Le Voyageur Immobile/Bahamas | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  Heldonの『Stand By』やRichard PinhasChronolyseの参加で知られる重低音ベース奏者Didier Batard。この人の重く引き摺るようなベースは大好物である。Heldonに参加するギタリストAlain RenaudTriptyqueというPsychedelic Bandをやっていたり、Rocheというバンドに参加していた。そのBatardが参加していたこのBahamasには後にSpace Artを結成する鍵盤奏者Dominique PerrierとDrummerのRoger Rizzitelliが在籍していた。またギターのPatrice Tisonも後に多くのMusicianから引っ張りだこの売れっ子Session Musicianとして活躍することになる。要するにBahamasはフランスの実力派Musicianによって結成されたGroupであった。70年代にフランスの人気Singer-SongwriterChristopheことDaniel BevilacquaのバックバンドのメンバーでもあったMusicianが結成したのがBahamasであった。メンバー各人の演奏技術はそういうこともあって一線級である。しかし、この手のグループにありがちな事ではあるが、短命に終わってしまうのである。結局アルバムは本作1枚しか残すことが出来なかった。音楽的にはSynthesizerなどでGenesisあたりの影響を受けたProgressiveな要素を取り込み、当然演奏能力も高いしEnsembleもしっかりしたものであるのだが、演奏が達者なだけに多彩ではあるが音楽性が拡散されて的が絞れていない中途半端さと、いまひとつ強烈な個性に欠けるのが残念なところではある。これで楽曲も、これはという飛びぬけたものがあれば印象も違ったものになるのだが、それなりにまとまった良い曲ではあっても、ベタなところがない、それなりに洗練されたものであるがゆえに、強く印象に残りにくいところがあるのかもしれない。とはいってもConcept Albumのような全体の流れも考えられたもので、各人のプレイツボを心得たものなので一枚を通して安心して楽しめる作品となっている。

 

 『Le Voyageur Immobile』はBahamasが76年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目“Jimmy”。飛行機のプロペラ音をSEに使い、Dominique Perrierが弾く力強いピアノを中心に弾けるOpener。Patrice Tisonのギターも唸りを上げDidier Batardのベースも重低音でウネっている

バタバタしたドラムスにのってスケールの大きな演奏が展開されていく“Motel”。

フランス語のVocalが楽曲全体から醸し出される幻想的な雰囲気に一役買っている“Norway Samba”。Tisonの引き摺るようなSlide Guitarも効果を上げている。

バンド名のタイトル“Bahamas”はSynthesizerやギターが暴れまくるDancableなRock。エレピMoogがイイ味を出している。時代柄Discoなノリもご愛嬌。

Oscar Chesterfield”は古き良きBritish Popな雰囲気も醸し出す浮遊感のあるPopなナンバー。ここでもSythesizerとフランス語のVocalが独特の味わいを感じさせてくれる。

物悲しく抒情的なピアノから始まる“Bizarre”。Vocalが登場すると一転してノリノリでCatchyな展開に。70年代のGenesisのようなSynthesizerの使い方や緩急をつけた展開が微笑ましい。 後半のJazz Rockな展開でのTisonのギター・ソロもカッコイイし、ぶっとく低音で鳴らしまくるBatardのベースもイイ感じ。この後半の盛り上がりは文句なし。しかし、全体的には何かが物足りないのである。それがこのバンドが短命に終わったところなのかもしれない。

アルバム最後をシメるのは“Il Pleut Des Fleurs Sur Mon Piano”。これまたドタバタしたドラムスが緩急自在に叩きまくる中、Symphonicな盛り上りをみせて大団円。

(Hit-C Fiore)