『うた魂(たま)♪』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『うた魂(たま)♪』


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【出演】
夏帆、ゴリ、石黒英雄、徳永えり、亜希子、薬師丸ひろ子、岩田さゆり、森下能幸、田中要次、山中崇、加勢大周、草薙幸二郎、利重剛、中村久美 、ゴスペラーズ、ともさかりえ、間寛平


【監督】
田中誠



‘合唱ナメてんじゃねえぞ、この野郎!’




北海道のとある町。

砂浜から海に向かって、歌を熱唱するひとりの女子高生。

‘歌ってる私を、みんなはどんな目で見てるんだろう?きっと憧れの目で見てるんだろうな……私は、歌ってる私が好き’

完全に自分に酔いしれてウットリと……が、周りで見ていた人たちは……
「あのコ、大丈夫かな?」
「今年は暑いからね」


七浜高校合唱部のソプラノパートリーダー・荻野かすみは、自分の歌声とルックスに異常なまでの自信を持つ女の子。


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ある日、写真が趣味のイケメン生徒会長・牧村純一から、
「放課後に屋上に来てくれない?」

牧村に憧れていたかすみは有頂天。

‘屋上に呼び出しってことは~これは告白される!?やったーー!!’

放課後、ルンルン&ドキドキしながら屋上へ。

「荻野さん、僕……」

‘キター!告白されちゃう!’

「あの……写真のモデルになってほしい」
「え?……(告白じゃないの?)……うん、いいけど。は!水着じゃないよね?」
「ちょっと自意識過剰じゃない?僕は歌っているところが撮りたいんだ!」

‘これは愛情表現!?やっぱ、私のこと好きなんじゃんか~~!’


朝礼に於ける、合唱コンクール・北海道予選の壮行会。

恐るべきハイテンションで、自信満々に、豊か過ぎるほど表情豊かに歌い上げるかすみ。


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かすみのことが大嫌いな青柳レナは、
「何、あのオーバーな表情。キモい!自分で変だと思わないのかな?」
と陰口。

かすみの姿をカシャカシャとカメラで撮りまくる牧村。


そして……。

「この前の写真できたよ」
「ホント!?見せて、見せて!……え!!!」


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かすみの写真は目を見開き、口を大きく開けた、インパクトたっぷりの顔ばかり。
‘私、歌ってる時にこんな顔してるの?……’
あまりのショックに声も出ない。

「どう?」
「どうって……」
「この顔、ずっーと撮りたかったんだよね」
「嘘!?」
「いいよね~~産卵中のシャケみたいでユーモラスじゃん」
とサラリと言うとクスクス笑い。

「もしかして、面白い顔が撮りたかったの?」
「うん!……あれ?怒った?」

かすみは泣きながら屋上を去る。

しかも、その写真を生徒会新聞の一面にデカデカと載せられてしまった!

激怒したかすみは牧村のクラスに乱入し……
「サイテー」
と強烈な張り手をお見舞いすると教室を出ていく。

「先生、牧村君が失神してますー!」


さらに、牧村に思いを寄せるレナから、
「正直言って、あなたの歌ってる顔って変だよ。誰も指摘しなかっただけ」
と追い討ちをかけられ、すっかり自信喪失。

傷心の夏休み。かすみは部活もサボり、遂に合唱部顧問の産休代員・瀬沼裕子先生に退部を申し出る。

「辞めます。もう自信ないんです。歌は好きだけど、合唱がよく分からなくなりました」
「そう。荻野さんの人生だもんね、辞めちゃいなさい」
「…………」
「でもラストステージは必要よ。明日の合唱祭だけは出てね」

結局、全くやる気のないまま夏祭りのイベントの‘合唱祭’に出演することに……。


合唱祭のステージで生き生きと歌う浴衣姿の七浜合唱部。
しかし、かすみだけは下を向いてばかり、暗い表情、声を出すのもままならず……歌っているのか、いないのかという状態。

心配した部長の松本楓とピアノ担当の副部長・野村ミズキがワケを聞こうとするが……。

「さっきのあれ、何?ちゃんと歌ってよ!」
「ごめん……今日で辞める」
「はあ?」
「人前で歌いたくないもん」
「なんで?」
「カッコ悪いから」

そこに突如現れたのは、番長の権藤洋が率いる、湯の川学院高校のヤンキー合唱軍団。

彼等に取り囲まれて怯えまくるかすみたち。

「な、な、何ですか?」
「はじめまして!俺たち、湯の川学院合唱部一同です!素晴らしいパフォーマンスを見せて頂き感動しました!ありがとうございました!」
と深々と一礼。
見た目と違って真面目で意外と礼儀正しい???

