Jazz Studio 3/John Graas | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  これまた変わり種。JazzにFrench Hornという、しかもWestcoast Jazzという音盤のご紹介。John GraasはIowa州Dubuque出身のFrench Horn奏者。元々Tanglewood Music Centerでロシア人作曲家/指揮者のSerge KoussevitskyにミッチリClassical Musicを学んだGraasであるが、Jazzに興味を持って50年代のWeast Coast Jazzの流れに加わっていく事になるのである。 所謂、即興演奏を重視してBluesやGospelといった黒人音楽独特の音楽的要素を強めていった漆黒のHard Bopに対してHollywoodを中心に映画産業が隆盛を極めていた頃にArrangement重視の洗練されたEnsembleで一時代を築き上げていたWest Coast JazzはClassical Musicの流れも汲み、所謂Third StreamなるJazzも生み出されていった。40年代前半 Indianapolis Symphony OrchestraClaude Thornhill Orchestraに在籍し、Arrangerとしての才能も有ったGraasがStan Kenton Orchestraに加入した50年代に突入するなり、演奏者、Composer、Arrangerとして引っ張りだこの売れっ子となったのは必然的であった。GraasはJazzには珍しいFrench Hornの名手ではあるが、自らのソロをゴリ押しするのではなく、共演するMusicianの各演を引き出す才能も持ち合わせてたことが興味深い。現代音楽をJazzに取り入れたりといった理論派なところもあるにせよ、GraasはCool Jazz特有の洗練と心地良さを理解したEnsembleを主体に考えるバランス感覚に富んだMusicianであった。Shorty RogersやMaynard Ferguson、 Billy May、Pete Rugolo、Mel Lewisといった一流どころとの仕事を通じてGraasは50年代を駈けぬけ、60年代にはHenry Manciniや Bobby Darin、Heinie Beauと守備範囲を広げていったが、62年にこの世を45歳で去ってしまった。本作はWest Coast Jazzの名手たちが結集次々と名演を披露する作品となった。ドラムスのLarry Bunker、ピアノにAndre Previn、Marty Paich、ベースに Curtis Counce、Red Mitchell、Alto SaxにCharlie Mariano、TenorにZoot Sims、BaritoneにGerry Mulligan、Jimmy Giuffre、TrumpetにConte Candoli、Don Fagerquist、ギターにHoward Robertsという圧巻のメンツである。

 

 『Jazz Studio 3』はJohn GraasがDeccaから55にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はGraas自作の“Mullinganesque”。軽快にSwingするご機嫌なナンバー。ソロの先発を飾るのはGraasで、Howard Roberts流麗に弾き倒すギターも絶好調。Marty Paich小粋なピアノもご機嫌である。

My Buddy”はFrench Hornの響きを生かした牧歌的な仕上がり過ぎ去りし夏の昼下がりといった感じ。

再びGraas自作の“6/4 And Even”は小気味よいThemeのRiffに惹きこまれ、思わず指パッチン。相変わらずRobertsのギターが冴えてますなあ。Graasもイイ感じのソロで応戦。Paichのピアノもご機嫌だ。

Charleston”はNostalgicにSwingするナンバーCharlie MarianoのAltoやConte CandoliのTrumpet、Andre Previnのピアノも良し。

Rogeresque”もGraas自作の小洒落たナンバー。Conte CandoliのTrumpet、Charlie MarianoのAlto、RobertsのギターもWestcoastらしく冴え渡っている。

Jazz Sections From Symphony No1”は組曲型式。“Sonata Allegro”と“Scherzo”から構成される。この辺が如何にもClassical上がりのGraasらしさとでもいったらいいのだろうか。哀感漂うThemeで始まり、Graasのソロは勿論、RobertsのギターやCandoliのTrumpet、Zoot SimsのTenor Sax、Andre Previnのピアノのソロも盛り込まれてはいるものの、少々型にハマった演奏で残念ではある。個人的にはもう少し突き抜けたところがあっても良かったと思う。Westcoastらしい爽やかに整理され洗練された仕上がりであるから心地良く聞き流せるのではあるが。

最後を飾るのはRagtimeのピアニスト/作曲家のEuday L. Bowman作の“Twelfth Street Rag”。小気味よい演奏で後味爽やかに終わるのが良い。

(Hit-C Fiore)