『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某シネコンにて『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』を鑑賞。


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【出演】
三浦友和、余貴美子、小池栄子、中尾明慶、吉行和子、塚本高史、岩松了、徳井優、中川家礼二、仁科亜季子、清水ミチコ、立川志の輔、米倉斉加年、西村雅彦


【監督】
蔵方政俊




“いちばん近くにいるのに、一番わからないあなた”


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「まもなく終点、電鉄富山駅です」


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今日も一日の勤めを終えた鉄道運転士の滝島徹。

入社して42年、35年間無事故無違反で勤め上げ、いよいよあと1カ月で定年だ。


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そんな徹に、毎日弁当を作り続けた妻の佐和子は55歳、ふたりは第2の人生を目の前にしていた。


「話があるんだ」

ほぼ同時に、パンフレットを取り出して相手に見せる徹と佐和子。

夫の手には国内旅行の、妻の手には在宅緩和ケアセンターのパンフレットがあった。

「ここで働くことに決めました」
と、先に話し出す佐和子。

ひとり娘の麻衣の出産を機に「辞めた看護師を再開したい」と、以前も夫に話していたのだ。

「とっくに終わった話だろ。その歳になってまた働いてどうするが!」
「あなたの定年後は、自分のために時間を使いたいがよ」
「何が不満なんだ!」
そう一喝する徹。

そんな言い争いの最中に同僚が倒れたという知らせを受け、再び駅に戻る徹。

乗務を終えて帰宅すると……佐和子の姿はなかった。


翌朝、娘の麻衣や、その夫の光太に電話をし佐和子を探すが、連絡が取れないまま出社することに。


そんな中、徹は入院した同僚の代わりに、新人運転士・小田の研修指導を頼まれる。
徹から見れば緊張感のない小田に、いきなり、
「お前はこの仕事に向いてない」
と厳しく接する。


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一方、佐和子は緩和ケアセンターで医師の冴木から患者について説明を受ける。
「患者だけでなく、家族の力にもなってほしい」


その夜、母から話を聞いた麻衣が、実家を訪ね……徹に詰め寄る。


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「勉強して頑張ろうとしているのに、なぜ応援してあげないがや?」
「家のことは誰がやるんだ?」
「いっつもそう。お父さんは自分のことしか考えとらん!」

お腹の大きな麻衣は、もうすぐ孫が生まれるのにと、両親のまさかの別居に心を痛める。


担当することになった信子の家を訪れる佐和子。
末期癌の彼女は、娘と孫に囲まれて、残された時間を自宅で過ごすことを強く希望していた。


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信子にこの仕事を選んだ理由を聞かれた佐和子は、癌に罹った母が病院で苦しみながら亡くなったことを話す。
しかし信子に、「母親の代わりだと思っているのか?」と不快感を示され、佐和子は悩んでしまう。


元上司の吉原、同僚の島村と定年祝いに温泉に出かけた徹は、再就職先を決めない理由を聞かれ……
「本当は運転士を続けたいのかもしれないです」

吉原はしみじみ言う。
「お前、この先の時間が短いと思っとるだろ?長いぞ……これからの時間は……」

徹は、この先の人生について改めて思いを馳せるのだった。


佐和子の方も、看護師時代の友人と会っていた。
復帰の理由を聞かれた佐和子は、徹には秘密にしている自分を変えたある出来事を打ち明ける。


徹が帰宅すると、佐和子が待っていた。
「仕事はやればいい。ここから通えばいい」

徹の言葉を、うれしく思う佐和子だったが……。

「少し働けば気がすんで辞めるだろう」
「辞めない!この仕事は、ずっと続けるつもりだから」
「だったら出て行け!もう二度とこの家に帰ってくるな!」

徹の怒声への佐和子の返事は、自分の名前を書き込んだ離婚届だった。


美しく雄大な北アルプスも目に入らない沈んだ表情で、ただ黙々と運転を続ける徹。

佐和子の誠実さに心を開き始めた信子を、心を込めて介護する佐和子。


別々の人生を歩き始めた二人だが、夕食の時などふと相手のことを想うと寂しさが沁みた。


ところが、突然降りかかった事件が、再び二人を引き寄せる。

徹が運転する電車が落雷のため崖の上に緊急停車、そこには黙ってひとりで外出した信子が乗っていた。
信子の容体は急変するが、救急車は近寄れない。

知らせを聞いて駆けつけ、崖をよじ登る佐和子に、手を差し出す徹。

そこには、夫が初めて見る妻の姿があった。


やがて夫婦がたどり着いた第2の人生の思ってもみなかった出発地点とは……?!


