Victor Feldmanといえば大好きなSteely Danの72年リリースのデビュー・アルバム『Can't Buy A Thrill』から80年リリースの『Gaucho』まで、つまり彼らが一旦活動休止するまでの全ての作品に参加してきたMusicianとして強く記憶されている。Vibraphone奏者として、あるいは鍵盤奏者としてSteely Danの高い完成度を誇る、異次元空間に存在する時空を超越した幻想的で退廃的ともいえる架空都市を描き出す世界には無くてはならない存在であった。Joni MitchellやRickie Lee Jones、The Doobie Brothersのアルバムや大好きなFrank Zappaの『Lumpy Gravy』にもFeldmanは参加し、Miles Davisとの共演やCannonball Adderley、Shelly Manne、Howard Robertsのアルバムでもその名を見ることが出来た。Victor Feldmanは元々英国生まれの神童ともいえるMulti-Instrumentalistで、7歳の時にはその並外れた音楽性を世に知られるようになった。42年公開の映画『King Arthur Was a Gentleman』ではドラムを叩く子供時代のFeldmanの姿を見ることが出来る。North LondonのEdgwareの音楽の才能に恵まれた一家に生まれたFeldmanは父親がLondonに設立したFeldman Swing Clubでその神童ぶりを発揮し、2人の兄弟とTrioを組んで演奏活動を開始した。9歳でピアノ、14歳でVibraphoneを演奏するようになったFeldmanはRalph Sharon SextetやRoy Foxのバンドで演奏し、さらにはVic LewisやTed Heath、John Dankworthと共演している。50年代前半の英国を代表するSax奏者Ronnie ScottやTrumpet奏者Jimmy Deucharらとの共演を経てFeldmanは55年10月に米国へ移住することになるのである。それはScottの勧めであり、Woody Herman Herdに始まりBill EvansとTrioを組む前のScott LaFaroを擁した58年のリーダー作『The Arrival Of Victor Feldman』などWest Coastを中心に本格的な活躍が始まる。そして、TourよりもSession Workを優先する為にMile DavisからのFull-TimeでのGroup加入を断るのであった。しかし、それが上述のDanを始めとする素晴らしい作品を生み出すことになるのである。
『Departure Dates』はタイトル通り、Victor Feldmanが渡米し大活躍する前の55年にLondonでTempoにさまざまな編成で残した録音をCompileしたアルバム。2000年にJasmine Recordsからリリースされた。
まずは55年8月のVictor Feldman Septetでの演奏が6曲。TempoからVictor Feldman名義で同年『Septet』というタイトルで10"でリリースされていた作品を収録。TreumpetにDizzy Reece、Jimmy Deuchar、Alto SaxにDerek Humble、ピアノにTommy Pollard、ベースにLennie Bush、ドラムスにTony CrombieというメンツをバックにFeldmanのVibraphoneが大活躍。
アルバム1曲目ご機嫌なSwinger“Sonor”で幕を開け、小粋な自作曲“Brawl For All”、Reece作のご機嫌な“When ?”、思わず指パッチンの“Hand In Hand”、RomanticなBallad“Sunshine On A Dull Day”、鯔背な“Big Fist”。
続いては55年9月録音の『Modern Jazz Quartet』というタイトルでThe Victor Feldman Quartet名義にてTempoから10"でリリースされていた作品を収録。Piano TrioにFeldmanというQuartetで、ベースがEric Peterに替わっている。
ドラムスのTony Crombie作の4つのPartから成る組曲“Suite Sixteen”。涼し気なVibraphoneが心地良い“Monody”、PianoのRiffとVibraphoneによるThemeがご機嫌な“Minore”、Pastralな“Habanera”、最後は冒頭のThemeが繰り返される“Epilogue”。
Feldmanの抜群のセンスが発揮された大好きな曲“Time Will Tell”。Jimmy Van Heusen作のStandard“Deep In A Dream”で極楽気分。
Balladから軽快に展開する“Easy To Love”とドラマーAllan Ganley作の小洒落た指パッチン“Duffle Coat”。
最後はVictor Feldman名義で『Victor Feldman Big Band』というタイトルでTempoからリリースされた7", EPから収録。
“Introduction”に続いて疾走感に満ちた“Cabaletto”、長閑な“Elegy”、心地良く疾走しVibraphoneソロが炸裂する“Big Top”、“Maenya”。
(Hit-C Fiore)