The Beatlesは後追いでアルバムを集めていった世代だから、既にそれらについての情報はそれなりに仕入れていたわけである。本作についてはThe Beatlesの最高傑作であるとか、Popular Music史上におけるCocept Albumの先駆け的アルバムだとか、Rockを芸術の域まで高めた60年代のCountercultureを代表する作品であるなど、さまざまな賞賛が飛び交っていたようである。しかし、実際のところ、Beatlesを聴き始めた頃の自分は、音楽的には殆ど何も知らない子供であったので、アルバムを手に入れる時に一番優先されたのは、ジャケットが気に入ったかどうかなのであった。この作品は音楽的に高い評価を得ていたことも知ってはいたが、むしろ大好きなMonty Pythonを思わせるジャケットが面白そう、みたいなノリで手に入れた音盤であった。Bob DylanやKarlheinz Stockhausen、William BurroughsやLewis Carroll、Marilyn MonroeにKarl Marx、Lenny BruceにCarl Jung、Edgar Allan Poeまで登場するSurrealで摩訶不思議なジャケット。本作については、その評価について、実にさまざまな意見があり、過大評価だとか、個々の楽曲についても、66年の同時期にEMI Studioで無制限の録音予算の元で制作された“Strawberry Fields Forever”や“Penny Lane”、または前作『Revolver』の楽曲に比較して完成度や魅力の点で議論されている。個人的には最初に聴いた時のBeatlesにしてはRock的な荒々しさやPsychedelicな香りもどこかお行儀良い感じに物足りなさをおぼえつつ、67年の夏を前にリリースされた本作を、自分は後追いで、当時夢中になっていたPunkと一緒に聴いて、徐々にのめり込んでいくのだった。伝統と革新。古き良き英国と刻々と変わっていく日々日常。後になって知ったのはそのSoundに対する執念ともいうべき姿勢。4TrackのStuder J37を駆使してVirtualなMulti Track Studioを可能にし、実験精神に満ちたBeatlesと、彼らのRockやPopsの既成概念を遥かに越えた多様性に満ちた音楽の冒険を実現したGeorge MartinやGeoff EmerickらStuffの力なしにはこのMagicalな傑作は誕生し得なかった。前後の作品に比較してBlack Music、BluesやR&B的要素が薄まり、TradやMusic Hall、Classical MusicをPopに展開し歌詞からジャケットに至るまで極めて英国的な香りに包まれながら未来への扉を開いていこうとしているのが本作の特徴である。
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』はThe Beatlesが67年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は“Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band”。歓声や笑い声のSEやFrench Hornが入りRockなギターとBrassが共存している。
“With A Little Help From My Friends”。Ringoの惚けたVocalと、やっぱり歌いまくるPaulのベースが絶品。
“Lucy In The Sky With Diamonds”はLewis Carrollの世界に迷い込んだPsychedelicな夢を見させてくれるImaginativeなJohnの世界。
アルバムで一番好きな曲“Getting Better”。最初にこの曲を聴いた時はXTCじゃん、コレ的な驚き。PaulのベースとChorusも最高。
“Fixing A Hole”は聴きこむにつれて大好きになった曲。この曲もベースが2拍のウラから入ったり、ギターのフレーズ、Chorusが素晴らしい。
“She's Leaving Home”はHarpを含んだ優美なStrings EnsembleをバックにPaulの英国的なVocalとJohnの掛け合いが素晴らし過ぎる。名曲。
怪しげなJohnのVocalと3拍子に展開するところがご機嫌な“Being For The Benefit Of Mr. Kite !”。HarmoniumとHarmonica、Calliopeの響きがSound Collageと相まって摩訶不思議なCircusのイメージが拡がっていく。
GeorgeらしいHindustani Classical MusicにInspireされた“Within You Without You”はSitarやTabla、Dilrubas、Tamburasの響きがRagaでPsychedelic。在英インド人とGeorgeのみの演奏。。
ClarinetとChimeがPaulらしいMusic Hallを思わせる“When I'm Sixty-Four”。Ragtimeな曲がインド音楽の後に登場する多様性に脱帽。
Paul節とノリの良いリズムにホッとする“Lovely Rita”。
Sounds IncorporatedのメンバーによるBrassにトッポいJohnのVocalとPsycheなギターがご機嫌な“Good Morning, Good Morning”。
Opening NumberをTempo Upした“Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)”に続いて登場するのは
JohnのVocalで始まりPaulが引き継ぎ、再びJohnがPsychedelicな映像をを喚起する名曲“A Day In The Life”。Ringoのドラミングが素晴らしい。最後はOrchestraのCrescendoからFinal Chordで幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)