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富山県の富山地方鉄道を舞台に、1か月後に定年を迎える運転士と、夫の人生を支えながらも自分の今後の人生について思い悩む妻の姿を描くヒューマンドラマ。


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鉄道運転士の滝島徹は、仕事一筋の日々を過ごし、気が付けば59歳。
ずっと専業主婦として彼を支えてきた妻の佐和子は55歳。
徹の定年退職を1か月後に控え、夫婦は第2の人生を迎えようとしていたが……佐和子は結婚を機に辞めた看護師の仕事を再開すると宣言。
しかし徹は妻の申し出を全く理解しようとしない。
ふたりは口論となり、佐和子は家を飛び出してしまい、一度できた溝は深まる一方で、ついに佐和子は徹に結婚指輪を返し、離婚届も手渡すのだ。

これからの人生は、妻のためにと思っていた夫と、これからは自分の人生を生きたいと願った妻。

そんな妻には夫の知らない‘ある理由’があった。

その理由がきっかけとなり佐和子の心情に変化が生まれていたのだ。
それは……実は彼女は定期健診で腫瘍が見つかり再検査に引っかかったっていたのです。
ただ幸いにも腫瘍は良性だったのだが、過去の母の介護やこの診断結果が、自分の死、今後の人生について考えさせる発端なったのでしょう。

そうして残りの人生を自分の生きたいように生きてみたいと強く思うようになった。

ただ、夫は腫瘍云々の話は全く知らないため、妻の主張が理解できずに憤慨し、大きな溝が出来てしまう。

そばにいるのが当たり前すぎて、本当の気持ちを言葉にできないふたり。
すれ違う夫婦の想いに、ひとり娘とその夫、徹の同僚や部下、佐和子が担当する患者一家の人生が交錯していく。


まさに人生の節目に直面し、これからの生き方を模索する夫婦。
人生という旅の中には、歳月を重ねてこそ感じる迷いや焦りがある。
立ち止まったり、寄り道したり、時には後戻りしたり……そうやって自分の人生を見つめ直す夫婦とその周りの人々が、喜びと幸せを分かち合ってきた、かけがえのない存在に気付くまでが描かれています。

そこにあるテーマは‘人と人との絆’であり、まだまだ終着点を迎える歳ではない。新たな道を歩み始めるだけの時間は残されている。
このことを観る者に伝える内容になっています。



男は徹に、女は佐和子に感情移入しながら観てしまうかと思いますが、こんなシーンがありました。

佐和子と信子が夫についてしみじみと語り合う。

「‘おっ’じゃなくて‘ぺッ’よ」
「え?」
「‘おっと’というより‘ペット’みたいなものよ。そう考えればいいの」
「可愛くないペットですね」
「ホントよね!」

夫に対する愚痴を言い合いつつも、深い愛情を感じさせるほのぼのとしたワンシーンではあるものの……男は頭を抱え、女性は思わずニヤリみたいな?!



無口で不器用で生真面目、頑固一徹、仕事一筋に向き合ってきた亭主関白の徹。
でも心の奥底には優しさを兼ね備えている……ある意味、ベタなステレオタイプの父親を三浦友和が静かに好演。

徹の最後の電車の運転シーンは、ちょっと臭い演出だけれど、ホームに降り立った際に妻に見せるはにかんだような笑顔が涙を誘う。


妻役の余貴美子もとても魅力的で素敵です。


また、新人運転士を演じた中尾明慶の‘いい人’ぶりが良い。
屈託のない笑顔がサイコー。


小池栄子は珍しく(?)フツーな役でした。
いつか豹変してダークな面を見せるのでは……と期待したんだけど(笑)。


あと中川家礼二がなにげにいい味を出しています。