
【出演】
妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、我修院達也、満島ひかり、安藤政信、テイ龍進、高嶋政宏、小日向文世、阿部力、津田寛治、寺島進、森下能幸、島田洋八、松田翔太、大杉漣
【監督】
石井克人
“運んでいるのは、お前の運命だ”
1999年、世紀末。

25歳のフリーター・砧涼介は、工業地帯を走るトラックの車内で……運転をする仏頂面で寡黙な花園丈(ジョー)と彼をサポートするお調子者のジジイの横に座り、ほんの1ヶ月前のことを回想していた。
「何でこんなことになっちゃったんだ……」
砧は、『野獣死すべし』の松田優作に憧れて役者を目指し、学生演劇の世界に飛び込んだが、自分の理想とはかけ離れた毎日の稽古に嫌気がさし、所属していた劇団を退団。
理想だけは高いものの何の努力もせずに役者になる夢を自ら閉ざし……以来、パチスロに明け暮れる自堕落な生活を送っていた。
その日もパチスロの負けがこんでいた彼は、張が仕切る中国人グループの儲け話に思わず乗ってしまい……見事にダマされて、逆に300万円もの借金を背負ってしまう。
その莫大な借金を返済するため、張に連れられて裏社会の便利屋の仕事をしている山岡を訪ねる羽目に。

「300万て大金だよ~あんた」
「…………」
「そういえばジジイのとこでひとり欠員が出たって言ってたな。やる?その仕事やるよね?」
「あ、あのどんな……」
「やるよね?」
「……はい」
こうして借金返済のため、彼女の紹介で日給5万円の‘運送屋=スマグラー’のアルバイトをすることになったのだ。

一方、あるホテルの一室。
裏組織・田沼組の取引現場に、チャイニーズマフィア最強にして伝説の二人組の殺し屋・背骨と内臓が姿を現す。
彼らの目的は、組長の田沼春治の首。

背骨の繰り出すヌンチャク攻撃の圧倒的な強さと速さで組員をあっという間に葬り去り……難なく田沼組のトップを追い詰める。
トラックの中では、運送の仕事を仕切るジョーと、その相棒のジジイの横でビクビクしながら小さくなっている砧。
「使えねえような奴、寄越しやがって」

成り行きでこの二人とともに初仕事にかかった砧だったが、運んでいたものは……なんと死体だった!
背中に入れ墨が彫られた死体……。
「運び屋(スマグラー)」の仕事は、危険な荷物の運搬と処理。
高額の報酬の理由はそこにあったのだ。
決して陽の光には晒すことのできない、とんでもなくヤバい‘ブツ’の運搬と処理を極秘に行うこと。
仕事仲間も依頼主も裏社会に生きる筋金入りのプロで、いずれも強烈な個性を放っている怖そうな連中ばかり。

その仕事をきっかけに、自分が飛び込んだ世界が、たった一度のミスすら命取りになる死と隣り合わせの世界であることを、やがて砧は嫌でも知ることになる……。

砧たちが運んだ荷物は、田沼組長の死体だった。
組長を失った田沼組の幹部・西尾、河島らが動き出す。

そして、その様子を冷ややかに見つめる組長の若妻・ちはる。

殺した相手が背骨、内臓だと判明し、やがて砧たちのもとに新たな依頼が舞い込む。

それは想像を絶する代物!
仕事の内容は、「実行犯である殺し屋の背骨を田沼組の元へ運ぶ」というものだった。
そんな砧らに、纏わり付くちはる。

「女は邪魔だ。失せろ!」
「依頼主にそんな口きいていいのかよ」
「お前が依頼した?」

ちはるの思惑とは?

砧は背骨を監視する役割を与えられたが、彼に親近感を持ったことから油断をしてしまい、逃げられてしまう。

当然、失敗は許されないのにも関わらず砧は、その人のよさが災いして、人生最悪の失敗をしてしまった!
「このままだと俺たちが殺られちまう。砧、お前が責任とれ」
「え?」
「奴らは背骨の顔を知らない。だからお前が背骨になれ。お前が背骨ということにして差し出す」
「そんな……無理ですよ!」
「お前、役者目指してたんだろ!一世一代の大芝居見せてみろ!背骨になりきれ!」
「…………」
「心配すんな。俺が背骨を見つけ出して取っ捕まえる。必ず助けに行く……それまで耐えろ。どんなことをされても耐えろ」
ジョーのこの言葉によって死地の中での覚悟を決め、自らが背骨の代役として暴力団の元に差し出されることになる砧。
もはや死を覚悟するしかないのか?
だが、生と死をリアルに感じるその絶体絶命の大ピンチの中、これまで真剣に生きることを放棄してきた彼が、初めて自分で決意し、一世一代の大芝居に打って出る!

果たしてその運命は……!?
「逃げるな!今までみたく逃げてちゃダメだ!演じろ、演じるんだ!俺は……俺は背骨だーー!」