ところが!


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「ここからは‘真剣10代’にならせて頂きます。覚悟はいいか?」
「は、はい……???」
「ちょっとぐらい歌が上手いからって……いい気になってんじゃねえぞ、コラー!むかっむかっむかっ
「ヒ、ヒエッ~~!」
「魂が入ってねえんだよ!俺たちは負けねえからな!負ける気が全然しねえ。オーディエンスのハートを鷲掴みにしてやっからな!……ということで、これから俺らがステージで歌うのを聴いてください」
「は、はぁ……」
「あ、それから」
かすみを指差し、
「あんた辞めた方がいい。あんな歌い方、歌への冒涜だ」


そして、湯の川学院の歌が始まった。
尾崎豊の「15の夜」を熱くソウルフルに歌い上げる彼らを見て、かすみは、
「凄い!歌ってあんなに感情が伝わってくるものなんだ」
と大感激。


かすみは権藤たちに会いに行き、
「感動しました」
「光栄です。ありがとうございます……ではこれから‘真剣10代’になります。覚悟はいいか?」
「は、はい……」
「合唱ナメてんじゃねえぞ、この野郎!!むかっむかっむかっ
「ヒッ!」
「確かにお前らの歌はカッコいいと思った。但し、ひとりの例外を除いて……ひとりの例外はお前だ!」

権藤は歌に対する教えを説き……。


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「歌に必要なものが何か分かるか?それはフルチンになることだ」
「フルチン?ごめんなさい、私は女なんで……」
「心を裸にするってことだよ!メタボだよ、メタボ!」
「メタファのこと?」
「……そうとも言う。いいか、必死になってる時の顔に疑問を持ってる奴は、永遠にダセーまんまだ!フルチンになっておもいっきり声を出せ!そうすればオーディエンスの心に届くんだ。感動させられるんだ。叫んでみろ。‘アイ・アム・フルチン’だ!」
「アイ・アム・フルチン……」
「声が小さい!叫べ!おもいっきり叫べ!」
「アイ・アム・フルチン!」
「そうだ!」
「アイ・アム・フルチン!!」

かすみに笑顔が戻った!
権藤のおかげで、つい忘れかけていた歌への自分の素直な思いに気付いたのだ。

「歌いたい!私は歌いたいんだ!」


権藤は‘歌’に魅了されたキッカケを話す。

何もやりたいことが見つからず、喧嘩に明け暮れていた中学時代。
街で偶然、ひとりの女性ストリート・ミュージシャンと遭遇したのだ。
彼女は‘女・尾崎’と呼ばれていた。
キーボードの弾き語りで「OH,MY LITTLE GIRL」を熱唱する美しい歌声に、心が震えるくらい感動したのである!

「あんた、名前は?……あ、これに書いてくれ」

キーボードの脇に置いてあった楽譜に彼女は名前を書く。

‘裕子’

「ありがとう!」
とその楽譜を手にすると、興奮を抑え切れず走って去っていく……。


「あの人を見て‘尾崎’が歌いたくて合唱部を始めたんだ」
「その人は今も歌ってるんですか?」
「あの日を最後に姿を消した。今では伝説だ。それじゃ、北海道予選で会おう!」
「はい!」


かすみは裕子先生に部への復帰を願い出る。

「これまでは、ただの自己陶酔だったことに気付きました。また歌わせてください」

しかし復帰はしたものの部長命令で‘干され’、歌わせてはもらえない……が、かすみは不平を漏らさずに部員の縁の下の力持ちに徹する。
そして次第に信頼を取り戻していき、遂にコーラスへの参加が許された!

