しかし、この味も素っ気もないジャケットは、全くレコード会社は売る気があったのだろうかと、その姿勢を疑いたくなるような代物ではある。これまでに十分実績のあるベテランが、あえて出したのなら理由はある程度わからないでもないが、鳴り物入りでも何でもない全くの新人であるのだから。New Censationと名乗るこのGroup、一体何者なのであろうか?自分が所有している音盤にはProducerがVan MacCoyとクレジットされているだけで、メンバーについては何もクレジットされていなう。さて、その実態はといえば、Kapp Recordsからリリースされた“Since I've Lost You”やBay Soundからの“ Your Love's Gone Bad”の7" Singleで一部Northern Soulファンの間でCult的な人気を集めたSingerのClay Huntや夫婦Duoで知られるCindy & RoyのCyndi WallmanとRoy Wallmanが参加しているようだ。それにしても、当時いかにVan MacCoyが昇り龍のようにノリにのっていく時期だったとはいえ、これは無理があるのではないだろうか。逆に、相当な自信作ではあるまいかと購入を決意してしまったのだが、チョッと当てが外れてしまった感があるのは否めない。1曲だけ共作を含めてすべての曲はMacCoyの手によるものだが、Philliy Soul風あり、Motownっぽいノリもあったりと多彩ではあるのだが、アルバムの主人公の顔が見えてこないのがその原因かもしれない。メインでLead Vocalを担当しているGospelな雰囲気を漂わせた黒光りするVocalが魅力の男性Singerは確かに頑張っていて、イイ感じではあるのだが、お目当てのClay Huntの出番が1曲を除いてほとんどないのも自分にとってはマイナス・ポイントだ。とは言いながらも、この何ともイナタい魅力は捨てがたいものもあって、時々聴きたくなるのである。
『New Censation』はNew CensationがPrideから74年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目の“First Round Knockout”。余りにもイナタさ爆発のこのナンバー、チョイ暑苦しいVocalが意外にクセになる。Popな作風で、StringsもChorusもダサダサなんだけど、この垢抜けない音をバックに黒々とした男臭いVocalが熱くShoutするところが胸を打つのだ。
“Let's Get Back Together”は黒くHuskyな男性Vocalと男女Chorusのかけ合いがお見事なナンバー。
イントロの泣きのChord進行から惹きこまれる“I Was Made For You”。可憐な女性Vocalが絡むところが良い。男女のセリフも入って雰囲気タップリである。
“In So Many Words”はCyndi WallmanがLead Vocalを担当した泣きのBallad。チョイ大仰ではあるが、Falsettoなど中々頑張っている。ChorusやHorn隊と共にGospelの香りを漂わせながら盛り上がっていくところはイイ感じ。しかし、Clay HuntのLead Vocalはまだ出てこない。
心躍るイントロで始まる“I'm So Glad”は、ようやく登場のClay Huntの伸びやかでコクのある絹の肌障りのようなVocalが絶品のナンバー。
高揚感に満ちた“The Wings Of Love”。煌びやかなChorusとHorn隊が盛り上げつつ緩急つけた展開が面白い。
“I'm Bettin' All My Love”は爆発力のある黒光りするVocalが躍動するPhilly Soul。
“Everybody's Got A Story”はイントロからStringsやChorusの入り方までまんまNorman Whitfieldの世界をやっているのが面白い。
高揚感に満ちた“ I've Got Nothing But Time”。
アルバム最後をシメるのは“Come Down To Earth”。これまた60年代末の香り漂うChorusとサウンドがカッコイイ。
(Hit-C Fiore)