Bill ColemanのTrumpetの温かい音色と歌心に満ちたフレーズは、決して派手ではないけれど、疲れた時や物事が中々上手くいかなくてチョッとギスギスした気分の時に聴いていると、不思議と心が落ち着いて、穏やかな気分にさせてくれるのが良い。気風の良さと、繊細なんだけれど、どこか大らかというか、優美で小賢しい技巧に逃げずに生命感に満ちたMelodyを紡ぎ出す、これは中々難しいことだと思うのである。Kentucky州はParisに生まれ、CincinnatiにやってきたというColemanは、最初はClarinetやSaxを吹いていたがTrumpetを吹くようになって、Theodore Carpenterに師事したという。そしてNew Yorkを拠点とするさまざまなバンドに加入して活躍した。30年代からたびたび欧州で演奏活動していたColemanは、EgyptのCairoで過ごした後、40年に米国に戻ってBenny CarterやTeddy Wilson、 Andy Kirk、 Ellis Larkins 、Mary Lou Williams、John Kirbyらのバンドをはじめ、さまざまなTop Groupで演奏し、Lester YoungやBillie Holiday、 Coleman HawkinsのRecording Sessionにも参加した。その実力と才能のわりに知名度が低過ぎる。理不尽なほど過小評価されていると言い切ってもいい実力派Trumpet奏者である。48年に人種差別に嫌気がさしてFranceに渡り、残りの人生をそこで過ごすことになったが、もしかすると、そのことが影響しているのかもしれない。実際には渡欧後の演奏も素晴らしく、全盛期は30~40年代だろうけれど、渋みが加わり味わい深さも格別だ。FranceのBlack And Blueからリリースされた本作は、TenorSaxに大好きなGuy Lafitteを迎えた2管フロントで、ピアノにRed Richards、ベースのBill Pemberton、ドラムスにPanama FrancisというQuintet。激渋Vocalも披露し、この録音から1年後に生涯の幕を閉じるとは思えないSwingyな溌剌とした演奏である。
『Really I Do』はBill ColemanがBlack And Blueから82年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は“Crazy Rhythm”。いきなりGuy LafitteのTenorソロがご機嫌にぶっ飛ばす。続くBill Colemanも快調で、Red Richardsの小気味よく転がるピアノも最高。
“You've Changed”はColmanの温かい音色のTrumpetが情感込めて歌い上げる珠玉のBallad。そしてColemanが渋いVocalまで聴かせてくれる。これが中々イイ感じ。Richradsのピアノ・ソロも雰囲気タップリ。
Guy Lafitte作の“Tinto Time”はHard-BoiledにキメたThemeからColemanの歌心溢れるTrumpetソロ、そしてLafitteがぶっとくBlowするTenorソロにRichardsの小粋なピアノ・ソロがご機嫌な指パッチンJazz。
Ferde Grofe作曲の“On The Trail”はDonald ByrdやJimmy Heathの名演で知られる大好きな曲。小洒落たピアノのBlock ChordsをバックにColemanのTrmpetが歌うThemeがイイ味を出している。
Count Basie楽団のTrombone奏者として知られるDickie Wells作の“Hello Babe”。これまたご機嫌なSwing Jazz。Colemanの溌剌としたTrumpetは、やっぱりこの手のナンバーで輝きますな。
Coleman自作のタイトル曲“Really I Do”。Swing~Dixielandの香りがたまらない、ご機嫌にSwingする演奏は心ウキウキ、気分は最高。
Art TatumやCount Basieの名演でお馴染み“She's Funny That Way”は映画『Gems of MGM』のために書かれた曲でDizzyは勿論、Roy EldridgeやBuck ClaytonといったTrumpet奏者がよく取り上げている。ColemanのTrumpetも温かく歌心に満ちた演奏で最高だ。Vocalもイイ感じ。
Irving Berlin作の珠玉の名曲“I've Got My Love To Keep Me Warm”。これまた活気に満ちた心が弾む演奏が良き。LafitteのTnorが最高。
アルバム最後をシメるのは“Montreux Jump”。コレだよコレの威勢の良い生命感に満ちた演奏が楽しい。Colemanも飛ばしている。
◎She's Funny That Way/Bil Coleman
(Hit-C Fiore)