【世界広布の(げん)(りゅう) 青年に語る創価の(たましい)】第12回 大阪の戦い㊥

· 〈出席者〉池田主任副会長、(やな)(しま)男子部長、林池田華陽会委員長、田島学生部長、先﨑女子学生部長

社会のため、(みん)(しゅう)のために

大阪城の偉容を池田先生がカメラに収めた(2000年12月)。1956年2月、「大阪の戦い」の指揮を執っていた先生は、大勝利への決意を「関西に 今築きゆく 錦州城 永遠に崩れぬ 魔軍抑えて」との歌に託し、戸田先生に贈った。大阪城の別名である「錦城」と、中国の難攻不落の都城「錦州城」をかけ、関西に鉄壁の民衆城を築かんとの誓いが込められていた

 ◆先﨑 1956年(昭和31年)4月8日、大阪球場(当時)で、「大阪・(さかい)二支部連合総会」が(かい)(さい)されます。大雨にもかかわらず、およそ2万人のメンバーが集結し、関西(やく)(しん)のきっかけとなりました。
  
 ◇池田 小説『人間革命』第10巻「(ちょう)(やく)」の章に、「雨の総会は、関西の全会員にとって、一つの(じょう)(じゅ)であった」とつづられています。
 前月の3月、大阪支部は5005世帯という、かつてない()(きょう)(みの)らせます。さらに、4月に入ると、総会までのわずか1週間で、4000世帯を()す弘教を達成します。(あっ)(とう)(てき)な広布拡大の()(しお)の中で、戸田先生を関西の地に(むか)えたのです。
 この拡大の勢いを生んだのが、山本伸一を中心とする、関西の()(たい)(どう)(しん)の団結でした。()(ざん)ではなく、()(ざん)のように増加していく――それが、団結の(ちから)です。だからこそ、池田先生は、団結の重要性を()(かえ)し強調されてきたのです。
 総会の席上、戸田先生は「創価学会を大きくしたいとか、あるいは、学会をどうこうするといったような、小さな精神の私ではありません」と語ります。そして、学会活動は広宣流布という(みん)(しゅう)(きゅう)(さい)のためであると()べ、こう(うった)えます。
 「創価学会の確信と行動において、(みな)さんは、よくこの根本のところを理解し、(りっ)(しょう)(あん)(こく)のため、社会のため、民衆のための行動であることを知っていただきたい」
 恩師が総会の参加者に強調した一つが、「何のための活動か」ということでした。この「何のため」ということは、(おり)(おり)(かく)(にん)していくことが、活動を(すい)(しん)する上で大切です。
  
 ◆田島 (だい)(ばく)(しん)を続ける関西でしたが、()(けん)幹部と地元幹部の間で(あつ)(れき)(しょう)じ、(たが)いに()(はん)するようになります。
  
 ◇池田 ()の本質とは何か。「分断」です。「結合は(ぜん)」「分断は悪」です。魔は()(しょう)と同志、同志と同志の(きずな)()()く事象として現れます。
 伸一は「十字(むしもち)御書」の「わざわいは(くち)より()でて身をやぶる。さいわいは心よりいでて(われ)をかざる」(新2037・全1492)を引用して(さと)します。
 「団結が(やぶ)れるのも、口から出るんです。味方のなかに起きる()(はん)(ちゅう)(しょう)は、ことごとく魔の()(わざ)です」
 さらに、「()(たい)(どう)(しん)()」の一節を(はい)し、「勝つも負けるも、(ひっ)(きょう)するところ、私たちの一念が、固い団結で結ばれているかどうかに、かかっている」と訴えます。伸一の()()()によって、幹部同士が再び団結するようになります。「(しん)(けん)の一人」がいれば、魔は正体を(あば)かれ、退散していきます。
 伸一は4月末から5月にかけての1週間で、大阪と東京を2往復します。夜行列車の移動では、車中で(げん)稿(こう)を書き、同志への(げき)(れい)の一文もしたためます。
 『新・人間革命』第23巻「勇気」の章に、「(そっ)(せん)(すい)(はん)のリーダーは、(みずか)らの行動を通して人に(しょく)(はつ)(あた)え、人びとの“やる気”を引き出し、皆の自主性、自発性を()()ましていく。ゆえに、その組織は、明るく、(かん)()にあふれ、(じょう)(しょう)気流に乗るように、勝利への流れがつくられていくのだ」とあります。
 伸一の率先垂範の姿(すがた)は、関西に団結を築き、歓喜を生みました。当時、池田先生と共に広布に()けた(かた)(がた)が、「あの時は、どうしてあんなに楽しかったのだろう。生活も苦しかったし、信心もよくわからなかったのに、あの歓喜は、今もって(わす)れることはできない」と回想していることが、その(あか)しです。

関西の同志を励ます山本伸一(小説『新・人間革命』第23巻「敢闘」の章から、内田健一郎画)

“大悪を(だい)(ぜん)にしてみせる!”との()(はく)

