涼太はコタツの外で毛布に包まりガタガタと震えている。
あかり「……コタツ入れば?風邪引いちゃうから」
涼太「……う、うん」
コタツに潜り込み、足を伸ばし……とその足があかりの足に触れ、
あかり「あ!」
涼太「……!ごめん」
あかり「……うん」
世田谷西中学校の校舎に忍び込んだあかりと涼太。

写真を片手に和子の卒業年度のアルバムを盗み見て。

あかり「3のC、3のC……あ、あった、あった、あった……芳山和子……芳山……あった!」
涼太「これがお母さん?」
あかり「そう……じゃあ深町一夫は……深町……あれぇ?ない」
涼太「ちょっと見して……(アルバムをじっくりと見て)……ないなぁ」
あかり「でも、ほら見て!ふたりとも3のCって、ほらクラス章」
涼太「おかしいなぁ……心霊写真ってことないよなぁ」
あかり「(ムッとして)違うわよ」
涼太「……」
あかり「あ!そうだ……直接、お母さんに聞きに行こ」
アルバムの住所欄を指でなぞり、
あかり「あった!」
芳山家の玄関先。
涼太「ごめんくださ~い!」
あかり「ごめんくださ~い!……ごめんくださ~い!……ん~?」
全く返事がない。
そこに自転車で通り過ぎるひとりの少年。(若き日の吾朗である)
あかり「……!?ゴロおじちゃん!?」
急ブレーキで止まって、
吾朗「(振り返り)ん!?おじちゃん?」
駄菓子屋の軒先で、瓶ジュースを手にしたあかりと吾朗。
涼太はその傍らで野球に興じる子供達を楽しそうに眺めている。
吾朗「なぁんだ、芳山クンのイトコだったんだ?」
あかり「……え、んっ……アハハハ」
吾朗「(涼太に)で、あなたがお兄さん?」
涼太「えっ!?いや……」
吾朗「(笑って)似てないね?」
あかり「ア、アハハ」
涼太「……」
吾朗「でも、いきなりおじちゃんなんて驚いたよ」
あかり「あぁぁ、ゴメンね。あれ……和子ちゃんがよく吾朗クンの話を……こう……してたから、親近感が沸いちゃってさ」
吾朗「え!?芳山クンが?僕の話を!?」
あかり「うん、アハハ……あ……彼女に会いに来たんだけどさ、家に誰もいないみたいで」
吾朗「あぁ、芳山クンなら横浜に引っ越したよ」
あかり「え?」
悟朗「うん」
あかり「いつ?」
吾朗「高校に入学と同時に。イトコなのに知らないの?」
あかり「アハハ……いや、なんか最近、疎遠になってたから……アハハ」
吾朗「ふーん」
あかり「かな?アハハ……あ!そうだ。吾朗クン?」
吾朗「ん?」
あかり「この男の子知ってる?」
と写真を見せる。
吾朗「見たことないな。制服は一緒だけど」
あかり「そっか……あ!和子ちゃんの学校と住所、教えて貰ってもいい?」
吾朗「あぁ、いいけど住所は家に帰んねえとわかんねえや。夜には配達終わるからさ、電話してくれる?」
あかり「はい」
吾朗「894の4141、ハックヨヨイヨイ~浅倉酒店!じゃ!」
と言うや、自転車で去る。
あかり「じゃ」
涼太「(苦笑)ハックヨヨイヨイって」
あかり「(同じく苦笑し)ねぇ……時間、空いちゃったね?」
涼太「あ、じゃあさ、ちょっと付き合ってよ?」
あかり「……?」
並木道を歩くあかり、涼太。

大学の映研部室。
未来都市の陳腐なミニチュアセット。
カメラを構える涼太。
あかりは、車のようなはたまた飛行機のようなミニチュアを操作する役目を任されている……が手元を狂わせセットを破壊!
あかり「あっ!」
涼太「あーー!あーー!」
あかり「あ~~!」
慌ててセットに駆け寄る涼太。
あかり「何、これ?」
涼太「えっ!?2011年、未来都市に走る空飛ぶ車!」
涼太、あかりにキューを送る。
涼太「スタート!ドカーン!」
合図に合わせて未来都市のセットをユサユサ揺すり、地震の効果を出すあかり。
あかり「おぉ!(楽しそう)」
涼太執筆のシナリオを読む、あかり。

