Predmestjeは現Slovenija(Slovenia)の首都であるLjubljanaで70年代半ばに結成されたバンドである。本日ご紹介するのは、英語でSuburbsを意味するこのバンドが77年にリリースした、Debut Albumとなる『Brez Naslova』である。Sloveniaは、ご存知の通り91年にSocijalistička Federativna Republika Jugoslavija(ユーゴスラビア社会主義連邦共和国)から独立を果たした中欧の国である。Sloveniaは、欧州の文化や交易の交差路として古くから存在価値を発揮し、他のYugoslavia諸地域に比較すると西側諸国に隣接する先進的工業地帯ということもあり、独立前から経済や文化面で恵まれた環境にあったと思われる。Balkan半島に位置する各国から70年代になると異国情緒に溢れた魅力的なJazz Rockを演奏するGroupが誕生していくが、Predmestjeもまた、そういった存在の一つで、おそらくメンバーは入れ替わりながらも、80年代前半まで活動を続けて、計4枚のアルバムを残している。そんな中で本作は旧Yugoslavia圏から誕生したJazz Rockとしては珍しいCanterburyの香りを漂わせた隠れた名盤といってもよいのではないだろうか? Electric PianoとMellotronを弾くAndrej Pompe、後にStudio Metro, Ljubljanaを設立するギターとVocalのPeter Gruden、ベースのGabrijel Lah、SaxにAleksander Malahovsky、ドラムスには後に12. Nadstropje( Dvanajsto Nadstropje)、Ansambel Lojzeta Slakaのメンバーとして活躍するJanez Hvaleという5人組。ジャケットはダサダサだけど、中身は個人的にツボど真ん中である。Saxは存在感がないけれど、Solidで小気味よいカッティングがご機嫌なギターや煌くElectric PianoとSpacyなMellotronのCombinationもイイ感じである。79年にリリースされた次作となる2ndアルバム『Danes Včeraj In...』では、Saxとドラムスがメンバー交代しさらに洗練された作品となるが、個人的な好みでは本作に軍配が上がる。
『Brez Naslova』はPredmestjeが77年にPGP RTBからリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は“Dež”。Discotiqueな香りやイナタささえ感じられる歌モノから始まり、いきなり先制パンチを喰らうがギターやVocalが中々味があり、途中で飛び出すフレーズもカッコイイ。思わず惹きこまれてしまうダサカッコイイナンバー。
“Sprehod”はLatin Rockな雰囲気も漂わせたご機嫌なインスト曲。ギターもよく歌っているが、小洒落たScatのChorusが飛び出しエレピやギターのカッティングが心地良く響いていく。
煌くエレピで始まるRomanticな“Razmišljanje”。都会的で洗練された雰囲気が漂い、心地良いエレピ・ソロで夢見心地になってしまう。泣きには知らず艶っぽく官能的なギター・ソロもイイ感じ。
“Oaza”はExoticなフレーズを吹くSaxで始まり、Balkanな異国情緒を渇次させるJazz Rock。Vocalも力が入った熱唱タイプではなく、イイ感じで盛り上げていく。
“Brez Besed”はエレピとMellotronが中々イイ感じのインスト曲。Themeを吹くSaxはチョイありがちではあるが、跳ねるエレピ・ソロや小気味よいギターのカッティング、ウネるベースがご機嫌なJazz Rock.。泣きや抒情に走らず、あくまでも渋い仕上がりに好感が持てる。
Mysteriousuなイントロから惹きこまれる“Svit”はScatが絶品で、ギターのカッティングを合図にLatin Rock気味のJazz Rockに突入するところも最高。
アルバム最後を飾るのは“Sled Sonca”。こちらもBalkanの香り漂う異国情緒がSpiceとなってイイ感じ。Saxソロは中々頑張っている。派手さもないが、最後まで淡々とCoolに硬質な演奏で魅了するところが良い。
(Hit-C Fiore)