『プール』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『プール』


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【出演】
小林聡美、加瀬亮、伽奈、もたいまさこ


【監督・脚本】
大森美香




“理由なんて、愛ひとつで十分だ”




タイのチェンマイ郊外の小さなプールのあるゲストハウス。

そこで働く京子は、タイ人の子供・ビーに今日の食事を何にするか話しかける。
会話のあとで京子は言う。

「今日は特別な日ですからね」


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その頃、チェンマイ国際空港にひとりの若い日本人女性・さよが降り立っていた。

彼女を迎えに来ていたのは、見知らぬ男性・市尾。
彼はゲストハウスで京子の仕事を手伝っているという。


ゲストハウスにやってきたさよは、不思議な雰囲気を持ったオーナーの菊子と会う。

「いらっしゃい」


実は、さよは京子の実の娘。

4年前……京子は突然、さよを日本の祖母のもとに残して単身タイにやってきていた。

さよは、大学卒業を目前に控えて、そんな母に会うためにタイを訪れたのだった。


だが、久々に母との再会を果たしたものの……さよにとっては初対面となる人々と京子が楽しそうに過ごしている様子に戸惑いを感じてしまう。


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そんなさよも、ゲストハウスでの生活の中で、それぞれが抱える事情を知っていく。


母親が行方不明で、早く再会したいと思っているビー。

「お母さんに会いたい……夢の中でもいいから」


ビーの母親を見つけてあげたいと行動するがうまく行かず、葛藤を抱える市尾。


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そして、すでに残された命の長さを宣告されている菊子。

「何だかね、死ぬ気がしなくって」


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それぞれの現実を自然に受け入れている人々と過ごす中で、さよもいつか自分の心が他人に向かって開かれていくのを感じる。


そして、さよがやってきて4日目。

市尾が作った鍋を囲んでいる時、さよは京子にずっと聞きたかった疑問を初めて素直にぶつけていく……。


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ひとつのプール……その周りに集まった人々。
タイの古都・チェンマイを舞台に、6日間をともに過ごす5人の姿を綴るほのぼの系ハートフルストーリー。



ゆっくりと流れる時間が何とも穏やかで温かくて、凄く心地良い気分に浸れる内容です。


それぞれの事情を抱えた5人の男女の6日間の人間模様をさらりと映し出す。

ドラマチックな出来事は何も起こりません。

描かれるのは、自然体で緩やかに生活する登場人物たちの個性的なシンプルライフ。


頻繁に出てくるこれまたシンプルな言葉。
「おはようございます」「こんにちは」「ありがとう」「いただきます」「ごちそうさまでした」
普段、当たり前のようになにげなく使っている言葉なのに、とても美しく響きます。


カメラはほとんど動かさず、一枚の絵を切り取るかのような構図での演出も新鮮。(アップは極端に少ない)


それからプールサイドで、小林聡美がギターを爪弾きながら「君の好きな花」(自ら作詞作曲)を歌うシーンがメチャメチャいい!
癒されること間違いなし。



ラストが何とも意味深。

帰国するさよが、プールサイドの椅子で寝ている菊子に声をかけます。

「ありがとうございました!さようなら!」

菊子は身体を起こして優しく微笑みながら手を振る。

そして……車で空港に向かう途中、オープンカフェにいる女性に気付き、
「あれ、菊子さん?……そんなワケないか」
「分からないわよ~あの人は神出鬼没だからね」
と京子。


次のシーンでは、プールサイドで寝ている菊子の姿が俯瞰で映し出されます。


菊子はただ単に昼寝しているだけなのか?
それとも遂に余命が尽きてしまったのか?

どちらとも解釈できるラストでした。