Kick Off Your Muddy/The Graeme Edge Band | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  The Moody BluesのDrummer Graeme EdgeRay Thomasが2年前にこの世を去って、今やEdgeがバンドに残った唯一のオリジナル・メンバーとなってしまった。66年にギタリストJustin HaywardとベーシストJohn Lodgeの2人が加入して世界的なヒットとなったアルバム『Days of Future Passed』から、このバンドでは、フロントとなった新加入の2人がメインで、鍵盤奏者のMike Pinderが続く形となってアルバムの楽曲提供がされてきた。しかし、Ray Thomasも、そしてGraeme Edgeも、少なくともアルバムには必ず1曲は彼らのCreditによる楽曲が収録され、メンバー全員がアルバムへ楽曲提供という体制がPinder最後の参加作となる『Octave』まで続いてきたのである。Graemeは特に詩人としてもバンドに貢献してきたと思われる。World Tourが終了した74年の春にバンドは活動休止状態に入り、メンバーはそれぞれソロ・アルバムを発表していくことになる。そんな中でEdgeがGun~Three Man ArmyBaker Gurvitz ArmyのギタリストAdrian Gurvitz、ベーシストPaul GurvitzGurvitz兄弟と組んで制作されたのが本作である。これがAdrian GurvitzのギターとVocalが楽しめる、演奏良し楽曲良しの中々のアルバムに仕上がっているのである。Three Man Armyの『Two』のころから硬派なHard Rockから一歩踏み出し、英国的な抒情が増し、Baker Gurvitz Armyの頃になると、さらに米国西海岸風の音楽性も加わっていくAdrian Gurvitzの音楽性は自分にとっては結構ツボである。本作では元 ARCBell + ArcFrampton's Camelで後にIan Dury And The Blockheadsに加わることになる鍵盤奏者のMicky Gallagherも参加しており、Moody Bluesを意識してか、CaravanJapanMike Oldfieldとの仕事で知られるMartyn FordOrchestrationも随所で派手に登場している。個人的には2作目となった『Paradise Ballroom』の方がFunky度が増して断然好きなのだが、本作もA面1曲目の始まり方が大好きで無性に聴きたくなる一枚である。

 

 『Kick Off Your Muddy』はThe Graeme Edge Band75年にリリースしたアルバム。GraemeとGurvitz、Micky Gallagherの演奏に加えて盟友Brian ParrishLesley Duncanらが参加したChorus陣も豪華だ。

アルバム1曲目“Bareback Rider”。幻想的なVibraphoneの響きで始まりHorn隊も加わり、Popで親しみやすいナンバーに仕上がっている。米国西海岸風のChorusも登場するが、やはりどこか英国的な抒情が感じられるAdrian GurvitzのギターとVocalが良い。

Adrian GurvitzのギターがHardにむせび泣くIn Dreams”。無駄に盛り上げまくるOrchestrationをバックに泣きのギターが炸裂していく。

Graeme Edge作の“Lost In Space”はAdrianもSoulfulに歌いSaxソロも飛び出し女性Chorusも加わり、これまた盛り上げ大会。

続いてもEdge作の“Have You Ever Wondered”。こちらは楽曲とVocalはPhilly Soulな香りも感じられるSweetなBalladであるが、FordのOrchestrationが、これまたバックでSymphonicに泣けとばかりに盛り上げている。

My Life's Not Wasted”はAdrian作の愛らしいMelodyが光るBritish PopFalsettoもまじえたAdrianの歌いっぷりが良い。

EdgeとPaul Gurvitzの共作The Tunnel”。まるで刑事映画のサントラのようなFunkyなインスト

BluesyなShuffleGew Janna Woman”はHorn隊やバタバタするリズム隊も含めてなんともイナタく、良い意味でダサカッコ良い魅力に満ちている。豪奢なOrchestrationやChorusをバックに鳴り響き、これが俺だとばかりに炸裂するSlide Guitarがイイ感じ。

これまたSlide Guitarがご機嫌の“Shotgun”。間奏のAcoustic GuitarHammondソロも良し。

アルバム最後をシメるのはEdge作のSymphonic PopSomethin' We'd Like To Say”。ギター・ソロも良い。

(Hit-C Fiore)