『ストロベリーショートケイクス』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『ストロベリーショートケイクス』


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【出演】
池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子、安藤政信、加瀬亮、前田綾花、宮下ともみ、桂亜沙美、高橋真唯、矢島健一、趙たみ和、奥村公延、中原ひとみ、いしのようこ

【監督】
矢崎仁司



‘神様なんて、いらないんだよ’



「恋したいなあ……」


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「おねがいしますぅぅすてないでくださいぃぃなんでもしますからぁぁ…………」
「うるせー!」

‘惨めだった……人生最悪に惨めだった’


鼻血を垂らしながら泣いて縋った大失恋を経験した里子。

それでも尚、「恋がしたい」と口癖のように呟く彼女は、何とか失恋の痛手を乗り越え、デリヘル店‘ヘブンスゲイト’の電話番のバイトをしつつ、それなりに毎日楽しく過ごし……老人ホームで暮らす母親のもとを定期的に訪れてもいた。


そんなある日、道で不思議な石ころの‘神様’を拾い、家に飾ってお願いごとをしてみる。

「恋がしたいです。誰かの女になりたいです。スペシャルな人のスペシャルになりたいです」


そんな折、傷だらけのボロボロ状態で出勤してきたデリヘル嬢が。

「だ、大丈夫ですか?またDV?」
「どんなことされても好きだから、いいの」
「……愛の形は複雑っすね」


ある夜、既婚の店長からの熱烈な恋のアプローチを受けて戸惑い、
「神様、恋がしたいと言っても誰でもいいワケじゃありません」

気まずくなった里子は店を辞めることにするが、いきなり襲い掛かってくる店長。

「やめてください!」

どうにかピンチを脱して、慌てて家に逃げ帰り……
「神様、店長を殺して下さい……お願いします。あ、あと、恋がしたいです」


そして、日本語が喋れない店主しかいない寂れた中華料理屋に転職。

「秋の長雨……エッチ……こんな雨を眺めながらエッチしたいなぁ」

そんな時、店長が死んだとの連絡が入り、葬式に参列。

「神様、本当に殺してくれるなんて。何でも願いが叶っちゃうんですね……でも、恋は……」



「楽しいって、大切なことですか?」


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里子が密かに憧れている、クールな佇まいのNo.1デリヘル嬢・秋代は、専門学校時代の同級生・菊地を強く想いながらも、彼の前で‘友達’でいることを貫いていた。

スーパーの野菜を「実家から送ってきた」と偽って菊地と会うキッカケを作り、いそいそと菊地に会いに行くことしか出来ない。

彼女はお金を貯めて5階以上の一人用のマンションを購入し、ボケそうになったら飛び降り自殺することを決めている。

「5階以上なら確実に死ねるから」

それが菊地以外を愛せず、決して一緒になれないことを知っている秋代の‘堅実的な夢’。

酔った勢いで菊地に、
「一回だけでいいからエッチしようか?一回だけ」
「でも俺、彼女いるし」
「たかがセックスじゃん」

しかし酔いが覚めると……忸怩とした罪悪感に苛まれるのだった。



「あたしを馬鹿にするなよ」


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異様にプライドが高く、人一倍強く生きようとするがために過食と嘔吐を繰り返すイラストレーターの塔子。

幼なじみのちひろと暮らしてはいるが、‘男と占いと美容’にしか興味がないちひろを内心馬鹿にし、何となく苛ついてもいる。

ある日、塔子は本の表紙として「あなただけの‘神様’」を描いてくれという依頼を受ける。

しかし仕事の発注元である大手出版社の編集アシスタントは塔子が描き上げたイラストをどこかに置き忘れてきたという。

「とりあえず、またチャチャッと描いて貰えます?」
「……分かりました。でもその前に、ちゃんと謝ってください」

あまりにも誠意のない編集長の対応に、静かな怒りが湧き……。

トイレで嘔吐しながら、
「泣いて謝れば、何百枚だって描いてやるよ。私の絵を大切にしないことが許せないんだよ……」


そんな時、元彼が結婚した事を知らせるハガキが舞い込み、何故か大笑い。

「何で笑ってんの?笑い事じゃないでしょ?」
「だって可笑しいんだもん」



「あたしにとっては、彼氏が神様かな」


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自分の居場所を探し求める事務OLのちひろ。

故郷を離れ、憧れだった東京で、男に愛される事でしか自分の存在を確認できないでいる。

イラストレーターとして独立している塔子に憧れつつ、自分は男に愛される女性を頑なに演じ続けてはいるが……恋人の永井は結婚に執着するちひろを欝陶しく感じ、少しづつ離れていく。

誕生日に永井からデートを断られたちひろは、コンパで知り合っただけの男に連絡をし……余りにも虚しすぎるセックスをし……自分で買った靴をを彼氏からプレゼントされたと塔子に見せる。

そして、永井に会いに行き……
「このまま自然消滅じゃイヤなの。気持ちは分かってるからはっきり言ってください」
「別れよ。それじゃ」
「…………」

それから塔子に悩みを話そうとするが、うまく気持ちが通じないまま二人は衝突してしまう。


傷つき、泣き、辛い目に遭いながらも、人生にきちんと向かい合った時……彼女たちに小さな小さな奇跡が起きた!
ささやかだけれど、素晴らしい奇跡が。


海を眺めながら里子は秋代に……
「恋がしたいっすねぇ」



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性格も職業も異なる4人の女性が、それぞれの幸せを求めて自分との小さな闘いを積み重ね、自らを肯定して生きていくまでの模様を……優しい眼差しで愛おしく包むように描いた人間ドラマ。


他人の部屋をこっそり覗き見るのは楽しい!?

登場する4人の女の部屋にも、それぞれの生き様が垣間見えて思わず引き込まれる!


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拾ってきた石を神様に見立てたり、ベランダのブランコにぼんやりと揺られる里子は、暢気なようでなかなかしぶとい女。


棺桶で寝起きする(!)秋代の一途な恋心には、こちらの胸の奥も痛む。


不満や孤独を自分の中に丸ごと押さえ込んで絵を描き続ける塔子と、男に依存し続け、ひたすら寿退社の花道を夢見るちひろの……一触即発のかなりスリリングな同居生活。


そんな彼女たちの最低最悪な日々は、私たちの毎日だとも言える?



里子と秋代、塔子とちひろ……何の接点もないこの二組の友人同士の様々なエピソードが入り交じる形で物語は進み……最後の最後に……‘あるモノ’が彼女たちを結び付ける。



4人の女優がそれぞれ好演!

特に池脇千鶴の飄々とした演技は秀逸。

中越典子のAVもどきな(?)衝撃的シーンも!



女性が観たら共感を覚えるのでは?……そんな雰囲気の作品でした。