
【出演】
渡辺大知(黒猫チェルシー)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、岸田繁(くるり)、堀ちえみ、リリー・フランキー、臼田あさ美、石橋杏奈、森岡龍、森田直幸、大西ユカリ、山本浩司、安藤サクラ、大杉漣、宮藤官九郎、木村祐一、塩見三省、中村有志、廣木隆一、みうらじゅん
【監督】
田口トモロヲ
‘青春、旅、音楽
文科系をなめんじゃねえ!’
1974年、京都。
仏教系私立男子校に通う高校1年生の乾純。あだ名は‘イヌ’。
彼はボブ・ディランとギターを愛する音楽少年。
ロックな生き方に憧れてはいるが……学校では優等生にもヤンキーにもなれない中途半端な文化系で肩身が狭い。
家では理解がありすぎ、優しすぎる両親が愛情をいっぱい注いでくれるので、特に反抗する理由もない。

ロックとは程遠い超平凡な毎日を悶々と過ごす純だった……。
‘僕のコンプレックスは、幸せすぎること’
「このままで、ええんやろか?」
部屋でギターを弾きながら、
「‘SEX、SEX、SEXがしたい~ 僕は君と~♪’」
オリジナル曲を気持ち良く熱唱していると……
「カッコええなぁ。吉田拓郎みたいやんか?」
「ウワッ!おかん、ノックせえや!」
「ええ歌やなぁ~」
「もう早よ、出てって!」
夜は夜で通信空手に熱中し、
「ブルース・リーみたいになって、ヤンキー共をやっつけたる」
と、永遠に叶わぬ妄想を……。
そんなある夜、ナショナルのラジカセから流れるラジオの深夜放送で純のハガキが読まれた!
狂喜乱舞した彼は、その勢いで憧れの足立恭子にラブレターを出す。
文面は……ハガキの裏にデカデカと‘好きだ!’だけ。ストレート&マヌケ全開のラブレター。
翌日、母親が、
「明日から家庭教師が来るからな。髪の長い人やで」
‘髪の長いて……女かぁ!女子大生の家庭教師か?やったあ!’
しかし……やって来たのは、髪の長いヒッピー風の男だった。

「え?男……」
「なんや、通信空手やっとんのか?何もやってへん奴より弱そうやな」
「…………」
「ギターもやっとんか?ちょっと歌ってみ」
「は、はあ」
ある朝、通学途中に恭子とバッタリ……すると、
「ちょっと、こういうイタズラやめてくれへん!封筒じゃなくてハガキなんて有り得へんやん。家族にも見られたんやで。これ、いらんから返すわ!」
「…………」
フラれた、完膚なきまでにフラれた。
そんなある日、同じ文科系友人の伊部と池山が、
「夏休み、隠岐島に行かへん?キーワードはユースホステルや」
「ホステス?俺、そういうところは……」
「アホ!ホステスちゃう。ホステルや!」
彼らによると隠岐島のユースホステルにはフリーSEX主義者の男女が集まるらしく……?
「そこに行けば‘モッテモテ’になるらしいで」
「ほんまかいな?」
「日本のスウェーデンちゅう噂や」
こうしてオバカトリオは、
「旅や、旅や、旅やで~~」
期待感バリバリで隠岐島へ……。
バスの中でノーブラの女の子を発見した3人は、思わずガン見し、
「さすが、フリーSEXの島に行く女の子はちゃうなぁ」
そして、ひょんなことからその女の子とフェリーで知り合いに。
「私、オリーブ。女子大生や。よろしくな」
‘こんな綺麗で優しい人がフリーSEXを?’
ますます期待感高まる3人であった……船酔いで○○を吐き散らしつつも……。
とうとうユースホステルに着いた~~が!
「ここがフリーSEXの巣窟?地味やなぁ」
そんな3人を迎えたのが、ロン毛&ヒゲの‘ヒゲゴジラ’。毎年、夏になるとこの島で過ごす常連らしい。
「世界一自由な場所を作りたいんだ」とデカすぎる夢を熱く語ると、すかさず純のギターケースを見遣り、
「ギター、どこの?」
「モーリス」
「見せて」
いきなりディランの曲を弾き語りし、
「ディラン、いいよね~」
‘僕は一気にヒゲゴジラに親近感を抱いた’
そして、3人は待望の海へと繰り出すと……そこには白ビキニ姿のオリーブが!
「え!?おい、透けてるで!」
「あれ、○毛やろ!?」
‘僕らはホンマにアホやった’
その夜、ユースホステル宿泊者が集まったキャンプファイヤーで、自己紹介した純は……
「ここはフリーSEXの島だと聞いて、はるばる京都から来ました!」
大爆笑の渦の中、彼らのあだ名は‘フリーSEX’と決定。
オリーブといい雰囲気になった(?)純は、彼女のために曲を作ってプレゼントすると約束するが……。

