「何故か私を受け入れてくれない」
と嘆く涼子に……
「あなた、まだ気付かないの?」
「気付く?」
「森山さんて、実はね……」
「実は?」
「あれはホモだね」
「まさか」
「これだけ付き合ってるのに手を出さないし、それに髪の毛をそっと触る感じとか……あれはホモよ」
「信じられません」
「じゃあ、試してみれば?温泉に誘うとかして」
「温泉かぁ」
翌日、涼子から温泉に誘われた茂はしどろもどろになり、咄嗟に嘘を。
「あ、その日は実家に帰ることになってて……」
「実家?それじゃあ、私も一緒に行く!連れてって」
「え!」
結局、涼子を連れて実家に行く羽目になってしまい……。
駅に着くと同時に、
「ちょっとここで待ってて!すぐ迎えに来るから」
「はあ?何で?ねえ!」
茂は、涼子を置き去りにして実家へ。
茂の頭を見た妹は笑い転げ、
「何それ?ウケる~~!」
「ウケるために被ってるんじゃないよ!」
そして父に懇願する。
「カツラを被って彼女に会ってくれ!頼む!」
「ふざけるな!カツラなんか被れるか、バカ野郎!」
とりあえず涼子を迎えに行く茂。手で頭を抑えつつ自転車を走らせて。
「ごめん、ごめん」
「茂さんの家族に会うの、楽しみ」
「…………」
もうどうにでもなれとヤケクソで玄関を開けると……驚くなかれ、父と二人の弟はカツラ姿で現れた。
「オヤジ……」
「いらっしゃい」
‘これも可愛い息子のためだ’
部屋では妹が先祖の遺影にペンで髪の毛を描いて、
「よし!」
茂の家族に囲まれて楽しい時間を過ごす涼子。
と、母親が涼子を外に誘う。
二人っきりになった時、
「これから茂の悪いところも見つかるでしょうけど、見捨てないでやってください。許してやってくださいね」
「はい……???」
その夜、茂はカミングアウトを決意する。
「大事な話があるんだ」
「はい」
「あの……俺さ……ないんだよ」
「え?」
「だから、頭に全然ないんだよ」
「何が?」
「嘘ついててごめん!」
「……(結婚する気は頭にないのか)……サイテー!」
と泣きながら出ていく。
「やっぱりフラれた……」
ガッカリして居間に戻ると、
「よお!どうだった?」
「ダメでした……て、大和田さん!何でウチにいるんすか?」
「あんたの家族にカツラつけに出張だよ」
「出張って……」
悲しさに堪えきれずに茂は、
「何でハゲてちゃダメなんだよ!薄毛じゃダメなんだよ!そんなことでフラれるのかよ!」
「お前、ちゃんとカツラ外して告白したのか?」
「外してない……てか、外せないよ。つけたまま‘頭にない’って言った」
「バカだなぁ。それじゃ彼女、勘違いしたんだよ。‘結婚は頭にない’ってさ」
「え?」
「すぐ追いかけろ!」
茂は全力疾走で涼子の後を追う!片手でカツラを抑えながら。
しかし、間に合わなかった。無情にも電車は去っていく。
大和田と家族も駆け付けるが、そこにはホームに佇む涙目の茂が。
「涼子さん!涼子さん!」
「何ですか?」
「え?」
反対側のホームに涼子が!
「そっちは逆方向です」
「あ!そうだ……こっちはどんどん田舎の方に行っちゃう」
「何か用ですか?」
「俺は、ある時から臆病になってて……人の視線や笑い声が気になって。気にしないように努力したけどダメだった。俺、隠し事をしてた。俺は本当はカツラなんです!ごめんなさい!」
「知ってた」
「え?」
「初めて会った時から知ってたよ」
「知ってたの?」
「うん。だから何?」
「……俺と結婚してください!温かい家庭を作ろう!」
「よろしくお願いします……大好き!」
‘カツラが僕に幸せを運んでくれた’
その様子を見ていた大和田は……
「今日の精算は~カツラ代、出張費もろもろで~200万と!」

エンドロールでは、涼子が初めて茂に会った時にカツラだと気付いたワケが明らかにされます。
※ちなみに「かずら」とは、仮面と共に使う付け髪のことをいう。
恋をした‘カツラッチ’は「好き」の後に、もうひとつの告白をするために悪戦苦闘する。
コンプレックスを抱える人間の滑稽さを描いた、シュールでハートウォーミングなラブコメディ。
さまぁ~ずらしい緩い展開&間の抜けた台詞に爆笑の連続も、最後にはホロリとさせられます。
(大竹のボケにボソッとツッコミを入れる三村が最高に可笑しい)
真面目一徹で小心者の茂と、胡散臭さに溢れていて掴みどころのない男、大和田。
全く性格の違う二人が、いつしか育まれていく奇妙で理不尽な絆と歪んだ友情の描写が面白い。
茂がピンチになると、何処からともなく出没する大和田。
茂にとっては正に救いの神(髪)。
まあ、その度に高額を請求されるワケですが(笑)。
ヒロイン役の芦名星も好演。(この人の声、妙にセクシーで好きです)