Marcos Valleもまた今年来日してくれた大好きなBrasilの音楽家である。現在のWildな風貌からはおそよ想像もつかない繊細で育ちの良いお上品なお坊ちゃま風のMarcosがなんとも印象的なジャケットの本作。これがまた、ほぼ全編に渡って当時のMarcosのPartnerであったAnamariaとの甘く多幸感に満ちたDuetが楽しめるMarcosらしい小粋で都会的な洗練に満ちた作品に仕上がっている。裕福な家庭に生まれ、Copacabana Beach近くのApartmentに住んで5歳でピアノを弾きはじめたというMarcos。Bossa Nova誕生時には10代で、所謂Bossa Nova第2世代として登場し、作詞家である兄のPaulo Sérgio Valleと組んで早くから作曲家として類まれなるその才能を生かした数々の名曲を世に出してきたMarcosであるが、元々は政治的な内容を含まない楽天的で美しく「中産階級による中産階級のための音楽」とされたBossa Novaを正しく体現したSinger-Songwriterであったといえる。本作は才能に満ち溢れSergio Mendesに声をかけられて米国に渡り、Verve Recordsからリリースされた全曲英語で歌われた作品でもある。しかし、Brasilでは軍事独裁政権が人々の生活を脅かし、芸術家たちを抑圧し自由が奪われるキナくさい状況が日に日に進んでいくのであった。いつまでも呑気に美しい海と空と女の子を歌いNara Leãoに批判されたMarcosも米国から帰国し翌年にリリースされた“Viola Enluarada”で社会を憂うようになっていくのである。71年リリースの『Garra』では“Black Is Beautiful”で当時の高まりを見せていた公民権運動へ共鳴すらしている。そして、より内省的でProgressiveな音楽性も取り入れていくMarcos Valleもまた魅力的である。本作はEumir DeodatoがArrangementsを担当し、まだまだお気楽でピーハツであったMarcos ValleのSinger-Songwriterとしての魅力が生かされたご機嫌な作品である。全曲最高。
『Samba `68』はMarcos Valleが68年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は当時の奥様AnamariaとのSweetなDuetが多幸感に満ち溢れた“The Answer”。
続いてもAnamariaとのDuetで爽やかに軽快に駈けぬけていく“Crickets Sing For Anamaria”。もう最高としかいいようがありませんなあ。67年のアルバム『Brazilliance!』に収録のインスト“Os Grilos”が元曲。
言わずもがなの永遠のStandardというべき“So Nice (Summer Samba)”。ここでもMarcostoAnamariaの2人に寄り添うDedatoのStrings Arrangementが絶品ですなあ。
“Chup Chup, I Got Away”も休日の午後に聴きたい寛いだ雰囲気のナンバー。
イントロのOrganから雰囲気タップリの切なく憂いに満ちたMarcosのVocalがイイ感じの“If You Went Away”。Stringsも流石のDeodato印。
軽快で躍動感に満ちた“Pepino Beach”は息の合ったDuetもさることながらバックの小気味よい演奏も気持良いっすなあ。
ピアノ弾き語り風でAnamariaの憂いを含んだVocalが印象的な“She Told Me, She Told Me”。
軽快なSamba“It's Time To Sing”はMarcosのCoolなVocalもご機嫌でお気に入りの作品。
イントロのDuetによるScatから鳥肌モノのお馴染み“Batucada”。Melodyも最高だけど躍動するリズム感覚が素晴らしい。
“The Face I Love”もDeodatoの洗練されたセンスが炸裂する極楽気分の優美なWaltz。
アルバム最後をシメるのはMarcos Valleらしい甘くRomanticなアコギの弾き語り“Safely In Your Arms”。寄り添うStringsのElegant。
(Hit-C Fiore)