 ◆林 5月に入ると、(しょう)()(あらし)はさらに(はげ)しさを増します。一部のマスコミが、創価学会を「暴力(しゅう)(きょう)」と報じます。
  
 ◇池田 56年5月15日、6人の学会員が暴力事件の(よう)()で、不当に(たい)()されます。すでに解決()みの個々別々の出来事を()し返し、組織的な暴力があったかのように見せる(けい)(さつ)(おも)(わく)でした。その日の夕刊には、大阪の新聞という新聞がそろって、学会が「暴力宗教」であるかのように報じました。
 同日の夜、戸田先生は大阪市中央公会堂での御書講義に(のぞ)みます。席上、「(ずい)(そう)御書」を通して、「私どもは、末代に生きております。悪人も、(しゃく)(そん)在世中とは比較にならないほど多い。(たち)も悪い。したがって、その瑞相も、()(かく)にならないほど大きなものが現れるというんです。しかも、それは大悪として現れる」と語ります。
 さらに、恩師は「いつ、どこで、私たちが暴力を()るって(しん)(こう)を強制したというのか。暴力で信心するような人が、今時、一人でもいたら、私はお目にかかりたい」と述べます。
 この言葉に(しょう)(ちょう)されるように、学会に対するデマは常に、「いつ」「どこで」「(だれ)が」ということが不明確です。
 戸田先生は講義の最後、「御書に()らして申すならば、このたびの事件は、関西勝利の瑞相だと、私は確信するものであります」と(せん)(げん)します。
 「(なん)」を「勝利」の瑞相と(とら)える――それは、楽観的な未来予想ではありません。“この大悪を(だい)(ぜん)にしてみせる”との(れつ)(れつ)たる()(はく)であり、決意です。
 伸一は事件の(ぜん)()(さく)を講じるために(ほん)(そう)。17日、「電光石火」と大書します。
 この日に行われた早朝の御書講義では、彼は関西の同志の(どう)(よう)()(はら)い、自身の真情を力強く語ります。
 「正しい仏法が、正しい(しん)(こう)が、最後に必ず勝たないわけがない。世間や新聞が、なんと(ちゅう)(しょう)しようと、それに(ふん)(どう)されては、せっかく信心してきた多くの会員が、幸せになれるものを、むざむざ()てることになります。そうなっては、一月から今月まで、(いっ)(しょう)(けん)(めい)にやってきた何万という大阪の学会員が、かわいそうです」
 広布の戦いは、さまざまな形で魔が(しゅん)(どう)します。そんなものに信心を破られてはなりません。(たが)いに(はげ)まし合いながら、前進していきたいと思います。

1956年5月、吹き荒れる障魔の嵐の中、関西本部で「勇戦」と大書する池田先生

 ◆(やな)(しま) 男子部は今、「(われ)、新時代の山本伸一なり!」とのスローガンを(むね)に、“電光石火”の(げん)(ろん)(せん)(ちょう)(せん)しています。
  
 ◇池田 (たの)もしい(かぎ)りです。『人間革命』第10巻「(けん)()」の章に、「真実は、(さけ)ばなければわからない。力の限り(うった)()いていくなかにこそ、『正義』が『正義』として(かがや)く」とある通り、青年が先頭に立って、正義を叫び抜いてもらいたい。
 6人の学会員の逮捕から3日後、戸田先生は記者会見を開きます。そこで、(けい)(さつ)(そう)()がいかに不当であるかを語り、記者の質問に一つ一つ答えながら、学会に対する(きょっ)(かい)を解くことに(つと)めます。
 夜、戸田先生は大阪一円の(はん)(ちょう)(かい)に出席し、こう語ります。
 「こういう、けしからん事件が大阪で起きたのも、現代社会のばかげた一面です。そこには、政治(けん)(りょく)()()がある」
 「(こう)(けつ)にして有能な政治家が、今ほど必要な時はない」
 「(しょ)(くん)、われわれの力で、ひとつ思い切りやってみようではないですか。絶好のチャンスです。魔の蠢動の息の根を止めるのも、われわれの信心が、一歩も退(しりぞ)かなければいいんです」
 その先頭に立った伸一は、連日、(げき)(れい)を続けます。回った座談会場が10カ所を()えた日もありました。各地の座談会は、信心の喜びにあふれ、入会希望者も(あい)()ぎます。
 関西本部は、各地から報告に来る幹部であふれました。その勢いは、“建物が(ぐん)(かん)のように()(うご)いた”とも伝えられています。
 56年5月、大阪支部は1万1111世帯の()(きょう)()()げます。この「()(めつ)(きん)()(とう)」は、警察の不当捜査やマスコミの(へん)(けん)(ゆが)んだ報道など、(はく)(がい)の中で築かれたのです。
 競い起こった(しょう)()を、関西の同志は信心と団結の力で、勢いに変えていきました。いかなる時も、信心の歓喜と確信は、(なん)()()える原動力です。

 【参照】
 ◆小説『人間革命』=第10巻「跳躍」「険路」
 ◆小説『新・人間革命』=第23巻「勇気」