【世界広布の源流 青年に語る創価の魂】第4回 「原水爆禁止宣言」の発表65周年〈下〉

 

1996年6月、コスタリカを初訪問した池田先生が、フィゲレス大統領(当時)、ノーベル平和賞受賞者であるアリアス元大統領らと共に「核兵器――人類への脅威」展を見学(首都サンホセのコスタリカ科学文化センターで)。開幕式でフィゲレス大統領は、「人間共和の大いなる川をつくるために長年、貢献されてきた人々や団体を私はたたえたい。その代表は創価学会であります」と

〈出席者〉
長谷川理事長
田島学生部長
先﨑女子学生部長
山下未来部長
山口女子未来部長

 ◆先﨑 戸田先生が「原水爆禁止宣言」を発表された1年後の1958年(昭和33年)、池田先生は、聖教新聞に「原水爆宣言に思う」(9月26日付)という一文を寄せられました。
 
 ◇長谷川 池田先生は「一瞬にして、幾十万の尊き生命を殺傷した、地獄の使いたる原爆の使用は、絶対に禁止しなければならない。原水爆の使用は、地球の自殺であり、人類の自殺を意味する」と記されました。そして、「御遺訓の成就するまで、いかなる難にも負けず」と、いかに核兵器廃絶の道程が困難であったとしても、恩師の宣言を実現する誓いを述べられています。
 58年9月といえば、戸田先生が逝去されて5カ月後、まだ池田先生が第3代会長に就任される2年前のことです。しかし、先生はすでに遺訓を果たす深き責任感に立たれていました。戸田先生が原水爆禁止宣言を発表された後、池田先生の胸中には数々の構想が広がっていきました。しかし、はやる心を抑え、先生が力を注いだことは、地道な弘教による人間革命の運動です。その運動の流れが国内、そして世界へと広がる中で、学会の広範な平和運動が展開されていきます。
“核の力”より“生命の力”を
 ◆田島 池田先生は一貫して、国連支援と市民社会の声の結集を訴えられてきました。
 
 ◇長谷川 地球的な諸問題を恒常的に話し合える場が国連にほかなりません。だからこそ、池田先生は国連を「人類の議会」と位置付け、支援してきました。核兵器の問題についても、世界的規模で議論する場を設けることを繰り返し提案されています。
 74年(同49年)に愛知で開催された本部総会では、学会は永久に民衆の側に立った平和の道を走る、との基本路線を確認します。
 そして、核兵器の問題について、「恐怖による戦争抑止という考え方から、相互理解と信頼による真の平和樹立という考え方へと、根本的に発想を転換すべきである」と述べられます。先生は、核抑止論を真っ向から否定し、新たな発想に立つことを提案されたのです。
 さらに、核兵器廃絶のために、①結論を生むまで首脳会議を続行する②国連を実行力ある機関にする③科学者は人類的視野に立った代表として発言し行動すべき、と主張されました。
 先生は翌75年(同50年)、広島で行われた本部総会では、同年1月に、青年部有志が中心となって集めた核兵器反対の1100万人の署名簿を、国連事務総長に手渡したことを紹介。また、核兵器全廃のために各国首脳が集まって議論する国際平和会議を、平和原点の地である広島で開催することなどを主張されます。
 83年(同58年)1月に初めて「SGIの日」記念提言を発表されて以降、先生は核兵器廃絶に関する提案をされてきました。今年で40回です。
 また、今年7月に発表された核兵器の「先制不使用」の誓約等を求める緊急提案は、各界から大きな反響がありました。恩師の遺訓を実現しようとされる、先生の深い思い――。師匠の戦いに、皆さんが続いてほしいと思います。
 
 ◆山下 創価学会はこれまで、「核兵器――現代世界の脅威」展、「核兵器なき世界への連帯」展などを国内だけでなく、世界各国で行ってきました。
 
 ◇長谷川 87年(同62年)5月のことです。ソ連(当時)のモスクワで“核の脅威展”が開かれ、先生に随行させていただきました。先生は開幕式の席上、「この地球上に、核もない、悲惨と残酷さもない社会が生まれ、人間と人間との平和の花が咲き乱れることを強く信じたい」と訴えられました。核保有国での先生の叫びは、35年たった今も、私の心に響いています。また、96年(平成8年)6月、コスタリカで行われた“核の脅威展”の開幕式も印象に残ることがありました。
 500人の招待客のうち、250人が小学生でした。また、会場の科学文化センターには、子ども博物館が併設されていました。場内は子どもたちの声があふれていました。
 開幕式が始まってからも、元気に遊ぶ声はやみません。私は内心、“少しの間だけでいいから、静かにしてくれないかな”と思っていました。ところが、あいさつに立った先生は笑顔を浮かべ、「この元気な声を聞いてください」と呼びかけられたのです。そして、こう続けられました。
 「賑やかな、活気に満ちた、この声こそ、この姿こそ、『平和』そのものです。ここにこそ、原爆を抑える力があります。希望があります」私は感動で胸が震えました。コスタリカの新聞の論説委員長は、先生のあいさつに、「池田会長の知性とセンスと人間性が、あますところなくあらわれています」と賛辞を送りました。
 先生はさらに、子どもたちは、伸びゆく「生命」の象徴であり、核兵器は「死」と「破壊」の象徴であると述べられ、「焦点は、“核の力”よりも偉大な“生命の力”を、いかに開発させていくかです。そして、“核の拡大”よりも強力な“民衆の連帯”を、どう拡大していくかです」と訴えられました。そこに私たち、また後継の皆さんの大きな使命があります。
平和のために今できること
 ◆山口 今年8月、未来部の夏季研修会が開催されました。皆で、小説『新・人間革命』第30巻〈下〉「誓願」の章を教材に、「平和」について学び合いました。
 
 ◇長谷川 学びに学んで力をつけてください。そして、友だちを大切にすることです。「友情」こそ平和の礎です。「平和」というと、どこか漠然としたイメージがあるかもしれない。しかし、「平和」といっても、どこか遠くにあるのではない。身近な人と仲良くすることから平和は生まれます。
 先生が語られた「相互理解と信頼による真の平和樹立」とは、友情を「築く」「広げる」ことだと思います。
 もう1点は、「生命を大切にする」ということです。仏法では、生命の限りない尊さを説きます。国籍や民族、宗教に関係なく、全ての人間の生命は等しく尊い。現在、「生命尊厳」の仏法を基調にした創価学会の運動は、192カ国・地域にまで広がっています。皆さん一人一人がその大切な担い手です。立派に成長し、先生や先輩たちが進めてきてくださった運動を、さらに大きく広げていっていただきたい。
 
 ◆田島 学生部では今月8日から、全国で平和意識調査を開始しました。平和を求める学生の声を糾合し、新たな未来を開いていきます。
 
 ◇長谷川 素晴らしい! 「先駆」を使命とする皆さんの活躍を期待しています。
 今回の座談会に当たって、私も皆さんと一緒に、もう一度、『人間革命』『新・人間革命』を学びました。
 特に、『新・人間革命』第30巻〈下〉「誓願」の章は、「広宣流布」即「世界平和」への新たな前進を、師から弟子へ、また次の世代へと託されたものと思われてなりません。
 若き皆さんは、どうか、『人間革命』『新・人間革命』の研さんに取り組み、後継の師子になってほしい。一人一人が「新時代の山本伸一」として、大きく雄飛していってください。
参照
 ◆小説『人間革命』=第12巻「宣言」
 ◆小説『新・人間革命』=第22巻「命宝」、第30巻〈下〉「誓願」