
【出演】
甘利はるな、麻生久美子、宮崎美子、谷村美月、草村礼子、斉藤暁、榎木兵衛、北見敏之、深水元基、柄本佑、上野樹里、光石研、塩見三省
【監督】
萩生田宏治
“春奈 小学5年生……出産まで115日。
お腹のなかには、みんなの愛がつまってます”

ちょっぴり負けん気が強くてイマドキの小学5年生の女の子・持田春菜。

ある日の放課後、幼なじみのクラスメイト・ヒロユキとの帰り途中、寄り道をしていた時のこと。

春菜の目の前で立ちションをするヒロユキ。
「チンチンにヒゲ生えてるし!」
と春菜。
「動くよ、ほら!」
「超ウケるし!ね、くっつけてみる?」
「うん」
二人は興味本位で‘くっつけっこ’という遊びをしてしまう!

一方、春菜の担任である東京からやって来た若い女の八木先生。

「セックスはエロい。出産はグロい」
というイメージしか持たない生徒たちに……
「性教育の授業に力を入れるべきだ」
こう考えた八木は、同僚の反対を押し切って授業で人形を使い‘妊娠の仕組み’について科学的に教える。

と、春菜ははたと思い当たる。
「これって、ヒロユキとした‘くっつけっこ’のことじゃないの?」
春菜は‘妊娠したかもしれない’と不安になる。
「ウチ、お腹ん中になんかいるみたい。赤ちゃんが生まれるかもしれない……」
大人たちに言えないまま……やがてお腹が丸みを帯び始め、次第に膨らんでいく。

春菜は小さな命の芽生えを実感するが、「ちょっと太ったんじゃない?」と誰もが思い込み、そのことに全く気づかないのだった。


クラスメイトの男子たちからは「デブ!」とからかわれるが……。
最初に仲良しの美香が異変に気付き、
「春菜ちゃん、もしかして……そのお腹……」
「うん、妊娠してる」
大きなお腹に戸惑いつつも、春菜と友人たちは自分たちだけの力で赤ん坊を守ろうと決意するが……。


小学5年生の妊娠、出産という衝撃的なテーマを通し、命の尊さ、家族や友情、教育など様々な問いを投げかける人間ドラマ。

5年生のコドモの妊娠、出産というセンセーショナルでショッキングな題材を取り上げながら、貫かれているのは命に対する真摯なアプローチ。
春菜ををはじめとするコドモたちが見せる野蛮だが、とても逞しい生命力と前向きに立ち向かう姿勢が素晴らしい。
問題の本質を無視して文句と非難を延々と繰り返す大人たちに対し、コドモたちの現実への対応能力!
ただシンプルに起こったことと向き合い、当たり前のように命の尊厳を守るために一致団結する。
「責任を持ちなさい」と口を酸っぱくして教え諭すも、志しが高すぎて暴走しがちだった八木先生さえも、教え子たちから置き去りにされ、本当の‘責任’の意味をコドモたちによって教えられるのだ。
荒唐無稽でお伽話のようなストーリーの中に、性と生命、友情のありかた、家族のかたち、教育の役割など、この作品は様々な疑問を観ている者に投げかけてくる。
ちなみに、春菜とヒロユキが‘くっつけっこ’をする前に、石段の上でヒロユキが立ちションをするシーン。
それを春菜はじっと見つめているのですが、これって何となく大林宣彦監督の『転校生』を彷彿とさせるものが。
(ラスト近くで一夫が一美の前で立ちションをする。しかもその場所は石段の上だ)
『コドモのコドモ』も『転校生』も、子供の性をテーマにしているという共通点があるし、もしかしたら萩生田監督はそれを意識してこのシーンを撮ったのだろうか???
出産シーンを迫真の演技で魅せた甘利はるな。
(『ハラがコレなんで』に於ける仲里依紗の出産シーンに負けず劣らず!?)
「おっきいウンコをするみたくきばりなさい」とのアドバイスを受けたらしいですが、11歳にしてのあの演技はただ者ではない!
春菜のクールな姉役の谷村美月が、超可愛い。
(特に冒頭でのダンスシーンが)
そして、教師役の麻生久美子のヒステリックぶりも見逃せない。
真面目すぎて熱心なあまり脱線、暴走気味で、生徒たちから総スカンを食ってしまうヤギセンこと八木先生を好演。
それから上野樹里がスナックのママ役でワンシーンだけチョイ役出演。

DVDのジャケットのイメージから単なるキッズムービーかと思い込み敬遠していたのだけれど……谷村美月、麻生久美子、上野樹里を目当てで観てみたら……いつしか子役たちの演技にグイグイ引き付けられていた。
これは隠れた(?)逸品かも!