『結婚しようよ』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『結婚しようよ』


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-es~01.jpg


【出演】
三宅裕司、真野響子、藤澤恵麻、中ノ森BAND、岩城滉一、モト冬樹、松方弘樹、ガガガSP、金井勇太、田山涼成、波田陽区、入江若葉

【監督】
佐々部清




“吉田拓郎の名曲で彩る、父と家族の物語”




今どき毎日欠かさず家族揃って夕食を共にする家なんてちょっと珍しい。
しかし、こと香取家においては、こうした決まりと習慣が今日まできちっと守られている。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~09.jpg


香取家の主人・卓は不動産会社に勤める平凡なサラリーマン。
妻の幸子は専業主婦。
お嬢さんタイプの長女・詩織は大学4年生。
そして次女の歌織は、デビューを夢見てバンド仲間3人と活発に動き回っている。


会社帰りの夕刻、卓が駅前広場で‘吉田拓郎’の「落陽」を歌うストリートバンドの演奏に合わせて口ずさんでいた時、木村充という青年と知り合い、卓はつい我が家の夕食に彼を誘ってしまう。


家族がいない充は、一流の蕎麦打ち職人を目指していた。


歌織はバンド仲間のユッコ、チータ、シナモンと一緒に練習に余念がなかった。歌織が使っているギターは、昔、卓が使っていた名器ギブソンだ。


ある日、卓は顧客である菊島夫婦から、老後の田舎暮らしに適した物件を頼まれて、山間の古い家付き土地を紹介した。

早速、卓は湧き水の水路作りを提案し、率先して働く。


充が持参した豆腐で寄せ鍋を囲む香取一家の夕食時。

仲の良い詩織と充に、卓はひどく不機嫌に。

それに歌織もバンドがライブハウス‘マークII’のオーディションに合格し、これまでのように家に早く帰ることができない……家族一緒の夕食に黄信号?


‘マークII’のオーナー・榊は、歌織が使っているギターに見覚えがあった。
その昔、若い卓が愛用していたものだからだ。
榊は、歌織が卓の娘と知って二度びっくり。

彼は若い頃、卓とデュオを組んで歌っていたのだ。

その頃、大学同級生の幸子が、このライブハウスでウェイトレスのアルバイトをしていて、卓と恋に落ちたという。

歌織は両親の恋物語と、卓が歌を断念した事情も初めて知ることとなった。


詩織は充からプロポーズを受ける。

歌織もライブハウスで榊や丸山、バンド仲間と夕食。

帰宅しない娘二人に、卓は子供のように怒り、幸子に八つ当り。


卓はライブハウスに榊を訪ね、20年ぶりの旧友に愚痴をこぼす。

家族の変化に憤懣やるかたない卓だったが、幸子からも自立を仄めかされて意気消沈。

翌日、
「ボクに詩織さんを下さい!」
と勇気を振り絞って言う充に、卓は思わず手を挙げてしまった!


歌織のバンド‘カオリ&スリーキャンディーズ’のデビュー演奏の日、榊の招きで卓と幸子がライブに姿を見せた。

娘のバンドの歌と演奏に、二人の青春の日々が甦り……。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~11.jpg


やがて菊島夫婦宅の水路が完成し、多勢の人が集まった。
卓と幸子、榊と丸山、歌織と三人の仲間、そしてこの日のために蕎麦を打つ充と詩織。ここで卓と充がめでたく和解。


‘マークII’で、詩織と充の結婚式が行われた。
そしてもう一組……今日まで結婚式を挙げていなかった卓と幸子も、舞台に晴れの姿を披露して皆の祝福を受ける。

拓郎の名曲「結婚しようよ」を歌う卓の目には大粒の涙が溢れて……。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-es~02.jpg


2006年秋……吉田拓郎が実に31年ぶりに‘つま恋’でのコンサートを開催。

集まった3万5000人のファン……その熱狂的観衆の中に、仲睦まじい卓と幸子の姿があった……。




全編に吉田拓郎の名曲(全20曲)を散りばめたハートフルなホームドラマ。


エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて-i~10.jpg



遠い昔、愛する人を守ることを心に自分の夢を諦めて以来、家族の幸せのためだけに働き詰めで生きてきた主人公の姿は、団塊世代の共感と涙を誘うはず。

ラストには、31年ぶりに行われた拓郎の‘つま恋コンサート’のステージを劇中で再現!

歌うは「落陽」だ!

‘土産にもらった サイコロ二つ。手の中で振れば また振り出しに。戻る度に 陽が沈んでゆく♪’


その他にも「明日に向かって走れ」「春だったね」「やさしい悪魔」「アンドゥ・トロワ」「襟裳岬」「結婚しようよ」「恋唄」「今日まで、そして明日から」「旅の宿」「人生を語らず」「風になりたい」……等などが、劇中に流れます。


拓郎ファンなら間違いなく涙もの、そうでなくても70年代のフォークソング全盛期に青春を謳歌した世代には、たまらない作品になっているかと。

(中ノ森BAND、ガガガSPの拓郎カバーバージョンも新鮮で魅力的!)



クライマックスのダブル結婚式のシーンがよい。

父、母、長女、次女の4人家族に起きるさざ波……それを乗り越えてやっと掴んだ本当の幸せ。
長女の結婚式に加えて、その昔、事情があって式をしていなかった父と母が、周囲の計らいで晴れてウェディングを果たす。

ここでお父さんが得意の拓郎ソング「結婚しようよ」をギターを奏でながら歌う感動のクライマックス。



家族一途のちょっと頑固なお父さん、優しく家族を包むお母さん、心優しい長女、歌手をめざすバンカラな次女。

この愛すべき一家を……誰からも好かれる好青年の長女の恋人、田舎暮らしを実行する睦まじい老夫婦、お父さんの親友でライブハウスのオーナー、料理とギターが得意なその弟分、次女のバンド仲間……と心優しき人たちが取り囲んで、とても温かな物語が展開されてゆくのです。

この映画には悪人や、嫌な人間は一人も登場しない。
まるでお伽話のようで……観終えた後には、こちらまで幸福感に浸れる作品でした。


心を安らげたい時なんかには、超最適の映画!