Ezekiel/Itoiz | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 このジャケットが醸し出す雰囲気がなんともいえない。名も知らない今は存在しているのかどうかもわからない、どこか見知らぬ国の寂れた駅のホーム。何となく夢に出てきそうな風景である。SpainBasque地方から70年代後半に登場したItoiz3作目のアルバムは、ありそうでありえない儚い夢のような風景を描き出して幻想的で郷愁を誘う世界へと誘ってくれる。País Vasco(Basque州)独特の哀感が漂い、砂の城のように壊れやすい繊細さ素朴洗練されていないところが魅力である。彼らの音楽は、どうしてこんなに切なくどこか懐かしい気持ちを呼び起こすのであろう。Itoizの場合はElectricな楽器の演奏よりもAcoustic GuitarFluteSaxViolinいったAcoustic 楽器の響きが入ってくるところが好きだ。決して技術的に超絶技巧で目を見張るものではないし、どちらかといえば、たどたどしささえ感じられるものであるが、それゆえに無垢でLyricalな響きに心を奪われてしまう。Spain北部に位置しピレネー山脈の西側で大西洋のBiscay湾に面したBasque地方にある中世風の建物が点在するMotricoOndarroaの街の若者たちによって70年代後半に結成されたItoiz。BasqueのLabel Xoxoaから78年デビュー・アルバムItoiz』をリリースしている。LeaderでギタリストのJuan Carlos Pérez、ベースのJose Garate "Foisis"、鍵盤奏者のAntton Fernandez、Flute奏者のJoseba Erkiaga、ドラムスのEstanis Osinaldeという5人組2ndアルバムとなる本作ではベースがShanti Jimenez、ドラムスがMitxel Longaronに交代している。さらに、Sax奏者のCarlos Jimenez、Violin奏者のFran Lasuenが演奏に参加して、より情感を増した演奏に彩りを添えている。本作ではAcoustic楽器のEnsembleが前作より味わい深さを生んでおり、効果音子供の歌声の導入も効果を生んでいる。

 

 『Ezekiel』はItoiz80年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はギターが唸りSaxが鳴り響く“Ezekielen Prophezia”。Euskara(Basque語)による素人っぽいVocalViolinFluteがイイ味を出している。後半に子供たちの歓声効果音が被るところも雰囲気が出ている。

Acoustic GuitarのカッティングPiano素朴なVocalで始まる素朴で土くさい魅力に満ちた“Ezekielen Esnatzea I”。途中で加わるOrganFluteもイイ感じ。ソロを取るSaxやギター、ピアノも妙に垢抜けていないところが良い。最後に列車の通過音で唐突に終わる。

Acoustic GuitarのArpeggioViolinで始まる夢想的な“Ezekielen Esnatzea II”。途中からリズム隊がJazz Rock的な展開になりFluteやOrganがソロをとる。決して演奏技量は高くないが、これが雰囲気が出ていて実に味わい深いのが面白い。

タイトル曲“Ezekiel”はJuan Carlos Pérezによる優美なAcoustic Gitarの演奏子供たちのChoirが加わり祝祭感に満ちるところが最高。

Ezekielen Ikasgaia”はPianoとAcoustic Guitarの調べで始まりItziar Egileor哀感を湛えながらも凛とした歌声に惹きこまれてしまう。

Ezekielen Ametsa”もアコギの演奏子供の歌声が加わり雰囲気抜群。

Ezekielen Erantzuna”は前曲から継ぎ目なく続く朴訥とした味わいの曲。

アルバム最後をシメるのは列車の音で始まる“Ezekiel: Ia Maitasun Kanta Bat”。哀し気で少々たどたどしいViolinFluteSaxが織り成すEnsembleにVocalが加わり、異国の地に佇んでいる夢を微睡むようなWaltzでアルバムは幕を閉じる。

(Hit-C Fiore)