
【出演】
玉木宏、綾瀬はるか、須賀健太、志田未来、松岡俊介、伊藤歩、星由里子、柄本明、阿部寛、中谷美紀、マギー、宮田早苗、ベンガル、小形雄二、神戸浩、
【監督】
磯村一路
“君の声は、僕には届く。
初恋のあった場所を覚えていますか?”
舞台は北海道。
どこまでも広がる大地、大きな空という豊かな自然に囲まれ育った8歳の加藤心平。
夫を亡くし、身体が弱いながらもたくましく生きる母・沙月と二人で楽しく暮らしていた。

絵を描くことが大好きな心平は、授業が終わるとすぐに教室を飛び出し、大好きな川へと向かう。
母に魚をたくさん食べてもらう為に、魚捕りに行っているのだ。
幼なじみの高倉小百合は、生れつき耳が聞こえず声も出ないが、不思議と心平とだけは心が通じ合い、いつも二人で遊んでいた。
小百合の聞こえない声は、心平にだけは届くのだ。
ある日、川に潜っていた心平は、大きくて綺麗な魚・雨鱒に出会う。
雨鱒は逃げずにじっと心平を見つめている。
心平も見つめかえすと、何と雨鱒は突然、心平に語りかけてきた。
すぐに友達になり……毎日、雨鱒と川で遊ぶようになる。もちろん小百合も一緒だ。
そんなある日、オスの雨鱒がメスの雨鱒を連れてやってきた。
結婚して上流の方に行くというのだ。
小百合は、
「あたしも大きくなったら心平のお嫁さんになる」
と言い、二人は雨鱒たちに結婚を約束する。
寂しいながらも雨鱒と‘さよなら’をする二人。
そんな時、心平の雨鱒の絵がパリ児童絵画展で特賞を獲ったという大ニュースが飛び込んでくる。
小百合の父である村の名士・高倉士郎が主催して、心平の祝賀会が行われた。
高倉は亡き心平の父親の親友で、沙月に密かな想いを抱いていた。
心平の将来を心配していた沙月は最高に幸せだった……が。
それから14年後、22歳になった心平は高倉酒造で作業員として働き、小百合と故郷で昔と同じように仲良く過ごしていた。

心平は仕事よりも絵に熱中し、そして魚を捕って過ごすことが喜びだった。
そんな折、高倉から、
「心平の絵が東京の画廊に売れた。東京に行ってチャンスを生かせ」
と強く勧められる。
心平は大好きな故郷と、そして何よりも小百合と離れて暮らすことに不安を感じていた。心平には、今の生今の生活が限りなく幸せだったから。

しかし、小百合の……
「心平のため。私はずっと待ってる」
という言葉に背中を押されて東京に行くことを決意する。
東京に来た心平だが、その心にはぽっかりと穴があいてしまっていた。

慣れない都会での生活のせいなのか?小百合がそばにいない寂しさからなのか?それとも、ここには何かが欠けているからなのか?大
好きなはずの絵を描くことが出来なくなっていた。

一方、故郷では高倉が小百合を優秀な社員の英蔵と結婚させようとしていた。

小百合の祖母の手紙で状況を知った心平は動揺し、悪夢を振り払うかのごとく絵を夢中で描き始める。
そして、絵を描き上げた時、心平は故郷に戻る決意を固めるのだったが……。

絵を描く天賦の才を持った心平と耳の不自由な小百合……ふたりが一途に初恋を守り通す姿を描く純愛ラブストーリー。
初恋、故郷、母の愛……それは二度と手元には戻らないものだけれど、心の中では永遠に生き続けている。
心平と小百合が周囲の大人たちの中で揉まれ、人生の荒波に立ち向かいながら、初恋をどう昇華させ、決着をつけていくかを追っていきます。
一方で、彼らを見守る大人たちにも、秘めた初恋が今も大切に心の奥底に仕舞われている。
きっとあったはずの‘あの頃の初恋’を思い起こさせてくれます。
人生の機微を絶妙な距離感で切り取ると同時に、心平のと雨鱒との交流シーンでは、ファンタジーの要素も取り入れつつ、北海道の雄大な自然を背景に静かに進む物語が心地良い。
耳と口が不自由な役の綾瀬はるかは、その表情、仕種だけで微妙な感情を見事に表現。
いつもの溌剌とした明るいキャラクターは封印し、陰りのある女の子を好演しています。
玉木宏の抑えた演技も、哀愁感たっぷりでよかったです。