日々に、何度も「やめたい」と悩みました。
そんな時に思い起こしたのが、創大卒業式での創立者・池田先生のスピーチです。
創価教育の父である牧口先生の、“社会には「いてもいなくてもいい人」「いてもらいたくない人」「絶対に、いてもらいたい人」の3種類の人間がいる”との言葉を通し、池田先生は、「皆さんは『絶対に、いてもらいたい人』になってください」と呼びかけられたのです。
この指針を支えに、信心根本に踏ん張りました。やがて営業成績が向上。社の内外から信頼を得ることができました。
以来、“どこにいても、必要とされる自分に”との思いで自身を磨いてきました。
フレッシュな決意みなぎる総広島の男子部大学校の友(本年5月)。
自らの殻を破り、対話拡大の先陣を切る
先生はさらに講義の中で、「日蓮等の類い、南無妙法蓮華経と唱え奉る者は、一同に『皆共至宝所』なり。
『共』の一字は、日蓮に共する時は宝所に至るべし」(同)の一節を通して、教えてくださっています。
「私たちでいえば、大聖人の御遺命である一閻浮提広宣流布という大願を同じくして進むことです。
それは、世界広布を現実のものとしている『創価学会と共に』歩むことにほかなりません」
5年前、岡山で行われた「全国男子部幹部会」。
この日を目指し、皆で“必ず弘教の金字塔を築こう”と誓い、挑みました。
戦いの中で私自身の腹が決まり、さらなる勇気の対話を。島根に住む親戚2人が入会しました。
共に対話に挑んだ多くの同志も、弘教を実らせました。
自他の生命を変革し、わが地域を宝処へと転換する私たちの一念は、師と共に、同志と共に、大願を目指して前進する一つ一つの戦いの中でこそ、深化し、強固になるのだと、体験を通して深く実感しました。
先生は小説『新・人間革命』第11巻「暁光」の章につづられました。
「世界の『平和』と民衆の『幸福』を実現する広宣流布の道が、平坦であるはずがない。
常に逆境であった。常に死闘であった。常に不可能と言われ、嘲笑を浴びせられてきた。
だが、そのなかで、岩に爪を立てる思いで、険しき山を越え、嵐のなかを駆け抜け、栄光の勝利の旗を打ち立ててきたのが、創価学会の尊き歴史である」
大事なことは、一つ一つの広布の戦いに勝利し、後継の人材の流れを太く、豊かにしていくことです。
そして、一人一人が、広布の大願を目指し、唱題と自行化他の弘教に挑みゆく時、必ずや世界平和も実現すると確信します。
この7月で、方面歌「地涌の讃歌」が鳥取・米子の地で発表されて45周年。
池田門下の青年が先頭に立ち、山口開拓指導で示してくださった「御書根本」のリズムで、中国方面の山河に、わが使命の舞台に、広布と立正安国の凱歌の旗を堂々と打ち立ててまいります。
【化城喩品の概要】
釈尊が、今まさに「宿世の因縁」(遠い過去からの師弟の絆)を説くと宣言した、授記品第6を受けて、化城喩品第7では、三千塵点劫というはるか昔の大通智勝仏の物語が語られる。
この仏の16番目の王子が釈尊であり、この王子の法華経の説法で発心し、結縁した衆生が今の声聞たちであると述べられる。
続く、五百弟子受記品第8で富楼那と1200人の声聞、授学無学人記品第9で阿難と羅睺羅ら2000人の声聞が授記され、三周の説法が全て終わる。