
【監督】
想田和弘
“狂気か?正気か?”

外来の精神科クリニック「こらーる岡山」を舞台に、心の病を患う当事者、医者、スタッフ、作業所、ホームヘルパー、ボランティアなどが複雑に織りなす世界を観察したドキュメンタリー。
日本社会がタブーとして来た題材を敢えて正面から見つめ、当事者たちの日常生活、思想、不安、悩み、苦しみや喜びにカメラは肉薄していきます。

「こらーる岡山」には、様々な神経症を患う人々が通っている。

その顔ぶれは老若男女幅広く、発病の理由も、病気との付き合い方も様々。

病気に耐えられず自殺してしまったり自殺未遂を繰り返す人もいれば、何十年も病気と上手く付き合い、自らの哲学や信仰、芸術を深めていく人もいる。

彼らが抱えている様々な心の問題や機微は、現代日本に生きる人間なら誰にでも身に憶えがあるかもしれない。
観ているうちに、正気と狂気の境界線が曖昧に感じてすらきます。
患者のひとりは言います。
「私らは病気だけど、健常者だって完璧な人間なんかいないんですよ。みんなどこかに不安や悩みを抱えているでしょ?障害者も健常者も何ら変わりない」
想田監督は観察映画として、ナレーションや説明テロップ、音楽を使用しない独特の映像スタイルを貫いている。
よって観た者ひとりひとりが、画面上で起こることを自由に観察し、考え、解釈できる内容になっている点も興味深い。
また、「被写体の顔にモザイクをかける手法は、当事者に対する偏見やタブー視をかえって助長する」との考えから、素顔で映画に出てくれる当事者のみにカメラを向け、被写体を人間として鮮烈に描くことにも成功しています。
かなり刺激的な内容の重い題材のドキュメンタリーではありますが……面白かった……と言ってはいけないのかもしれないけど(?)とにかく面白かったです!
