Walter WanderleyのOrganを聴くと、年末に向かって今年も残り僅かになっていくのかなあという気持ちになる。おそらく子供の頃の記憶によるものであろう。幼少時、祖父母に育てられた自分にとって、仕事の関係で両親に会えるのは、年に一度の家族旅行の時だけであった。毎年夏休みに家族旅行は行われ、祖父母の家まで両親が車で迎えに来てくれるのだが、その年は、夏ではなく年末であったのだ。旅行に出かける時、大抵父の車の中では、彼が大好きなSatchmoやAstrud Gilberto、セルメン、Henry Manciniなんかが流れていたのだが、急遽変更となったその年末の家族旅行の時に流れたのは、おそらくWalter WanderleyとFrancis Laiである(記憶を手掛かりに、後に父のレコード棚で音盤を確認したのだった)。夏休みの旅行が無くなってしまったのは残念で、その日が当然待ち遠しくて仕方なかった子供の頃の記憶で、今でもはっきり憶えている。もうすぐお正月だ、その前に大掃除があるのに旅行なんだ、と子供ながらに罪悪感を感じたのと特徴的なWanderleyのStaccatoを多用したOrganのサウンドとMelodyをずっと憶えていた。さて、Recife生まれのWalter Wanderleyは、Astrud Gilbertoとの共演で一躍世界的に、その名を知られるようになった。本作は66年のAstrudとの『A Certain Smile, a Certain Sadness』に続くVerveからの3作目で、ここでOrganに加えて多重録音でピアノを弾いているのであるが、これがFunkyな指さばきで中々イイ感じなのである。Astrudとの作品は別格として、Walter Wanderleyの作品では本作が一番好きである。なんたってEdu LoboにTom Jobim、Roberto Menescal、Carlos LyraにMarcos Valleの名曲中の名曲を演奏しているのである。悪いわけがない。
『Cheganca』はThe Walter Wanderley Trioが66年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目はタイトル曲で大好きなEdu Lobo作の名曲中の名曲“Chegança”。PercussionとWanderleyのStaccatoを使ったOrganが心地良い。
Walter SantosとTereza Souza夫妻の“Amanha”。この曲はピアノ入りで、これが実にイイ感じ。
“Take Care, My Heart”もFunkyに転がるピアノが入っていて、Organをバックにこれがご機嫌なのである。
Tom Jobimの“Agua De Beber”。ここでもFunkyに転がるピアノがイイ感じ。
Standardの“Here's That Rainy Day”はピアノでしっとり聴かせる。
Astrud Gilbertoも歌ったLuiz Bonfá作の名曲“O Ganso”。前曲から一転して陽気で楽しいノリが最高。
LuizaやWanda Vagamenteが歌ったRoberto Menescalの名曲“Mar Amar”。
Carlos Lyra作のこれまた名曲中の名曲“Voce E Eú”。ドラムスのRimshotと WanderleyのStaccatoを使ったOrganが心地良すぎる。
大好きなDoris Monteiroも歌ったVéra Brasil作の“O Menino Desce O Morro”。
Godoy3兄弟の長男Adylson Godoy作の“Dá-Me = Stay, My Love”ではFunkyなピアノを聴くことが出来る。
Marcos Valleの“Amor De Nada”。気持ち良すぎる極上の気分ですな、これは。
アルバム最後をシメるのはコレしかないわな、の“A Man And A Woman (Un Homme Et Une Femme)”。
(Hit-C Fiore)