「タイトル『光の惑星』。地球の自転は狂い始め、重力は失われ、大規模な地殻変動が起きた。画家のヒロは壁に百個の蕾が付いた桜の木を描いた。この桜が満開になったらきっと助けが来る。そう信じて彼等は助けを待ち続けた。そして……」
銭湯にやって来たあかりと涼太。
あかり「お風呂、お風呂、お風呂」
中に入った瞬間、珍しげに、
あかり「お~~」
涼太「じゃ、俺こっちだから」
あかり「あ~わたし、こっちね!70年代色に染まってくるから、楽しみにしといてね!」
涼太「……?」
あかり、湯舟の中で、
「あ~気持ちいぃぃぃぃぃ~ゃ~~~極楽~~~~!」

女湯から聞こえてきたあかりの声に思わず笑みがこぼれる涼太。
そして……外で寒さに震えながらあかりを待つ涼太だったが。
あかりは脱衣所でノンビリと。
冷蔵庫からフルーツ牛乳を取り出し、
「???」
蓋を指でおもいっきり押してしまい、中身が飛び散る。
「……(うわっ!)」
寒さに震えながらひたすら待つ涼太。
その頃、あかりは……マッサージチェアでご満悦。
「あぁう~~イテ~!そこそこそこ!あぁぁぁキモチいいぃぃぃ……あーーー!」
寒空の下で完全に湯冷めしている涼太。
そこに……。

あかり「お待たせっ!」
涼太「……(憮然)」
あかり「いや~~気持ちよかった~~!」
涼太「遅い」
あかり「やっぱ芯まであったまった~って感じ!?」
涼太「う、寒い」
あかり「あ!そうだ!どう!?激カワコーデ!これナツコさんから借りたの。イケてるっしょ!激カワコーデ~」
と70年代ファッションに大喜び。
涼太「げきかわ?何語?」
あかり「激カワ~」
涼太「何語?」
あかり「え?激カワ」
そこにひとつの赤いマフラーをふたりで捲いたカップルが通り……。
あかり「あーー!リアル神田川!……ホントにあんだね~~……あれ?涼太?」
涼太「……ん?」
あかり「な~に?いま見惚れてたでしょ?」
涼太「んなワケないだろ!」
あかり「……(見つめて)」

涼太「うぅ、帰ろ。寒すぎる」
あかりを置いて歩き出す。
あかり「ムフ~~~」
意味不明の笑いを残し、涼太の後を追う。
横浜にある和子の高校に足を運んだあかりと涼太。
校門前で写真を手に和子が姿を現すのを待つ。
続々と出て来る学生達。

涼太「こんなに多くちゃわからないな」
あかり「でも、ここにいることは間違いないんだからさ、頑張って探さないと」
写真と見比べながら必死に和子を探すあかり。
と…そこに和子の姿が。
あかり「あ!」

涼太「お母さん?」
あかり「うん」
慌てて駆け寄り、
あかり「あ、あの!」
和子「……?」
あかり「突然、すみません」
和子「……?」
あかり「あのぉ、わたし、人を探してて……男の子なんですけど……深町一夫って人」
和子「深町一夫?」
あかり「中学の同級生でしたよね?あ、3年C組の」
と写真を見せる。
和子「……これ私?」
あかり「隣の男の子わかりますよね?」
和子「……知りません。ごめんなさい」
あかり「え?いや……」
和子「こんな写真も撮った覚えもありません」
あかり「え!?いや、でもほら、一緒に写ってるし、同じクラス章」
和子、突然頭を押さえて……。
あかり「あ……!?……ごめんなさい。じゃ、また明日来ます」
和子「……」
あかり「何か思い出すことがあったら、教えてください」
和子「……」
あかり「失礼します」
石段を下りながら、
涼太「頼んだ本人が知らないって、もうお手上げだな。やっぱり心霊写真じゃん?」
あかり「そんなはずないでしょ!だって、自分で薬まで作って会いに来ようとしてたんだから」
涼太「ん、そうだな」
あかり「……」
涼太「な!帰り、ちょっと寄り道しませんか?な?」
あかり「……?うん」