「おかえり!かすみ」
「ありがとう!」


いよいよ地区予選当日。
ところが、大問題が勃発!
湯の川学院合唱部は‘髪型、服装に問題有り。それを正さなければ出場は認めない’との通達が!

かすみは慌てて湯の川の楽屋に駆け付けると、彼等は怒り心頭。

「見てくれが悪いだと!ふざけんな!辞退してやろうぜ、こんな大会!」

かすみは……
「これから私も‘真剣10代’になります。覚悟して聞いてください。歌に大切なのはフルチンになることなんじゃなかったの!?見てくれや体裁なんかどうだっていいんじゃないの!?私にそう言ったじゃん!男なら全裸になってやりなよ!タイマン張ってやりなよ!」
「…………」

と、そこに裕子先生が!

「このコの言う通りだと思うわよ」
「……!!裕子さん!お久しぶりです!」
「誰っすか?このオバハン」
「この人が俺の女神なんだ」
「…………え~~~~~ビックリマークビックリマークビックリマークビックリマークビックリマークあの伝説の!?」
「立派になったわね」
「俺、あの時に貰った尾崎の楽譜でずっと練習してました」
「今日はお互い頑張りましょう」
「はい!」


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髪型を整え、夏服に着替えた湯の川学院合唱部がステージへ。

尾崎豊の「僕が僕であるために」を熱く歌い、圧倒的なパフォーマンスを披露!


その頃、出番が近付いてきたかすみは突然、牧村から声を掛けられる。

「どうしても話したいことがあるんだ」
「なに?」
「あの写真であんなに傷つくとは思わなかった。あんな風に歌うのが可愛いと思ってた。大好きだった。荻野さんを好きなのに……ごめん」
「お願いがあるんだ。もう一度、私の歌ってるとこ撮って!」


ステージ袖で裕子先生は部員たちに、
「私は、しがない産休代員にすぎませんが……みんな、心から楽しんで!」
「はい!」


ステージに並ぶ七浜高校合唱部。
曲は「青い鳥」。

かすみの変化が、合唱部の仲間とそのステージを包み込み……素晴らしい歌声となって会場内に響き渡る!

権藤の教えを胸に心を‘フルチン’にして歌うかすみの表情は、眩しいくらいに輝いていた。


そして……七浜合唱部は優勝を飾り……。

‘アンコールでささやかな奇跡が起きた’


彼女たちが熱唱する「あなたに」。

その歌声はステージから徐々に客席へと広がっていき……。


‘これがハーモニーなんだ。歌うって、こんなにも気持ちのいいことなんだ’


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歌が大好きで、ちょっと自信過剰な女子高生が、歌と自分を見つめ直していく過程を描いた青春ストーリー。


クラシックからポップスまで~~名曲がたくさん登場し、合唱のパワーってスゴイと痛感させられる。


みんなが一つになって歌うって、こんなにも楽しくて気持ちいい。何かに、がむしゃらに一生懸命になれるって素晴らしい。
そんなポジティブなメッセージに、観たら絶対元気になれて、一緒に歌ってみたくなること間違いなし!



‘私は歌が上手いんだ~私は可愛いんだ~’と自惚れているかすみ役の夏帆がキュート!

鼻血を垂らして両方の鼻の穴にティッシュを詰め込んだマヌケ顔で、ニヤニヤする様は笑えます。


そして‘とびっきりスピリチュアルなヤンキー’権藤を演じるゴリが、かなりいい。
年齢的に高校生役は無理があるかと思いきや、全く違和感なし。

『嗚呼、花の応援団』の青田赤道を彷彿とさせる(?)ルックスで、尾崎の曲を熱く熱く歌い上げる姿は感動的でもあります。


それから伝説のストリート・ミュージシャンであり、今は気の弱い‘しがない産休代員’裕子を演じる薬師丸ひろ子の透明感のある歌声も素晴らしい!



一人では小さな歌声も、みんなで歌えば、もっと美しく、もっと力強く、もっと感動的になる。熱いソウルがこもったハーモニーに心揺さぶられる傑作‘音楽映画’でした。