『津軽百年食堂』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某シネコンにて『津軽百年食堂』を鑑賞。


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【出演】
藤森慎吾、中田敦彦、福田沙紀、ちすん、早織、永岡佑、藤吉久美子、大杉漣、かとうかず子、野村宏伸、手塚理美、伊武雅刀


【監督】
大森一樹




“百年永々と受け継がれてゆく日本人の心と味「魂」が咲かせる物語”




明治42年、弘前。

大森賢治は、津軽蕎麦の屋台を営んでいた。


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鰯の焼き干しから取る出汁は、他に真似のできぬ深い味を出しており大評判。

その焼き干しは、戦争で夫を失ったトヨが、幼い娘フキと共に青森から運んで来るもの。

賢治は、トヨに淡い想いを抱きつつ、自分たちの店を持つことを夢見ていた……。


時は流れ……現代の東京。

結婚披露宴の会場でバルーンアートを披露している大森陽一。
記念写真を撮っているカメラマンの筒井七海。

陽一が、うっかり七海の照明器具を壊してしまい、慌てた七海から思わず飛び出た津軽弁。
二人は、どちらも弘前出身だった!

陽一は、借家を七海とルームシェアすることで照明器具代を弁償するのはどうかと提案。

「男と女がひとつ屋根の下っていうのは、ちょっと……」
「部屋は別々なんだしさ、気にすんなよ」
「いや、気にするって」


はじめは戸惑いを隠せない七海だったが……経済的理由からの共同生活がスタートする。


陽一は、得意の蕎麦を作り七海にご馳走。

「美味しい!」


彼の実家は、弘前に百年続く‘大森食堂’。


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四代目にあたり、中学生の頃から父・哲夫に津軽蕎麦作りを仕込まれていたのだ。

しかし、父との確執から、店は継がずに東京で暮らしている……故郷に対する反発と捨て切れぬ思い、将来への不安に陽一の心は揺れていた。


そんな時、哲夫が交通事故で入院したとの連絡が姉から入る。

「当分、食堂は閉めることになると思う。でも帰って来なくても大丈夫だから」


だが、翌朝、
「お客さんを待ってる店が可哀想で……」

祖母・フキの切実で悲しげな電話の声を聞いて、一時的な帰省を決めるのだった。


写真撮影スタジオで仕事中の七海も、アクシデントに見舞われる。

師匠の浅尾が突然、倒れたのだ。

病院で、浅尾とその妻の強い絆を見て、七海はショックを受ける。

浅尾は、師匠であり……実は七海の‘恋人’でもあったからだ。

‘私が入り込む余地はない……’


落ち込んで帰ると……陽一は、書き置きを残して既に帰省してしまっていた。

「何で、こういう時にいてくれないのよ……淋しいよ……」


陽一は、久しぶりに弘前の実家に足を踏み入れる。

数年前、就職に失敗して、
「仕方ないから店でも継ぐわ」

ところが哲夫は、
「店を安く見るな!」
と激怒し、大喧嘩に。

その時以来の帰省だった。

フキは、陽一の帰りをずっと待ちわびていた。

そして、津軽蕎麦を作り始め、哲夫の代わりに大森食堂を開ける。

店を訪れた高校時代の同級生、美月や政宗との交流に故郷の心地よさを感じるのだった。

「やっぱ、いいなぁ、弘前は」


そんなある日、七海が突然、弘前に帰省。

彼女は、今は使われていない実家の写真館に陽一を案内する。

亡き父の思い出を語り、失恋を認め、自分を見つめ直す七海。

そんな彼女を陽一は優しく受け止める。


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陽一は、自分なりに味をアレンジした津軽蕎麦を入院中の父に出前するが……
「出汁はいい。でも何だ、この麺は!?こんな蕎麦をお客さんに出してんのか?」
と雷を落とされ、猛反発。

「代々の味を受け継ぐことは柄じゃない」

やはり東京に戻ろうと考えるのだが……。


そんな時、フキが急死してしまう。

祖母の顔を見た瞬間、陽一の心に熱いものが込み上げてくる。

初代・賢治の津軽蕎麦を、大森食堂を生涯愛し続けたフキ。

陽一は、彼女が楽しみにしていた‘さくらまつり’への出店を決意する。

「婆ちゃんの旅立ちへの餞だ!婆ちゃんのために俺はやる!」


明治時代の賢治と現代の陽一。

満開の桜が見守る中、それぞれに小さな奇跡が起ころうとしていた……。


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故郷への複雑な思いを断ち切れない青年の心の成長を描いたハートフル青春ストーリー。


創業100年を誇る老舗蕎麦屋の長男である陽一は、自己実現の思いを持ちながらも、家業を継がなかった事に対する後ろめたさが捨てきれない。

しかし、家族のピンチを機に故郷と向き合った事で、進むべき道が見えてくる。

故郷を離れて住む人なら誰もが持つ望郷への熱い思いと共に……イマドキの青年・陽一が、葛藤を乗り越え、百年続いた津軽の食堂を受け継ぐ重みを受け入れて四代目となるまでと、明治に生きる初代・賢治の人生とが重ねて描かれていく。



賢治の魂、その‘娘’である祖母の思い、頑固な父の覚悟。

それぞれの人生を生きたひとりひとりが、それぞれに受け継いで来た大切な味と魂。

家族の心が、そして東京で知り合った七海の生き方や郷里の友人達との触れ合いを通して、陽一の気持ちは少しずつ変化してゆく。
大森監督はその姿を丁寧な演出で紡ぎ上げていきます。



オリラジの二人が予想以上にいい!

故郷への反発と愛着に揺れ、道を決め切れぬ現代の若者・陽一を演じた藤森慎吾、明治に生きる実直でシャイな賢治役の中田敦彦……共に好演。
(時代が違うので、二人の絡みはありません)


それから亡き父の写真館に思いを抱きながら、夢を見つけていく七海役の福田沙紀も見事な演技を見せてくれました。

ボートに乗って桜の写真を撮るシーンが印象的。
『櫻の園』もそうでしたが、福田沙紀は桜が似合う!?


ただ大杉漣と恋人同士(不倫だから愛人か?)という設定は納得出来なかったけど(笑)。
(年の差、40歳って……あせるあせる


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故郷を想うこと、家族を想うこと、それぞれが誰かから何かを受け継ぐこと。

忘れかけていた心が、目覚めていくような……百年の心の繋がりを描く物語を堪能し、癒されました。

いい作品でした!


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