ところがオリーブには男がいた!?
ポパイと呼ばれている屈強な男と仲良くしている現場を見てしまい愕然。
すると翌朝、オリーブは急遽、朝イチのフェリーで帰ってしまうと知り……純は急いで港へと走る!

「まだ約束の曲、出来てへんのに」
フェリーは港を離れるところだった。
「オリーブ~~!」
「あ!フリーSEX~!バイバーイ!」
その時、オリーブは一枚の紙を海に向かって投げた。躊躇せず飛び込んでその紙をゲットする純。
それには……電話番号がメモされていた!
そして……島での最後の夜。3人はヒゲゴジラと酒を酌み交わし……。
「港は‘別れの現場’だったろ。人生は出会いと別れの繰り返しだ」
顔に似合わぬヒゲゴジラの哀愁たっぷりの話に酔いしれた(酒にも酔った)3人は、彼を‘兄貴’と慕うのだった……○○を吐きながら。
翌日、島を後にする3人。
ヒゲゴジラとの涙の別れ。
「さよならだけの人生じゃつまらねえぞー!また会おうー!じゃあなー!」
「ヒゲゴジラー!!」
島での自由で気ままな時間に魅了された3人は、いくつもの出会いと別れも経験し、ちょっぴり大人になれた気がしていた……ちょっぴりだけ。
‘悶々とした2学期が始まった’
ところが伊部は家庭の都合で定時制に移ると言い出し、池山はヤンキーに変身していた!
「何も変わらないのは俺だけやん」
そんな時、純はオリーブと再会することに。
大人ぶって吸えないタバコを吸いながら待っていると……
「久しぶり、フリーSEX!」
「ちょっ、声デカいて。純て呼んでよ!」
「ほな、純。これからあんたん家に行きたいわ。連れてって」
「え!」
言われるがままオリーブを家へと招き入れ……両親は興味津々。
部屋で女の子と二人っきりという生まれて初めての経験にドギマギする純。
「あ、そや。約束の曲作ってん。聴いてくれる?」
オリーブに捧げる甘~いラブソングを弾き語り。
と突然、オリーブは泣きだし、
「私な、あの島で失恋したんや。相手はな……」
「うん」
「ヒゲゴジラ」
「えええーーー!」
ヒゲゴジラに会うために、毎年あの島を訪れていたが、叶わぬ恋だった……と告白を。
すると唐突に、
「これからご飯食べいこ?で、どっか泊まろ!ラブホテルとか」
「……!!!」
夜道を腕を組んで歩く二人……そこに池山とバッタリ遭遇。
「お~イヌ。あれ?オリーブやん!?イヌと何してんねん?」
「ウチら、今日から付き合ってん」
「えーー!!マジかい!もうしたん?したん?」
「これからするんや、な、純」
「えーーー!ホンマか?」
「…………」
しかし純はラブホテルに行く勇気が出ず……公園のベンチに。
「あのコ、ヤンキーっぽくなったなぁ」
「あの島が、わしらを変えたんや」
「今日は振り回してゴメンな。純は好きなコ、おるんやろ?それは私とちゃうやろ?ありがとう、純」
キスをすると駆け足で去っていくオリーブの後ろ姿に……
「オリーブ!」
‘結局、何もできへんかった’
純の中には何かが芽生え始めていた。
自由を感じた島での時間、オリーブとの淡い再会、そして授業で初めて意味を知った“色即是空”という言葉に後押しされ、純は文化祭のコンサートにひとりで出演することを決意する!
家庭教師のヒッピーは、
「音楽は武器や。強い武器やで。頑張りや!」
‘SEX、ドラッグ、ロックンロール。SEXはゴムを付けなあかんし、ドラッグは禁止。僕にはロックンロールだけが頼り!’
いよいよ文化祭当日。
ギター片手に電車に乗っていると、同じ車両に恭子がいた!
「今日、文化祭でステージやるねん。観に来てくれへん?」
「うん、ええよ。行く!」
‘奇跡が起きた!’
体育館のステージでは、ヤンキーバンドの演奏が大ウケしている。
「メッチャ盛り上がってるやん。後がやりづらいわぁ」
出番を控える生徒らは意気消沈ムード。
そして……純のステージが時間がきた!
‘やったる!あいつらに負けてられへん’
ボブ・ディラン風の純のオリジナル曲の弾き語りはウケにウケる!
学校で目立つことがなかった純が、初めて脚光を浴びた瞬間であった。

