合コン当日、俺達はS駅前に集合した。女の子達とは、居酒屋で待ち合わす手筈になっている。
「これで全員揃ったか。あれ一人足りないな。全部で7人だったよな」
「まだ来てないのは誰…あ、ナルオか」
「あいつ、ホントに来るのか?あんまり乗り気じゃなかったんだろ。来なかったらお前のせいだかんな」
なんで俺のせいやねん。
いや、あいつは絶対来る。間違いないなく来る。俺は漠然とだがそう感じていた。
と程なく…「わりぃ、わりぃ」
やはり来た!
「よお、遅かっ…」
俺達は奴の格好を見て絶句した。
三浦カズがよく被っているような帽子に、襟がファーの純白のコート、上下白のスーツ、靴はなぜか黒のローファー。
そして何をとち狂ったのか、手には花束が。
田舎のホストですら、間違ってもこんな格好しねえぞ!
これがこいつの勝負服なのか…あまりに浮世離れし過ぎたセンスにただただ呆気に取られた。
「あれ~お前ら、普通の服だな。合コンなのにジーパンかよ。信じられねえ」
あのぉ、お言葉ですが、あなたの格好の方が信じられないのですが…。
「ところで、その花束は?」Aが口をアングリさせながら聞いた。
バカ!触れるな!もうこれ以上奴に触れるな!もうそっとしとこう。
「あ~これ?一番オキニのギャルにプレゼントしようと思ってさ」
ギ、ギャルて…。しかもオキニて…。
「おい、あんなの連れてって大丈夫か?ヤバくない?」
Bが小声で俺に言った。
「今更遅いよ。もうこのまま行くしかないよ」
俺達は暗い表情に重い足どりで居酒屋に向かった…いや、ナルオだけは満面の笑みに今にもスキップしそうな足どりだったが…。
歩いている途中、ナルオがいきなり携帯で話し出した。
「え?そうそう合コン、合コン、これから合コン!合コンだってば、合コン!そう合コン、合コン」
誰と喋ってるのか知らんが、合コン、合コンと連発し過ぎだろ!何回繰り返せば気が済むんだ。
「ギャハハハ~女の子入れ食いしちゃうよ~」
声、デカッ!
周りの人が何事かと見てるし…。
「うん~じゃあな。これから合コンだから。バイナラ~」
バ、バイナラて…。それにしても、このはしゃぎぶりは何なんだ?合コンなんて飽きてたんじゃなかったのか?
テンション上がりまくりで、ちょっと怖いくらいだ。
何事もなく済めばいいのだが…俺は言いようのない不安に苛まれた。
そして…女の子達の待つ居酒屋に着き、中へ足を踏み入れたのであった…が、そのときナルオの表情が若干引き攣り気味だったのを俺は見逃さなかった…続く。