居酒屋の中に入ると、既に女の子達は揃っていた。
7人とも可愛い~!
どの子の隣に座ろうかな…お!雰囲気が堀北真希っぽい子がいるじゃないか。よし、あの子の隣に…と俺はすかさずその席をゲットした。
そして幹事のAが口を開いた。「じゃあ、始めよう…あれ?おい、ナルオ」
みんなの視線がナルオに集まった。何故か奴は、突っ立ったままだ。
「何やってんだよ。早く座れよ」
「ここ空いてますよ」
ショートカットの子が席を指した。
ナルオは強張った表情にギクシャクした動きで席に着く。
あいつ、もしかして緊張してんのか?ロボットみたいな動きしてるし。まるで高見盛だ。
まずはビールで乾杯。
ナルオは、ほんのちょっと口を付けただけでジョッキを置き、顔を歪めた。こいつ、酒は苦手なのか?
「じゃあ、とりあえず自己紹介する?」
そして自己紹介が続き、大トリはなんとナルオだ。
「ど、どうも…ナルオです。えぇと…よろしく」
え?それだけ?簡潔過ぎるくらい簡潔な自己紹介。
女の子達を前にしてから、ナルオの様子は明らかにおかしい。いつもの饒舌さが完全に影を潜めている。
「あの、一つ質問があるんだけど~」
ボブカットの女の子が突然、口を開いた。
「どうしてそんな格好してるの?もしかしてホストとか?」
触れてしまった。遂に触れてしまった。みんな何気ない振りを装っていたのに。
第一、あんなベタ過ぎるくらいベタな服を着たホストなんていないことは、あんた百も承知でしょ。なのに敢えて聞くか?
「いや、アハハ、やっぱバレた?」
ん?ん?バレただと?ナルオ君、何言ってんの?
「こう見えても昔は、ホストやってたんだよね」
こう見ようが、どう見ようが、どこから見ようがホストには見えないから。つうか、ホストやってたなんて初耳もいいとこだぞ。
「一応、No.1だったりしました~アハアハ」
おいおい、やめとけ~誰も本気にしてないんだから。嘘を重ねるのはやめとけって。
「え~凄ーい!No.1だってー」
これ以上、奴を煽るな。暴走したらどうする?大体、女の子全員、半笑いやん!信じてない証拠でしょ。
「どこのお店だったんですか?」
「え?店?店はね…店はと…」
目が泳ぎに泳ぎまくってるぞ。もうやめとけ。墓穴掘るだけだぞ。ウケ狙いのギャグでしたって言っちゃえ。
「新宿の~クラブ~…恋?」
クラブ恋て…クラブ愛のパチモンか。しかも疑問形で言ってる時点でバレバレだから。
「クラブ恋?聞いたことなーい」
聞いたことなくて当たり前だよ。そんな店ないんだから。つうか、ボブカットのあんたわかって言ってるよね?確信犯だよね?
「いや、アハハ。今はもうないから。No.1だった僕が辞めたら直ぐに潰れちゃったみたいだよ。ドハハハ」
ドハハハじゃねえ!もう呆れてものが言えん。
そんなこんなで合コンは佳境へと突入していくのであった…続く。