
【出演】
成宮寛貴、内田有紀、白石美帆、中村ゆり、浅見れいな、岡本奈月、浅田美代子、小林隆、蛍雪次郎、池田政典、池内博之、古手川祐子
【監督】
金子修介
“一生、忘れられない恋がある”
1999年。群馬県・高崎市。
大学生のヒデこと大須秀成、19歳。
父親の使いで、高崎競馬場近くのおでん屋‘よしたけ’へ自転車を漕ぐ。
その店の娘・吉竹額子、27歳。
酒を飲んでいた額子はヒデに声をかける。
「お使い偉いね~ボク。ま、飲みなよ」
「いや、俺は飲めないっすから」
「いいから飲めって」

断りきれないヒデは、ビールを一気飲みするのだった。
スーパーマーケット堀田屋で試食販売のバイトをするヒデ。
なんと額子は同じスーパーの総菜売り場で働いていた。
「お疲れ。これからどっか行こうよ。あ、映画行こ、映画!」
「は?」
と、額子の運転する車に乗せられ……一緒にポルノ映画を観る羽目に。
その夜、額子の部屋で……ヒデは童貞を奪われる。
その後……連日、額子のアパートに通う日々……‘餃子の王将’で餃子を買って。

「やりゃーいーんだろ、やりぁー!」
後ろから抱きつくヒデの手を振り払い、自分からさっさと服を脱ぎだす額子。
彼女はホシノという犬を飼っていて、二人がセックスしている時は、ベランダに追いやられる。
「あ、あーーーっ!」
額子がヒデの‘モノ’を口にふくんでいる最中、思わず声を上げるヒデに額子が言う。
「女みたいな声出すんじゃねーよ!」
焦って萎えてしまうヒデ。
「額子って終わった後の方がかわいいよな」
額子が呟く。
「……ばかもの」

二人は毎日、時には外でもと、セックスに溺れていく。

2000年。
深夜に、ヒデは額子に公園のケヤキの木に両腕を後ろ手に縛られ、ボクサーパンツを膝下まで下げられる。
「結婚するんだ、私」
「え……」
「結婚するの」
「そんな!じゃあ俺はどうなるんだよ!」
額子は長いキスをすると、
「遊びだよ!遊び以外のなんだって言うんだよ!」
と言い放ち、いきなり去ってしまう。
2003年。
22歳になったヒデは大学を留年した。

同学年のネユキこと山根ユキが、大学を中退し、株のデイトレーダーで自活して東京の恵比寿に住むと言う。
大学の親友・加藤は就職が決まった。
23歳、1年遅れで大学を卒業したヒデも家電量販店に就職する。
加藤とメグミの結婚式で東京に行った時、清楚な女性・翔子に出会う。彼女は教師をしていた。
ヒデは恵比寿に住んでいるネユキを訪ねる。
新築の高級マンションに住んでいたネユキは、ある宗教について熱に浮かされるように喋り続けた。
「お前、いつからそんな風になっちゃったんだよ?」
やがて翔子と付き合いはじめるヒデ。
彼女のアパートで過ごすが……いそいそと朝食を支度する翔子の姿になぜかげんなり。
2004年。
休みの日には、翔子のアパートで昼から酒を飲んだ。
翔子は帰宅すると、酒瓶が10本も転がっている光景に顔をしかめる。
2005年……ヒデは28歳になっていた。

気ままな大学生と、強気な年上の女。かつての無邪気な恋人たちは、いつしか別れ、気づけばそれぞれに、取り返しのつかない喪失の中にいた。
行き場をなくし、変わり果てた姿で再会した二人のむき出しの愛を描くラブストーリー。

19歳のヒデは、年上の女・額子と初体験をする。
ぶっきら棒だけど率直な額子に、ヒデはのめりこみ、会う度に体を重ねる。
しかしある日突然、額子は一方的にヒデを捨てる。
ヒデは呆然としたまま大学を卒業、就職、新たな恋もするが、虚しさだけが募っていき、いつしかアルコールに頼るようになり、堕ちに墜ちてゆく。
一方の額子もその頃、惨い運命の中を懸命に生きていた。
そして10年後、変わり果てた姿で二人は再会するのだ。
事故で片腕になり、髪の毛が真っ白になった額子。
その姿にたじろぎながらも、惹かれずにいられないヒデ。
あれほど額子とのセックスに溺れていたのに、今のヒデは抱こうともしない。
10年前に捨てられた忸怩たる思いが消えず、と同時にあまりにも変わり果てた額子の姿に怯えているようにすら映る。
額子は言う。
「じゃあ、いつセックスしたらいいんだよ!セックス以外でどうやってあんたと繋がりゃあいいんだよ!」
忘れたくても忘れられなかった二人の10年にわたる‘不器用な純愛’。
全編、重苦しい展開から一転し、とても清々しく爽やかなラスト。その際の二人の表情が素晴らしい。
「俺と結婚したいのかよ?」
「養子にしてやるよ……ずっと面倒みてやるよ」
「……ばかもの」
どん底まで墜ちる主人公の愚かさを真正面から見据え、生命力や官能をも見事に捉え、共感と愛しさを抱かせてくれて、最後には一抹の清涼の風を吹かせ、将来に希望を持てるようなエンディングを迎える。
前半はヒデと額子の濡れ場シーンの連続も、アッサリとした演出であまりエロチックさは感じられない。
日活ロマンポルノでデビューした金子監督の久々のラブストーリー作品だけに、濃厚なラブシーンがあるのかと思いきや、意外と淡泊。
ただ異様にエロチックだったのが次のシーン。
「ひとつだけお願いがあるんだ……右腕を洗ってほしい、ガシガシ洗ってほしい。あとね、腋の毛を剃ってほしい。自分じゃできないから……できないんだよ!」
ヒデは風呂で額子の右腕を洗い、剃刀で腋毛も剃ってあげる。
その時の額子は、まるでセックスをしているかのような恍惚の表情を浮かべるのです。
19歳から29歳までのヒデを演じる成宮寛貴。
初めて女性を知る戸惑いや悦ぶ無邪気さから、対照的に後半ではアルコール依存症になり、堕ちてゆく演技には鬼気迫るものがありました。
映画の後半では片腕、白髪姿になって登場する内田有紀の好演も見どころです。


