合コンで知り合ってから、俺とJちゃんは付き合い始めた。
喫茶店でお茶していると、いきなりJちゃんが「あれ?あの人、もしかしてホストさ…ナルオさんじゃ?」
斜め前のテーブルに目を向けると、ナルオが俯いて何かをしているところだった。
大方、また『ぷよぷよ』でもしているのだろう。
「おい!ナルオ」
俺は奴のところに行き、声をかけた。
「お?お~お前か」
ナルオは携帯から目を離し顔を上げた。もちろん、『ぷよぷよ』の一時停止ボタンをしっかりと押してから。
「何してんだよ?一人で」
「一人?一人って言ったかい、一人って。ハハハ、バカ言うなよ」
「違うの?」
「待ち合わせしてんだよ。マ・チ・ア・ワ・セ」
一々、区切るな!
「まあ、いわゆるデートってやつ?」
そう言うと奴は、鼻の穴を大きく膨らませた。その膨らんだ穴からピョーンと伸びた鼻毛が風にそよいでいるのを俺は見逃さなかった。
「そういうお前は?」
「俺は、Jちゃんと一緒」
「お~お前もデートか。まあ頑張れよ、青年」
お前も青年だろ。
「じゃあな」
俺は何故かイライラしてきたので、さっさと退散した。
席に戻り、Jちゃんと話しをしていると突然、「お待ちしてました!」店内に絶叫が響き渡った。
な、何事?!
その声の主は、やはりナルオであった。
奴は立ち上がって、コメツキバッタのように頭を下げている。
奴の前には、フェロモンむんむんの、まるで杉本彩を彷彿とさせるかのような女性の姿が…嫌でも目立つ派手なルックスだ。
「あの人がナルオさんの彼女なのかな?凄い美人」
「う~ん…でも釣り合わないような…」
一体、どういう関係なんだ?
ナルオは鼻の下を1メートルほど伸ばし、目は宙をさ迷っている。
その前で脚を組み、煙草を吹かしているフェロモン女。
何となくアブない予感がするのは、気のせいだろうか…「続く」。