
【出演】
高良健吾、谷村美月、宮崎美子、大杉漣、尾上寛之、佐藤隆太、朝加真由美、佐々木蔵之介、塩見三省
【監督】
国本雅広
‘華、僕の妹でありがとう……’
新潟県小千谷市片貝町。
16歳の華が笑顔で病院から出てくる。
彼女の療養のため、須藤一家は5年前に東京からこの片貝町に引っ越してきていた。
<9月9日>
毎年、世界一の花火が打ち上げられる《片貝まつり》の日、急性白血病による半年間の入院生活を終えた華。
帰宅途中、来年の自分たちの成人の花火を盛り上げようと気勢をあげる成人会に遭遇し……
「お祭りに間に合ったね」
ところが、兄・太郎が自室に引きこもっていることを両親から告げられる。
‘入院を終えて家に戻ると、おにいちゃんがひきこもりになっていた’
部屋のドアには‘勝手に入るな!’の貼り紙が。
「おにいちゃん、開けてよ!」
しかし太郎は退院してきた華に会おうとすらせず……。
「無視~!?」
頭がよくて優しい自慢の兄は、今は華にさえ背を向けて2階の自室にとじこもっており、両親はなすすべもなく見守っているだけだった。
華は昔の兄を取り戻したくて乱暴とも言えるぐらいの勢いで兄を外へと連れ出し、成人会に参加させることを計画。
「ねえ、どうなってんの?どうしちゃったの?」
「俺、どっかでボタンを掛け違えちゃったんだよな」
「何それ?もしかして、いいこと言った~とか思ってる?カッコつけてるつもり?サブッ!」
「…………」
華は嫌がる太郎を成人会の集会所に引っ張って行くが、地元育ちでないという理由で入会を断られてしまう。
参加はならなかったものの……太郎は華の助言で新聞配達のアルバイトを始め、新しい生活をスタートさせる。
毎朝、太郎に付き添って健気に励ます華。

「頑張れ、おにいちゃん!頑張れ!」
次第に太郎も妹の健気な後押しに勇気づけられ、少しずつではあるが心を開き始め、立ち直りの気配を見せていく。

「おにいちゃんはネガティブすぎるんだよ。もっと前向きに考えないと。ダサいは個性的、暗いは~~クールとかってさ」
「無理あるだろ、それ」
「おにいちゃんのイメージは色に例えるとオレンジだよ。優しくて温かいから」
「そうかな?」
「私がハナビを上げるとしたら、真っ赤なハナビがいいなぁ。夜空に映える真っ赤なハナビ!」
ある夜、華は母に訊く。
「ねえ、お母さんの夢って何?」
「家族4人揃ってご飯を食べることかなぁ」
太郎は部屋でひとりで食事を、父も仕事でいつも帰りは遅く、食卓に4人が揃うことはなかった。
そんな中、太郎のバイトは順調に進み、と同時に食事も下に降りて摂るように変化していく。

「おにいちゃん、バイト代が入ったらさ、ケータイ買ってよ。」
「やだよ」
「ケチ!」
華は学校に通えるようにもなり、穏やかでちょっと幸せな日々が続いていたが……。

<冬>
華の白血病が再発し、また始まった入院生活。
が……容態は前回よりも確実に悪化していた。

華は、片貝に引っ越してきた5年前、家族4人揃って笑顔で見た花火への思いを太郎に告げる。
「あの時は楽しかったよね~4人とも笑顔でさ!」
「うん」
「おにいちゃんに足りないのはさ、自信だけだよ」
「逆に元気付けられてちゃ、どっちが見舞いに来たのか分かんないな」
「ホントだよ!」
そんな華の思いを知り、太郎は苦労しながらも成人会への参加をどうにか認めてもらい、そのことを聞いた華は大喜び。
「おにいちゃんのハナビ、楽しみにしてるからね」
しかし、華は日に日に弱っていき……。
「私、死なないよね?大丈夫だよね?」
「当たり前だろ。心配するな」
「ハナビを見ると幸せになれる気がする」
「楽しみにしてろよ。凄いの見せてやるからな!」
「うん」
そしてクリスマスイヴ。

太郎は華に、
「これ、クリスマスプレゼント」
「え、何?あー!ケータイだ!」
「欲しいって言ってたろ」
「ありがとうー!」
ところがその夜、華の容態が急変!
太郎と両親は慌てて病院に駆け付けるが……。
「ごめんね……迷惑かけて……もう一回、みんなでご飯食べたかったな……」
華は最期にこう言い残して、帰らぬ人となってしまう。
「ハナビどうすんだよ!見たいって言ってたろ!ふざけんなよ!おい、華!」
自宅に戻った太郎は、華のケータイに電話をかけ……
「天国って圏外なのか……ツッコメよ。いま面白いこと言ったろ……」
<1月>
華の死後、太郎は再びひきこもり生活に逆戻りしていた。
そんな成人式の日……太郎のケータイに着信が……なんとそれは華からの動画メールだった!
「おにいちゃん、成人式おめでとう!日付を指定してメールを送りました。いま送っとかないと、送れなくなっちゃうかもしれないから。おにいちゃんのハナビ、一緒に見れるといいなぁ……」
照れ笑いを浮かべつつ、メッセージを送る華の姿に、たまらず太郎は号泣し……それからある決意を固める。
成人会を辞め、華のために一人で花火をあげるべくアルバイトを増やし、煙火工場の工場長に頼み込んで花火作りを始めるのだった。
<そして、9月9日>
太郎は両親の助けもあり、成人会に復帰。仲間たちと共に花火大会会場へ!
様々な思いの込められた花火が、メッセージの読み上げと共に打ちあがり……遂に太郎の花火が打ちあがる!
息もつかせず赤色の花火が打ち上げられて、赤一色に染まる空。
華の楽しみにしていた光景を両親と寄り添ってみる太郎。
一つ二つと散り逝く花火をただただ見上げている。
最後の火の粉の一つが消えるまでずっと……。
「華、見てるか……」

そしてこの後、太郎に思わぬサプライズが待っていた!
華からの最後の素晴らしいサプライズが!
「ありがとう……華」
年一回の花火に想いを託す雪国の小さな町に生きた少女と、彼女への想いを花火に託した兄との真実を基に作られた物語。
引っ越しをキッカケに孤独な高校生活を余儀なくされ、家族にも心を閉ざしていた太郎が、余命わずかな華からたくさんの勇気をもらい、明るさを取り戻していき、再生していく過程と、それを支える両親との絆が温かい隣人たちに囲まれる美しい町を舞台に……繊細にコミカルに力強く丁寧に描かれていきます。
スキンヘッドにして‘役者魂’を発揮した谷村美月の演技が熱演!
病気が再発しても決して弱音を吐かず、兄の変化を喜び応援し続け、家族が昔のように仲良くなることを一心に願っている華。
谷村美月が全身で表現する華の優しさ、健気さ、強さに涙が止まりません!
彼女を愛しむ気持ちで満たされ、太郎がラストで溢れる「ありがとう」の言葉と涙は、‘これからも僕は華のために頑張っていくよ!’ という決意の表れでしょう。
単に‘難病物・お涙頂戴’的な内容ではなく、ひとりの青年の再生と成長、そして家族の大切さを教えてくれて……元気と勇気ももらえるような、素晴らしい作品でした。