Franceが生んだZaoというバンドは勿論、各メンバーの活動も含めて、それぞれずっと追いかけてきたのであった。中でもやっぱり、バンドの中心的存在であったHungary出身のYochk'O Sefferと鍵盤奏者François "Faton" Cahenは、70年代から80年代にかけて注目すべき数多くの作品を生みだしてきた。残念ながらCahenは2011年に鬼籍に入ってしまったがSefferは現在も活動を続けている。その2人がMagma~Univeria Zekt、Zaoに続いて三たび組んだのが、本日ご紹介するEthnic Duoである。実は昨年、Ethnic Duoの80年5月に開催されたLe Mans Jazz Festivalでの演奏を収録した『Tarass Boulba』という発掘音源がリリースされたのであった。十数年前にも『En Public Au "Chêne Noir" D'Avignon, 1980』という80年のAvignonでの素晴らしい未発表Live音源が発掘されていたのだが、それに負けず劣らずのご機嫌な内容であったのである。Zaoが解散して、それぞれの道を歩みだした2人がこのEthnic Duoで再会して生み出されていった音楽は、深遠で異国情緒漂いつつも幻想的でどこか国籍不明の得体の知れない魔境の中に迷い込んでしまったかのごとき謎めいた世界を展開していく。Bela Bartokが祖父でJohn Coltraneが父であると語るYochk'o Sefferは幼少時からピアノとSaxの教育を受け、Parisに移り住むと、Conservatoire de ParisでNadia BoulangerとOlivier Messiaenに学び、Sax奏者Marcel Muleの下でSaxを極めた男である。Thelonious MonkやJohn Coltrane、Ornette Colemanに影響を受け、Pierre Boulezや12音技法やSerialismをも研究した、音楽のあくなき探求を続けた男は、またBeaux-Arts de Parisに入学し彫刻、絵画も学んでいる。そんなSefferが盟友Cahanと組み、ピアノとSaxのDuoというSimpleな編成で、自分たちのルーツともいえるFolkloreな世界をDeepに掘り下げつつ新たな地平を切り開いているのが素晴らしい。
『Ethnic Duo』はFrançois Cahen - Yochk'o Sefferが80年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は “Desert Of Gobi Sands”。François Cahenが弾くMysteriousで妖しげなElectric PianoにのってYochk'o Sefferが、異国情緒たっぷりに吹きまくるのだが、この東欧的なDarkで硬質な響きと正にタイトルのごときGobi砂漠を思わせるDeepでスケールの大きい国籍不明の謎めいた世界へ惹きこまれてしまう。
“Majestic Building”は14分越えの大曲。CahenのPianoで始まるが、岩のようなChord弾きと東洋的な旋律が、これまたExoticな味わいを感じさせる。そしてSefferのSoprano Saxが自由奔放に飛翔していくと、徐々に過熱していく2人の圧巻の掛け合いを経てゆったりとした深遠な雰囲気、そして突如けたたましいピアノ連打などスリリングな緩急自在の2人の演奏に脱帽。
“Mancika”はCahenのPianoをバックにSefferがお得意のEccentricなScatを披露する2分足らずのナンバー。
“Witch And Gnome”はHermeto Pascalを思わせる変拍子にのったスリリングな旋律の嵐と静謐なEnsembleといった動と静のContrastが2人で鮮やかに展開されていくが素晴らしい。
おだやかでElegantなOpeningから徐々に深遠で摩訶不思議な世界へ導かれていく“In Jordan's Garden”。
Cahen作の“My French Roots”はタイトル通りRavelらImpressionistやLa Jeune France~現代音楽を思わせる中にCahanらしいRomanticで謎めいた部分も見え隠れする。
東欧の哀感漂うSefferのSax独奏“I Remember Miskolc”。
アルバム最後をシメるのは“Franco-Hungarian Dance”。心地良いピアノのRiffとExoticなSaxの旋律が絶品の味わい。
(Hit-C Fiore)