平成最後の冬コミとなった昨年の大晦日のC95においてこんな悲しい出来事があったようです。
コミケで「韓国人・中国人お断り」のヘイト貼り紙をするサークルが現れる
https://matome.naver.jp/odai/2154632239344610901
この騒動は元はツィツター上でこのツイートからはじまりました。
「#c95 で胸くそ悪いもん見ちまった。 韓国人中国人お断りとか書いてあった。ご丁寧に日本語と韓国語で。何故か中国語では書いてなかった。暴行されたということだが…。なお撮影禁止札があったので証拠は押さえてない。サークル主はいなかったが、東ホールI46b付近通行の方はご注意を。」
https://twitter.com/jun_84/status/1079593031580307458
他にも「自分も見た」というツイートがある一方で「東館は一通り見て回ったがそんなモノ無かった」というツイートもあり、 反省会でサークル主が自白したと証言している人も出ています。またツイート文にあるように基本コミケはサークル撮影禁止なので写メを取れなかったようで証拠画像はないようです。そのため真偽については未だ不明です。私も大晦日のコミケで東館には行きましたが目当てのサークルにしか行きませんでしたので、本当かどうかは断言できません(仮に全部見て回っていたとしてもあれだけのサークル数ですからどうしても見落とす可能性はありますが・・・)。
しかしその 「韓国人・中国人お断り」の張り紙 の真偽はともかく、コミックマーケット準備会がそれを許容するような発言をしたのは事実のようです。
コミックマーケット準備会が「韓国人・中国人お断り」のヘイト張り紙を許容する声明を出し大炎上。「ヘイトスピーチは表現の自由ではない」「張り紙をしたサークルを永久追放するべき」との声も
https://togetter.com/li/1304514#c5812680
上記のトゥギャザ―では「これは真偽不明の嘘!」という論調のツイートが目立つが問題はそこではない。反省会でコミケスタッフが「容認の姿勢を示した」事がなにより問題なのである。
平成元年の「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」いわゆる「宮崎勤事件」により広く世間に「オタク」という言葉と「オタク族」と呼ばれる人間の存在が認知されるようになった。
しかし、それは同時にオタクに対する差別と偏見の始まりでもあった。勿論、事件以前にもアニメマニアや漫画マニアに対する世間の印象は決して良い物ではなかった。しかしそれはせいぜい「暗い奴」「いい歳をして・・・」という程度のものでしかなかった。だが事件以降、「オタク=犯罪者予備軍」と見られ、「オタク」という言葉は「変質者」もしくは「気持ち悪い人間」の代名詞となった。
事件当時、私は高校生だったが、そっち方面には割と理解があった私の父でさえニュース番組で映されたアニメのポスターが貼られ漫画が大量にあった宮崎勤の部屋を見て「問題だなぁと思った」と言っていた程だった。
当時を知らない若い人には想像もつかないだろうが当時のマスコミのホラーバッシングとオタクバッシングは凄まじいもので「宮崎がたまたまオタクだった」のではなく「宮崎がオタクだったからあんな残酷な犯罪を犯した」という論調だったのだ。
以降、オタクの歴史はそうした差別と偏見との戦いの歴史だったと言ってもいい。
そうしたオタクへの差別を見てきたはずのコミックマーケット準備会が
「 どういう方法で頒布するかはサークルの判断と責任に委ねている。日本の法律に違反していない以上、準備会からは口出しする案件ではないと思う」
と、ヘイトを容認するような発言をしたのは非常に残念なことであり悲しいことです。「日本の法律に違反していない」も何も今回の一件は立派に法律に反しているのである。
実際に外国人であることを理由に入浴を拒否した北海道・小樽の温泉業者に賠償命令を下す判決がでた裁判もある。
朝日新聞 2002年11月12日 朝刊より
もちろん仮に法律に反していなかったとしても差別行為は許されることではありません。
今回の一件はネット上でもツイッターなどのSNSでのみ炎上しており、一般のニュースでは取り上げられていないので世間一般には知られていませんが、これが世間に知れ渡ると「これだからオタクは・・・」と再びオタクがバッシングされ、それを容認したコミックマーケット準備会の見識と論理観を問われかねません。
また昨年、2018年10月3日には東京都のヘイト規制条例案が可決されており、規制案にはヘイトスピーチ対策として、公園やホールなど都の施設の利用制限を盛り込まれている。
「東京都のヘイト規制条例案が可決 施設の利用制限盛る」
https://www.asahi.com/articles/ASLB33K6BLB3UTIL00F.html
もし今回の一件でコミックマーケット準備会が何もしなければ最悪、東京都が都の施設である東京ビックサイトを「ヘイトを容認するコミックマーケットに貸し出さない」という事態も十分考えられます。
拙ブログ記事「当ブログの理念」で申し上げましたが、「言論の自由」と同様に「表現の自由」とは他人の権利と尊厳を侵さない範囲でのみ認められているものです。
本来、公正で平等な社会を作る為の制度である「表現の自由」を一部の心無い人間のヘイトスピーチにより人権侵害の道具に使われてしまっては「やっぱり表現の自由を規制しよう」という方向に行きかねません。
コミックマーケット準備会には今回の一件を猛省していただき今後2度このようなことが起きないよう対策を立てて頂きたい。それがコミックマーケットという素晴らしいイベントの為でもあるのだから。
今回の記事に賛同していただいてくれた方には下記のキャンペーンに賛同をお願いいたします。
「コミックマーケットでの外国人差別を防ぐ対策をお願いします」
1月15日 追加
コミックマーケット準備会が今回の件に関し公式見解を示しました!
「コミックマーケット95アフターレポート」
https://www.comiket.co.jp/info-a/C95/C95AfterReport.html
「 その後、内部での議論を重ねた結果、準備会としては、差別を容認しているわけではなく、このような貼り紙はコミケットという「場」には適切ではなく、今後、準備会として事実を認知した際には、サークルに貼り紙を取り下げてもらうなどの対応を取るべきと考えています。お詫びして訂正させていただきます」
まずは準備委員会が良識ある見解を示したことは評価いたします。
ただ「サークルに貼り紙を取り下げてもらうなどの対応」だけでは不十分と考えます。差別貼り紙はコミケの理念に反するものであり、それ以上に表現の自由を逸脱した人権侵害だからです。再発防止策ではより厳格な対応を検討願います。