
【出演】
市川実日子、小西真奈美、今宿麻美、仲村綾乃、平山葉子、太田綾花、高岡蒼佑、村上淳、河原崎建三
【監督】
安藤尋
‘一番の恋人は、友達でした’
海辺の街にある女子高。
3年に進学した桐島カヤ子は、同じクラスになった遠藤雅美のことが気になっていた。
カヤ子は、雅美がひとりで海岸に向かって歩いて行く後ろ姿をバスの中から偶然見てしまう。
雅美は、何を考え、何を感じているのだろう?
去年、何かの理由で停学して同級生になった彼女。
‘どうして?’
クラス中が彼女に興味を持ちながら、無視している毎日……いつでもひとりでいる雅美をカヤ子はいつも見つめている。
そんなある日、カヤ子は、雅美を屋上での仲間たちとの昼食に誘う……が、ちょっと居心地が悪そうだ。
雅美に誘われて行った彼女の部屋。
彼女が口にする煙草、本棚にあったセザンヌの画集。棚に並ぶ数々の洋楽のCD。
少しだけ自分よりも大人びた世界に雅美は住んでいた……。
それから二人は急速に仲良くなっていく。と同時に、今までの仲間たちに違和感を感じ、徐々に遠ざかっていくカヤ子。
そんなある時、無理矢理に参加させられた合コンで、カヤ子は少年にホテルに誘われ……促されるようにしてベッドを共にしてしまう。
ところがその少年は、これまでの親友が気になっていた男の子だった。
「ホテルに行ったの?最低!汚いよ!」
詰られて落ち込むカヤ子。
そんなカヤ子を雅美は、海へと誘い……。
「私、落ち込むとよくここへ来て海を見るんだ」
「……」
「好きでもいいじゃない。しょうがないよ」
「好きじゃない」
「え?」
「私が好きなのは……遠藤」
「桐島……好きってそういう意味?……だったら嬉しいな」
そして、二人は唇を合わせ……。
「ホントだよ。私も好き」
その途端、嬉しさのあまりに泣きじゃくるカヤ子。
「一緒にいて楽しいし、嬉しいよ。私のこと見つけてくれたの、桐島だもん」
雅美といる時、カヤ子はとても幸福だった……が、1年前に彼女に何があったのか、それは知らないままだった。
雅美の部屋に泊まった夜、深い眠りの中でカヤ子は電話のベルが鳴っているのを聞く。そして、雅美が起き上がるのも……。
夏休み。
カヤ子の進路は、まだ決まっていなかった。
そんな時、雅美が静かに打ち明ける。
「私、中絶したんだ。それが親にも学校にもバレて、停学になった」
そして……雅美は、カヤ子に何も告げずに、どこかへ行ってしまった。
やがて、カヤ子は知る。
同級生で唯一、雅美の停学の理由を知る中野から、雅美が今どこにいるのかを知らされたのだ。
雅美は、付き合っていた男に会いに行っているのだと……あの夜の電話は、その男からの電話だった。
雅美は、さえないグラフィックデザイナーと付き合っていたが、彼には妻子がいた。
しかし雅美は、その男と長くは続かず……にいたが、妻子とも上手くいかなくなり雅美にまた連絡をしてきたのだと……。
それは、カヤ子にとって、とても悲しい裏切り。

カヤ子は、雅美の部屋で見たセザンヌの静物画を真似て果物を描く。
それを美術の先生に見せ、
「美大に進みたいんです」
それからのカヤ子は美術室にこもってデッサンの毎日を送る……誰とも会わずに。
やがて雅美がカヤ子に会いに来るが、どうしても彼女を許すことが出来なかった。

「中学の時の友人と旅行に行ってて……黙って行っちゃってゴメンね」
「どうして嘘つくのかな……」
「え?嘘じゃないよ」
‘一番大切なことをなぜ話してくれないのだろう’
「私がいなくったって、遠藤は平気なんでしょ!」
「平気じゃないよ。それに桐島はやりたいことを見つけたけど、私は流されてるだけだから。桐島は強いよ。私もそうなりたい」
「遠藤は、そのまんまで遠藤だよ」
二人で見た海の青色、歩いた道、空の青、不器用なキス。そして……「好き」という言葉。
カヤ子が好きなのは、雅美だけだった。
濃い海の上に広がる空や、制服や、幼い彼女たちの一生懸命な不器用さや、あの頃のそれら全部が、もし色を持っていたとしたら……それはとても深い‘青色’なのかもしれない。

少女たちの誰もが経験する淡い恋心、嫉妬、憧れを静かなトーンの中に、激しく揺れ動く彼女たちの切ない感情を描き出した青春ドラマ。
奔放で傷つきやすく、無垢だからこそ切ない。そんな10代の感情のあやふやな揺らめきを‘青’という色に託して、リアルに描写されていきます。
お互いを‘苗字’で呼び合い、親友であり恋人でもあり……そんな複雑な感情を押し殺したまま付き合っている二人。
劇中に何度も交わす市川美日子と小西真奈美のキスシーンは、ちょっとエロチックながら美しい。
