
【出演】
板谷由夏、井川遥、仲村綾野、高木郁乃、孫正華、本上まなみ、長塚圭史、石川伸一郎、坂本サトル、遠藤章造、香川照之、西島秀俊
【監督】
石川寛
“東京の空の下、6人の女の子の物語”

東京の空の下、いくつかの物語が交差する。
台湾からの留学のコは、絵のモデルのバイトをしながら、日本語を勉強している。
好きな人と話したいから。好きな人は日本人だから。
売れないモデルのコは、いつもメガネをかけている。

オーディションの時も。ティッシュくばりのバイトの時も。

楽しみは、部屋でビデオを見ること。
二人は同じアパートのとなりに暮らしてる。淡々とつづられていく二人の日々。
台湾のコはある日、はじめて人前でハダカになる。
日本語学校の授業料を払うため、ヌードモデルのバイトをする。
その彼女をじっと見つめる、美大生の女のコ。
ふくよかな胸の曲線……それをきっかけに、ちいさな胸のことで悩みはじめる美大のコ。

ある日彼女は、好きな男のコから告白される。
キスを交わし、つきあいはじめる二人。
が、その日、彼女は胸にパットを入れていた。
小さな胸と恋のはざまでゆれはじめる彼女。
はやんない喫茶店。
カウンターごしに、とりとめのない話をする二人……ウェイトレスとマスターのあんちゃん。
どうでもいい話を、楽しげにつづける二人。
ランジェリーパブの控え室。
鏡にうつった自分を、じっと見つめる二人……ヨーコとユキ。
「空からふる雪のユキ……」
背中ごしに聞いたユキの言葉をきっかけに、小説を書きはじめるヨーコ。

そんなヨーコに、一本の電話がかかってくる。
編集者の道原は、ヨーコの小説を「好きだ」と言う。
まいあがるヨーコ。
その頃、ユキは美容室でシャンプーをしていた。

美容師になりたいユキ。
小説家になりたいヨーコ。
二人の日々は、まったくちがう曲線を描きはじめる。
そして、大きくはなれたはずの二つの曲線は一瞬だけ交差する。
東京の空の下……。

東京の空の下で悩みや不安を抱えながら日常を生きる6人の女性の姿を描く人間ドラマ。
東京に暮らす20代の女性たち。
彼女たちが直面するのは、現実の厳しさ、孤独、壊れてしまいそうな夢、ほのかな愛。
やがては空に吸い込まれてゆくそんなものたち。
東京の空だけが彼女たちの全てを見つめ、見ず知らずの存在だった彼女たちを結びつけていく。
シナリオを用意せず構成だけを決め、台詞などの細部は現場で作り込むという手法で撮影されたらしい。(石川監督は『好きだ。』でも同様の手法を使っていた)
エチュード的演出ですね。
従って台詞を言い合う(台詞は極端に少ないが)という雰囲気は全然なく、普通に会話を(それも何てことのない内容の)しているという感じ。
6人の女優は、与えられた役柄を自分の中に引き受け、素顔もさらけ出しつつ演じている……いや、演じるというより、それぞれの役を生きているという表現の方が正しいか?!
この実験的スタイルが、映像の新鮮さと現代に生きる女性のリアル感を見事に醸し出しています。
全くメリハリのないひたすら淡々と進む展開ですが、そこに繊細な味わいが漂っているし、やがては見ず知らずの関係だった彼女たちが‘tokyoのsora’によってひとつに結ばれていく過程も自然に描かれている。
この6人の人生は、各々ほんの一瞬だけ交差し、また別々の方向へと流れて行くのです。
ラスト近くでヨーコとユキが、夜明けの街を走るシーンが印象に残る。
笑顔の二人はひたすら走り、しまいには上着を脱ぎだしてブラジャー姿になってどこまでもどこまでも駆けていく。
ただこの後に、ヨーコは手首を切って自殺未遂をし、ユキはトラックに飛び込んで自殺してしまうという哀しい結末が待ち受けているのですが……。
ドラマ性は希薄ではあるものの、等身大の女性の孤独空や小さな幸せなどがリアルに描写されているあたりは、特に女性が共感を覚えるのでは?
起承転結がはっきりとある映画ではないので、観る側が感じて解釈するしかないシーンが多い。
このスタイルの映画で127分はかなり長く感じるかも。見方によってはとても退屈な作品です。
でも不思議とのめり込んで見入ってしまいます。
映像の中に流れる独特の空気感が妙に心地よくもあるからでしょうか。
井川遥がとてもいい。
可愛いランジェリー姿でたどたどしく客と接する様は、かなりリアル。
メガネのコの本上まなみの内気で暗いキャラもハマってます。
しょっちゅうタバコをプカプカ吸っている板谷由夏のやさぐれ感も秀逸。(この人、タバコを吸う仕種がホント絵になる。桃井かおりに次いでタバコが似合う女優だ?!)