『デンデラ』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某シネコンにて『デンデラ』を鑑賞。


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【出演】
浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子、山口果林、白川和子、山口美也子、角替和枝、赤座美代子、石橋凌


【監督・脚本】
天願大介




“姥捨山には、続きがあった。
老いて生きる、は罪なのか”




古代日本に残る姥捨山伝説。


雪に閉ざされた山間の村。

70歳になった老女は、食い扶持を減らすために山に捨てられ、極楽浄土を願いながら死を待つしかなかった。


だが、そんなしきたりを受け入れて死んだと思われていたはずの70~100歳の老女50人は、過酷な自然状況の中で集落を築き、懸命に生き延びていたのである。


捨てた村に復讐を誓う者、静かな人生を願う者、さらに移住を望む者……。


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代々受け継がれてきた慣習に沿って、捨てられ死ぬことを当然と受け止めていた斎藤カユは、村の掟によって70歳を迎えた日……姥捨山に捨てられた。

あまりの寒さで意識を失った彼女は、‘デンデラ’と呼ばれる集落で目覚める。


そこにはこの集落の創始者で、自分たちを捨てた村人への復讐を誓うリーダーで100歳の三ツ屋メイ、この地を豊かにして村を見返そうとするマサリ、狩猟が達者なヒカリなど49人の老女が住んでいた。

「おめえら、生きてたのか!」


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カユと同じ村の出身で、かつて捨てられた老婆たちは、‘デンデラ’というコミュニティを作り、生き延びていたのだ。


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彼女たちと触れ合いながら、村に決められた今までの人生とは違う生き方を考え始めるカユ。


一方、カユが来て、デンデラの人数が50人となった事を機に、メイはかねてよりの計画を実行に移す事を決める。

「オラたちを捨てた村をぶっ潰してやる!」


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そんな中、デンデラの存続を脅かす恐ろしい大事件が持ち上がる!


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その時、カユが選んだ新たな人生とは……。


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一度は死ぬため山に捨てられながら、幾多の困難にもめげず ‘生き抜く力’を取り戻していく老女の姿を描く人間ドラマ。


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『楢山節考』の意思を継ぎ、今村監督の息子である天願大介監督が姥捨山伝説を新たに紐解きます。


老いるとは何か、生きるとは何か。
今を乗り越えようとする老女たちが、人の持つ生命力を呼び覚ます様がとてもパワフル!


極寒の雪山の中、生きるか死ぬかの瀬戸際で驚異的な生命力を発揮して、力強く生きようとし、且つ、自分たちを捨てた村を襲撃し復讐を企てようとさえする。


30年間も怒りをためて、襲撃の機会を窺っていた100歳のメイは、こう言い放つ。

「男は問答無用で皆殺しだ!女子供でも、デンデラに歯向かう奴は容赦なく殺せ!」


彼女たちは手作りの武器や弓矢を片手に山を下り、村へと向かうのですが……その途中で……。


そして……デンデラにとって最強最悪の‘敵’も出現し、彼女たちは次々に餌食となり、無惨な姿を晒す。

それでも、怯むことなく一丸となって立ち向かうのです。



『楢山節考』の後日談、捨てられた老婆たちのその後の物語ということなので、暗くて重苦しい雰囲気の人間ドラマが展開される……のかと思いきや、なんとこれは、老女たちによる凄まじいまでのサバイバル・アクション映画だった!


血が飛び散り、足をもぎ取られ、内臓をぶちまける!
スプラッター的描写も満載。

中盤以降は‘デンデラVS○○’の激烈バトルが展開!


そしてその敵は、デンデラの人間たちにとっては、まるで合わせ鏡かのような存在でもある。



実父が遺した名作『楢山節考』にオマージュを捧げる……なんて甘いことはしなかった天願監督。

元々は今村監督の作品とは対極を成す(反抗するように?)アナーキーな映画が出発点だった天願監督だけに(初期の作品『妹と油揚』『アジアン・ビート アイ・ラブ・ニッポン』『無敵のハンディキャップ』は大傑作!)いい意味で期待を裏切る内容になっていました。



老婆を演じる浅丘ルリ子、草笛光子、倍賞美津子、山本陽子ら超ベテラン女優陣は、ボロボロの汚い服をまとい、老けメイク(と言っていいのかな?)で、深い雪山の中を駆け回り、女優魂を見せ付けてくれる。

それでも、この4人はやはり品があって綺麗です。


特に倍賞美津子がメチャメチャいい!
眼帯姿が(片目が潰れている設定)カッコよくてクール。

自らを犠牲にして仲間を救おうとする最期は、涙なくしては見られません。



出演者の大半は老境に入った女優たち。(唯一のメジャーな男性キャストは、カユの息子役で冒頭に登場の石橋凌のみ)

60代~70代後半の女優陣が(最高齢は草笛光子か)雪の中を走り回り、転げ回り、這いつくばり……する姿は迫力満点。



『楢山節考』の地味でちょっと哲学的な印象とは真逆の(?)何が何でも生きてやるという老婆たちのサバイバル戦争を是非、体感してもらいたい。