Gábor Szabóというギタリストは45歳で、その短い生涯を閉じてしまったが、結構な数のLeader Albumをリリースしている。中にはEasy Listening的な安直な作品もあるにはるけれど、異国情緒漂い、ジャンルを越境して、どこか謎めいた雰囲気を醸し出すSzabóの音楽は非常に魅力的である。Magyar Királyság時代のHungaryの首都Budapestに生まれて20歳の時に勃発した1956-os forradalom(ハンガリー動乱)によってSzabóは米国に渡らざるを得なかった。58年から60年にかけてBostonのBerkleeに学び、そこでGary McFarlandや穐吉敏子と出会うことになる。61年からChico Hamilton率いるQuintetのメンバーとなり、同バンドにいたCharles LloydのQuartetにも加わると、65年のアルバム『Of Course, Of Course』や後に陽の目を見た『Nirvana』に参加している。そして盟友Gary McFarlandと組んでJazzのみならずLatinやSoul、Rock、民族音楽の要素を取り入れたジャンル越境の音楽を演奏していくようになる。SoloとしてもImpulse!とも契約を結びLeader Albumを発表して、その名は世に高まっていき、McFarlandやCal Tjaderらと共にSkye Recordsを立ち上げ(このLabelは短命に終わったが)順風満帆、Blue Thumb RecordsやCTIにアルバムを残し、故郷に錦も飾って、さあ、これからかという時に、病で突然この世を去ってしまうのである。さて、本作はGeorge Bensonが76年にWarnerからリリースした同名アルバムで一躍有名になったBobby Womack作の名曲“Breezin'”が収録されている。Bensonより約5年前に、この曲を収録した早すぎた傑作として、アルバム自体もご機嫌な仕上がりになっている。中でもWomackの曲が4曲取り上げられているのが興味深い。ProduceはTommy LiPumaでBobby Womackもギターで参加し、Jim KeltnerのドラムスにWolfgang Meltzのベースに、Carmelo GarciaのPercussion、Felix Falcon (Flaco)のCongaという布陣。1曲のみPianoのMark Levineが参加した以外は鍵盤楽器なしのCoolで異国情緒を漂わせたMusteriousな香りがそこはかとなく漂う逸品である。
『High Contrast』はGábor Szabóが71年にBlue Thumb Recordsからリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は上述の“Breezin'”。優美なStringsをバックにSzabóのギターが甘美なMelodyをCoolに奏でつつ、心地良く歌っている。BensonのVersionでも弾いているPhillip Upchurchのゴツゴツしたベースがイイ味を出している。
Szabó自作の“Amazon”は程よくCoolでBluesyなSzabóのギターの魅力が味わえるご機嫌なナンバー。CongaやPercussionも心地良く響きWolfgang Meltzのベースもウネっていて気分は最高。
ベースのMeltzと共作した“Fingers”もCongaやPercussionが鳴り響き、SzabóがCoolにキメるJazz Rock調のナンバー。この曲のみMark Levineがピアノで参加している。
“Azure Blue”はStringsも加わって一歩間違うと場末の飲み屋で鳴らされるEasy Listening風の曲調ではあるが、SzabóのギターはMysteriousな香りをふりまき、独特の雰囲気を醸し出している。Endingで登場する異国情緒漂うAcoustic Guitarがイイ感じ。
B面に入り再びBobby Womack作の“Just A Little Communication”。イントロからご機嫌なギターのRiffが炸裂してSzabóのギターも歌いまくり。ここでもWolfgang Meltzのウネるベースが実に気持ち良い。
Womackの3曲目“If You Don't Want My Love”は72年公開の映画『Across 110th Street』のサントラ盤やWomackの75年リリースのWomackの同名タイトルのアルバムにも収録された大好きな曲。これなたグッとくる名曲ですなあ。
アルバム最後をシメルのWomack4曲目の“I Remember When”。マッタリBluesyに奏でられるギターが沁みますなあ。
(Hit-C Fiore)