『樺太 1945年夏 氷雪の門』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『樺太 1945年夏 氷雪の門』


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-s~01.jpg


【出演】
二木てるみ、鳥居恵子、岡田可愛、木内みどり、北原早苗、藤田弓子、千秋実、若林豪、島田正吾、丹波哲郎、三上真一郎、藤岡重慶、黒沢年男、佐原健二、今福正雄、赤木春恵、田村高廣、南田洋子、浜田光夫、栗田ひろみ、織本順吉、久米明、岸田森、中条静夫、平泉征


【監督】
村山三男




“「みなさん、これが最後です、さようなら、さようなら……」
9人の電話交換手の乙女は、何故死を選んだのか!”




1945年夏、太平洋戦争は既に終末を迎えようとしていたが、戦禍を浴びない樺太は、緊張の中にも平和な日々が続いていた。

しかし、ソ連が突如として参戦、日本への進撃を開始。
北緯50度の防御線は瞬く間に突破され、ソ連軍は戦車を先頭に怒濤のごとく南下してきた。

戦禍を被った者たちは、長蛇の列をなして西海岸の真岡の町をめざす。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~10.jpg


真岡電話局の交換嬢たちは、4班交代で勤務に就いていた。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~05.jpg


関根律子は、みんなをまとめる班長だ。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~07.jpg


彼女たちの中には、原爆を浴びた広島に肉親を持つ者がいる。最前線の国境に恋人を送りだしたものがいる。戦火に追われて真岡をめざす姉を気づかう者がいる。


刻々と迫るソ連軍の進攻と、急を告げる人々の電話における緊迫した会話を、胸の張り裂ける思いで聞き入るほかになすすべがなかった。


8月15日。全く突然に終戦の報がもたらせられる。

敗戦国の婦女子がたどる暗い運命、生きられるかもしれないという希望、様々な思いが交錯する中で、樺太全土に婦女子の疎開命令が出た。

一人、また一人と、交換嬢たちも引き揚げて行く。

だが、その中には命令に従わず、決死隊としてその編成に参加し、交換手として職務を遂行しようと互いに励ましあい、責任を果たそうと心に誓う20名の乙女たちがいた。


ソ連の進攻は依然として止むことなく、むしろ激しさを増す。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~06.jpg


「戦争は終わったのではないか?これはどういうことだ!?」


8月20日、霧の深い早朝……突如、真岡の町の沿岸にソ連艦隊が現われ、艦砲射撃を開始!
町は紅蓮の炎につつまれ、戦場と化す。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~08.jpg


この時、第一班の交換嬢たち9人は局にいた。
緊急を告げる電話の回線、町の人々へ避難経路を告げ、多くの人々の生命を守るため、彼女らは職場を離れようとはしなかった。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~04.jpg


じりじりと迫るソ連兵の群。取り残された9人の乙女たち。胸には青酸カリが潜められていた。

局の窓から迫るソ連兵の姿が見えた。
路上の親子が銃火を浴び倒れる。
もはや、これまでだった。
律子はたった一本残った回線に……


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~09.jpg


「みなさん、これが最後です。さようなら、さようなら」
と告げると静かにプラグを引き抜いた……。




ソ連の侵攻作戦のただなかで、最後まで通信連絡をとり、若い生命をなげうった真岡郵便局電話交換手9人の乙女の悲劇を描いた真実の物語。



戦争は終わったはずなのに、なぜ彼女たちは死を選ばねばならなかったのか?
その深層に挑み、根底に流れるは平和への願い。


交換手の女性たちは、全員が10代後半~20代半ばまでと皆、若い。
職場を離れればどこにでもいる普通の女の子たちで、楽しくお喋りし、おしるこ会を開いてレコードを聴き、恋人もいる。

しかし、電話交換手の業務を最後までやり抜くという決意は何があろうとも揺るがない。

「私たちが仕事を投げ出して疎開したら、残された人たちはどうなるんですか!通信不能になって、混乱するのは目に見えています。私たちは、最後まで残ります!交換手の仕事を続けます!」



戦争の犠牲になるのは、女、子供、老人……悲惨な場面の連続に心が痛む。

「戦争は終わったのに、どうして!」
この悲痛な叫びが、胸に迫ります。



この映画、実は幻の作品だった!

1974年当時、日本の映画界にしては珍しく、製作費が5億を超えた超大作として話題を呼んだらしい。

戦闘シーンを陸上自衛隊が全面協力し、広大なオープンセットを組み、且つ豪華キャスティングと、スケールが大きい。

ところが公開直前に……急遽、公開中止となってしまう!

その理由は、当時のソ連大使館から外務、文部両省に「反ソ映画の上映は困る」との抗議により、配給会社が自粛に至った……という。

その後、北海道と九州で2週間の限定で劇場公開されたものの、実質的には日の目を見ることはなくお蔵入りしていたのです。

確かにソ連軍はまさに極悪非道の限りを尽くす鬼畜のように描かれているので(何の罪もない民間人の婦女子を容赦なく撃ち殺すなど)‘反ソ’映画だと受け取れる側面もあるけれど……ただこの映画の最大のテーマは‘反ソ’ではなく‘反戦’。

「どうして戦争なんかやるのよ!」
と子供を殺された母親が泣き叫ぶ台詞からも明らか。


そして2004年、唯一残されていた貴重なフィルムが発掘され、新しくデジタル処理を施し、36年の時を経て2010年にやっと劇場公開されたという曰くつきの作品です。



戦艦が進攻してくるシーンの特撮はミニチュア然としていてかなりちゃちいけれど、戦車は(10台以上が列を成して進んでくる)本物を使用しているためかなりの迫力。


それから当然ながら役者陣がみんな若い!(古い映画を観るのって、これがなにげに面白い)

二木てるみは『赤ひげ』での演技が印象強いですが、この作品でも好演。

あと岡田可愛が超可愛いのでビックリ。(なんとバレーボールをするシーンもある。『サインはV』を意識?)