結局、恭子は観に来てくれなかったけど、デートの約束は遥か1年後になってしまったけど……純は確実に変わっていた!
‘誰も同じ場所にいられない。時間はどんどん過去になっていく。でもこの瞬間だけは、心に残る!’
『アイデン&ティティ』に続く~‘ブロンソンズ’こと、みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督のロックと恋愛に憧れる文化系男子を描く青春ストーリー。

ディランに憧れながらも、その思いをぶつける手段を知らない純は「フリーSEXの巣窟」と呼ばれるユースホステルで夏を過ごす。
その夏をきっかけに、純の青春は少しずつ動き始める!
“青春ノイローゼ”真っ只中のモテない少年が、旅に出て、恋を知り、別れを経験しながら、ロックに憧れ、旅に出る……ひと夏の成長物語。
SEXに最も興味がありながら、その手前まで来て立ち止まってしまう思春期の少年の姿を泥臭く、瑞々しく描いており、笑いに笑えて最後にはホロリとさせられます。
徹底的に情けなくてカッコ悪かった純が文化祭のステージでギターをかき鳴らしながら「エロチシズム・ブルース」を歌う様は‘文科系の反逆’だ!サイコーにカッコイイ!
かつて青春を謳歌した大人たちが、胸がドキドキして超熱くなれる青春映画の傑作!
役者陣が皆、素晴らしい。
これが初演技だとは信じられないくらい好演の‘大穴新人’純役の渡辺大知。
飄々としながらも純たちに‘青春’を熱く語るヒゲゴジラ役の峯田和伸。
純のよき兄貴分的存在で、酒やタバコ、そして音楽の魅力を教えるヒッピー役の岸田繁。
文科系の気の弱い少年からヤンキーに転向する池山をパンチパーマで熱演の池山役の森田直行。
純を翻弄しまくる女子大生・オリーブ役の臼田あさ美。
とにかくとことん優しい純の両親を演じる堀ちえみとリリー・フランキー。
そして純の憧れの女の子、恭子を演じるは『時かけ』の石橋杏奈。
エンディング曲にブッ飛びました。
なんと村八分の名曲「どうしようかな」が流れるという涙モノの選曲!(渡辺大知、峯田和伸、岸田繁がコラボしてのカヴァー)
さすが、トモロヲさん~やってくれる!!
ちなみにこの作品は1974年が舞台で、マジソンバッグもさりげなく登場。
石橋杏奈は高校生役で出演しており、配給はあのスタイルジャム……ビミョ~~に『時かけ』とリンク!?