Al Fosterは、ある意味面白いDrummerである。特別に超絶技巧で度肝を抜いたり、人々を唸らせるような革新的で個性的な演奏をするわけでもない。所謂一般的に人気の高い技巧に優れたSuper Drummerの派手な連中とは異なっている存在で、存在価値を放っている。何よりMiles DavisがAfrican-AmericanのIdentityを強く打ち出しFunk志向を高めていく時期、72年のアルバム『On The Corner』でJack DeJohnetteやBilly Hartと共にDrumsを担当して以降、85年まで13年間に渡ってMilesのBandを支えてきたのだから。これほど長期間Milesのバンドで叩いてきたDrummerはいないわけで、よほどMiles Davisのお気に入りだったのだろう。ElectricなFunk Jazzだけではなく、Milesが引退していた時期にもHorace SilverやSonny Rollins、Dexter Gordon、McCoy Tynerらから声をかけられてAcousticなJazzを演奏している。おそらくMilesはSimpleに3連よりも8分音符主体で叩くFosterのBeatをベースにして各演奏者のPolyrhythmを組み立てていたのだと思われる。実はFosterはSimpleにも叩けるし音数も多く叩こうと思えば叩けるバランス感覚に優れたDrummerである。Miles復帰後の81年リリースのアルバム『We Want Miles』では意外なほど引き出しの多いFosterの懐の深いドラミングに感心させられた。Band Leaderの意図するところを理解してEnsembleを組み、他のMusicianの良さを引き出す名手といっても良いだろう。そしてSymbal、Snare、Tam、Bass Drumの音量のControllが絶妙なのである。派手な自己主張よりもBand LeaderのConceptを把握してEnsembleのバランスを優先する。それ故に地味と誤解を受けやすいDrummerともいえるかもしれない。本作はおそらくFosterの初Leader作で、アルバムに惹かれて中古の日本盤で手に入れたが、これが大当たりだった。
『Mixed Roots』はAl Fosterがリリースしたアルバム。ProduceはTeo Macero、 ベースにJeff Berlin、T.M. Stevens、Ron McClureというだけでも涎モノだが、Mike BreckerがTonorとSoprano Sax、さらにBob MintzerとSam MorrisonがSoprano Saxを吹き、Jim ClouseがFluteで1曲参加している。鍵盤は菊成雅章、1曲のみTeoがピアノを弾いている。
アルバム1曲目はタイトル曲“Mixed Roots”。Bob MintzerのSopranoにMike BreckerのTenor SaxをFeatureしたFoster作のFunk。Milesとは異なりThemeが分かりやすくPopな仕上がりだが、Breckerのソロは流石の吹きっぷり。
“Ya'Damn Right”はJeff Berlinのベースが低音でウネるFunk。Emotionalに弾き倒すPaul Metzkeのギターソロに続いてスリリングにOutするBreckerのソロが圧巻。
菊成雅章の優美なピアノで始まるBossa風の“Pauletta”。Soprano Saxを吹くMike Breckerも最高だが、菊地のピアノも絶品。ここでのベースはT.M. Stevensだが、これまた素晴らしい。この曲はComposerとしてのFosterの才能が感じられる隠れた名曲。
“Double Stuff”はFosterのドラミングに鼓舞され、鬼のようにBlowしまくるBreckerのソロが凄まじいことになっている。
“Dr. Jekyll And Mr. Hyde”は82年リリースのDave Liebman、Richie Beirach、George Mrazとの連名による『Quest』にも収録された。以上5曲がFosterの作曲によるもの。リズム隊が激しく煽る静と動のContrastが鮮やかでSoprano、TenorのSaxソロも熱すぎる。
お待ちかねプーさん作の“El Cielo Verde”。Sam MorrisonのTenorソロ
最後をシメ」るのはTeo Macero作“Soft Distant”。この曲のみRon McClureがAcoustic Bassを弾いている。BreckerのTenor Saxソロが沁みる。
（Hit-C Fiore）