
【出演】
高部あい、長谷部優、上堂薗恭子、渋谷飛鳥、佐津川愛美、波岡一喜、松澤傑、佐野大樹、村松利史、川合千春、津田寛治、温水洋一
【監督】
堀江慶、佐伯竜一
“朝日ってこんなにキレイだったんだ”
このもやもやした毎日をどうにかしたいし、でも友達いないと生きていけないし、うっかり先生を好きになっちゃったりするし、誰にも言えない家庭の事情があったりもする。
将来なんて知らない。
大人と子供の真ん中で、少女たちは戦っている。
心がカサカサになる前に、栄養をとらないと。
その日、長い夜を越えて彼女たちは、朝日という栄養にありついた。

〈第1話〉シブヤ ドロップス ~ミオ編~
私の日常は普通、いたって普通の毎日。
学校も親も勉強も、全然ピンと来ない。
同じことの繰り返し。毎日、毎日、まいにち……。
今日はずっと前からチエと約束していた日。
学校発、JR経由シブヤ行き。

「このままシブヤに住んじゃわない?」
なのにチエは帰るんだね……あっち側に。
スクランブル交差点の向こうに、私はどうしても戻れなかった。
終電なくなって、夜のシブヤに一人取り残されて、さてどうしようか?
そんな時、画家志望のテツが現れた。
テツのバイト先である無国籍カフェバーは、ホームレスの溜まり場だった。
私が生きてる場所と全然違う。
子供のようにはしゃぐおっさん達を見ていると、ホームレスもいいかなって思う。
「私もホームレスになる!」
でも……
「あんなの自由でも何でもないからね」
ウエイトレスの言葉は私を現実に引き戻す。
わかってる。
私だって楽しいことばかりじゃないことくらい、わかってる。
でもここはシブヤ。一緒にいるのはホームレス。
世界一自由なこの空間で、思いっきり空気を吸ったっていい。
走り回ろう、シブヤという公園で鬼ごっこをしよう!

〈第2話〉ベッドタウン ドールズ ~アキラ&ミユキ編~

「あー!ごめんケータイ忘れた。戻ってー」

ホント、ミユキのケータイ依存症にはまいるわ。
私たちは電動自転車で来た道を戻る。
今日も遅刻だ。
担任の照屋のキレた顔が目に浮かぶ。
ミユキとは小学校からの幼馴染み。
この‘2ケツチャリ’通学は中一の春から。
交通事故で足が不自由になったミユキを運ぶのは私の日課。
私たちの共通の趣味は格闘技。
「昨日、テレビでやってた『カリフォルニア・ドールズ』面白かったね~」
「燃えたよね!」
そして特技は……追試?
秘密ができてしまった。
しかもミユキだけに、逃しちゃったなぁ、言うタイミング。
なんかイライラする。寝不足だし、遅刻したし、今日は追試だし、勉強してねーし。
しかもアキラに彼氏が出来た……らしいし。
有り得ないことに私以外、みーんな知ってた。
なんなのそれ!私に気ぃ使ってるつもりなの?
デート行けばいいじゃん。
どうせ追試なんて受けてもバックレてもまた追試なんだから。
そうだよ、別にアキラがいなくたって一人で帰れる。
二人でいるのは楽しいけど、いつも一緒にはいられない。
だから強くなんなきゃ!
もっと強くなれなきゃ、きっとお互い甘えてしまう。
女にもたまには殴り合いのケンカが必要なんだ。
また二人であのゆるい坂道を‘2ケツ’したいから。

〈第3話〉クラッシュ・ザ・ウィンドウ ~カオリ編~

私は生物の羽田先生を好きになってしまった。
私は本気なのに先生はいつもスルッとかわしてしまう……完全子供扱い。
じゃあ、私の本能はどうすればいいの?
帰り道、他校の横山って人に告られた。
まあ~いっか、暇つぶしだ。
いくら頭が良くて誉められても、いくら男子にモテても、先生とじゃなきゃ意味がないんだけどな。
つまんないゲーセンデートだけどこれが高校生のすることなのかもしれない。
やっと少し冷静になれたのに……先生、ズルいよ。
奥さんと楽しそうに、私の目の前通り過ぎないでよ。
押さえきれないこの感情、どうしてくれるの。
先生の目の前で熱くなった体に水をかける。
私は先生を振り向かせる最後の賭けに出た。
いつの間にか私は教会の前に立っていた。
息を切らせて私を探しに来てくれたのは……先生じゃなく横山だった。
皮肉だよ神様。たまには助けてよ。
私の全てを捧げるから、懺悔だって何だってするから!

〈第4話〉センチメンタル ハイウェイ ~サトコ編~

今日は私の最後の日である。
今夜、私はママとともに“作戦”を実行する。
この教室も、たいして仲の良くないクラスメートも、照屋先生のお約束の掛け声も、憧れの寺内先輩も……全部最後だ。

昔、お父さんと行ったあの遊園地で、普段食べないコロッケなんか買ってみる。
この地球《ほし》の片隅で、またひとつ無意味な記録を残してみる。
家に戻ると借金取りの猪熊がやってきた。
今夜の極秘作戦を遂行するにあたり、最大の難関はこの男だ。
しかし、何なんだ?この男は!
家に上がるなり、図々しく部屋を物色したりして。
あんたには、関係ないじゃない。
なんでそんなにじっくり見るの?
なんでそんな悲しい顔して私たちの生活を見るの?
‘ヤメテヤメテヤメテヤメテ……ミナイデ……’
「ねえ、ママ?前に好きな人できたって言ったじゃない?」
その人のことは、ホントにもういいの?
今日は最後の日……リセットする日。

東京近郊に住む17歳の女子高生たち……子どもと大人の狭間で苦悩する少女たちの日常と等身大の悩みを綴るオムニバス作品。
退屈な日常、親友への秘密、教師への恋、家族のこと……様々な悩みを抱えた彼女たちの姿を瑞々しくも切なく、そしてリアルに描写。
ある日の放課後から始まる4つの物語。
同じクラスのミオ、アキラ&ミユキ、カオリ、サトコ……それぞれの話が順番に展開されていきます。(別々の出来事が微妙にリンクしつつ)
悩み苦しみながら真夜中を過ごし、朝日が上った時にちょっぴりだけど新しい道が見えてくる5人。
そして翌朝、何事もなかったかのように登校してきて、また普通の日常に戻っていくのです。
但し、サトコだけは登校してこない。
彼女は母親の車で、最後の場所へと向かっていたから。この世の最後となる場所へ。
サトコが後部座席で熟睡しているところに母親が声を掛けます。
「着いたよ」
その声に目を覚ますサトコ……でエンディング。
着いたのは、最後となる場所なのか?はたまた学校なのか?
どちらにも解釈できるラストシーンでした。
4話目でサトコを演じた佐津川愛美が見事な演技!
『赤い文化住宅の初子』や『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でもそうでしたが、おとなしめでどこか陰のある役柄がピッタリとハマる女優です。
あまり期待せずに観たのですが、意外な掘り出し物的作品でした!