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クロスカのブログ

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 日本酒やワインは醸造酒で、ウィスキー、ブランデー、ウォッカ、テキーラ、ジンなどは蒸留酒だ。ビールは醸造酒に分類されるのだろうか。多分そうだろう。泡盛、焼酎も蒸留酒だ。
 単に度数の低い酒が醸造酒で、高い酒が蒸留酒だというわけではない。醸造酒を蒸留して、アルコール分を純化した酒が蒸留酒だ。
 中国酒にも蒸留酒と醸造酒がある。醸造酒で有名なのが紹興酒。紹興と言うのは中国の地名で、この地方で生産されていたのでこの名がある。ところが、1972年に日中国交回復するまでは、日本は中国大陸本土から強く遮断されていて、中国大陸産の酒が日本で売られてはいなかった。当時の中国も、経済的に余裕がなかったので、いろいろな酒を生産して輸出するようなことはしていなかったかもしれない。
 しかし、当時から紹興酒と知られていた酒はあった。その酒は台湾で生産されていた酒で、中国料理の専門店などでは普通に提供されていたと記憶する。底辺が四角いボトルの酒である。最近はすっかり見なくなってしまった。味は同じようなものだったと思う。実は、日本と中国の国交が回復した後、大陸産の紹興酒の日本での販売が盛んに行われ、テレビコマーシャルも流されていた。そのときのコピーが「これが本物の紹興酒」。まあ、確かに、紹興の酒だから、嘘ではないのだろうが。
 紹興酒は穀物を醸造して酒にした後で、カラメルのようなものを混ぜて色と味をつける。私が台湾に行ったときに聞いた説明では、紹興酒は日本における清酒と同じような扱いだった。お酒と言う言葉は、酒類一般も意味するが、清酒という特別な種類の酒を意味することもある。台湾でお酒と言うと、その意味で紹興酒を指すというのだ。ただし、これが一般的な用法なのかどうかは保証の限りではない。
 さて、中国酒の蒸留酒だが、有名なのは茅台酒だ。1972年に当時の田中角栄首相が日中国交回復のために訪中し、祝賀の宴会が開かれたときに、周恩来首相に田中首相が酒をどんどん勧められて、飲んでいたら酔いつぶれてしまったという。これは田中首相の手記に書いてあったと思う。こういう公的な席で、一国の首相を不覚にも酔いつぶれさせる酒は、相当、美味で口当たりの良い酒でなければならない。安酒で憂さを晴らしているのならば、どんなにまずい酒でも、勢いで飲んでいくのだが、これとは違うのである。
 中国では蒸留酒のことを白酒と書き、パイチュウと言う。蒸留したときに、雑多な成分が落とされ、白い水のような色になるからだ。ブランデーやウィスキーは白酒になった蒸留酒を樽に詰めて寝かせて、樽の木の成分で色を付けるので、琥珀色になるのだ。同じ寝かせる蒸留酒でも、泡盛や焼酎はカメに詰めるので白酒のままである。
 しかし、中国の白酒がみな同じかと言うと、これがそうではない。台湾の紹興酒と大陸の紹興酒について、味は似たようなものだと書いた。私が味音痴だからこういう頓珍漢なことを言うと叱られるかもしれないが、そういう味音痴な私でも、茅台酒については、その差が分かる。と言うかこれはかすかな記憶のようなものなのだが、茅台酒はおいしい酒だと思う。思うなどと言うのは、それを飲みなおして再確認することができないからだ。
 もう何十年も前のことだと思うのだが、私は実は茅台酒を飲んだことがある。私の友人の家に遊びに言ったときのことで、茅台酒を御馳走になった。それは、一本のボトルで、人民中国を象徴する真っ赤な星の印だったか、そういう鮮やかなマークがついていた。その友人はどこでそれを入手したのだろうか、まったく分からなかったし、私はその時その酒の価値も知らなかった。当時から、酒は酔えればいい、自動車は走ればいいというのが、私の貧しい感覚だったからだ。しかし、御馳走してもらったそのときは、大した感想はなかったのだが、とにかく、何のつまみもなく、ただ酒を飲んだだけなのに、しばらくしてから、あの時の酒がおいしかったと思い、また飲みたいという欲求が湧いてきて、いろいろな店を探してみた。だが、どこの酒の専門店にもそういう酒は置いてなかった。中国の白酒で、別の銘柄の酒は売っている。たとえば、汾酒と言う酒はまあ簡単に入手できたのだが、飲んでみるとまったく違う。
 台湾に行った帰りに、免税店で探してみると、あったあった、茅台酒というのが台湾でも生産されているようで、私は喜んで買って帰った。しかし、飲んでみるとどうも違うのだ。紹興酒に関しては中国産も台湾産も同じように思うが、茅台酒は同じではない。
 もっと記憶をさかのぼると、私がかなり幼かった頃、私の家に父を訪ねて多くの台湾からの客人が来たりして、台湾から高粱酒と言う酒をお土産に持ってきたことがあった。これが、多分私が最初に出会った白酒だろうが、その味はものすごく不味かった。子供だったのだが、試しに少し味わってみたのだ。ただ辛いだけで、なんという忌まわしい飲み物だろうというのが感想だった。中国酒の白酒の標準形はこれだと思う。
 ずっと前に、まだ経済発展が頂点に行きついていない中国に行ったときに、外食をしたところ、隣の席などで、お客さんがサイダーのようなビンに入った透明な飲み物をコップに注いで飲んでいた。聞いてみると酒だと言うので、私も注文したか、どうしたかよく覚えていないが、とにかく一杯のコップを入手して飲んでみたら、とても飲めないような辛い、そして強い酒だった。いくら周恩来首相に勧められたとしても、このような白酒だったら、田中首相も酔いつぶれることはなかっただろう。汾酒とか、台湾製の茅台酒は、こういうガラスビンに入って売られている安酒よりは品質は良いのだろうが、私から見ると同じようなものなのだ。
 そこで、私はかつて友人の家で御馳走になった茅台酒のおいしさは、何かの錯覚のようなもので、あるいはそのときの雰囲気のようなものが生み出した感覚のようなものではないかと考えるようになった。そのときの私の感覚が錯覚だったのか、あるいはシチュエーションに制約される特別な感覚だったのか、あるいは酒の品質によるものであるかを確かめることができるかもしれない方法を見つけたのは数か月前のことだ。実は、茅台酒は中国でも品薄の希少な酒で、日本ではなかなか入手できないものだった。しかし、ブランドと言うものを信じない私は、品薄で入手できないというのは、値段を釣り上げるための商売上の戦略だと思い、ますます、茅台酒に対する期待をなくしていた。ところが、インターネットで調べてみたところ、茅台酒は日本でも買えることが分かった。しかし、その値段は500mlで2万円ぐらい。恐ろしく高価な酒だ。この値段を知って、私がかつておいしいと思った自分の味覚はあながち錯覚でもなかったのではないかと思い直した。
 そこで、検証である。とにかく、この酒を購入して、味わってみればいいのだ。そう思いながら、どうもこの値段の高さに閉口して、検証に踏み切れない自分がいる。ただ一つ、あの大きな赤い星のついていた懐かしいようなボトルの茅台酒は、やはり入手できないのかもしれない。私が若いころ強くあこがれていた中国は今は変わっており、茅台酒も変わったのだろう。