Shangri-La/Animal Nightlife | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  当然のことだが、バブルはいつかはじける。日銀が必死に買い支えて無理やり株高、好景気を演出してきた政策の限界が明らかになってきた。日銀が先月31日に金融緩和の副作用で追い込まれ、政策を見直しした。物価見通しは下方修正だ。ETFの買い方も見直しだ。日銀が“異次元緩和”政策の中で進めるETF購入で何と上場企業の4割で日銀が大株主になってしまっているのである(笑)。しかも、近年の株高は日本だけに限ったものではなかった。米、独、韓国など世界各国の主要株式指標が相次ぎ過去最高値を更新する中、先進国で更新していないのは日本くらいのものだ。日銀が一旦買い入れてしまったETFは、金融緩和政策が終われば、その出口戦略として売らざるを得ない爆弾だ。つまりETFによる株高演出はハリボテで博打でしかない。さらに、金融緩和で大企業は大儲けしてもベースアップや設備投資に使わず社内で留保してしまうために、物価が上昇しないのは当然なのである。5年も続く低金利で金融界の収益が急激に悪化していく副作用も大問題だ。将来の利益の先食い、金融界の利益を一部大企業に還流した見せかけの景気回復なのが明らかでありバブルはいつはじけてもおかしくないのである。

 

  80年代バブルな時代の東京の夜の世界というのは、その場にいた人間しか実感がわかないのかもしれない。後から写真やニュースや映画でその時代の様子を知っても、自分にとっては夢か笑い話のように感じるのである。実際にバブルがはじけてしまった後の東京のClub界隈で馬鹿騒ぎをやっていた無軌道な若者であったろう自分にとって、諸先輩方々からお話をうかがったりして想像するしかない、その様子は、そこにいなかった自分が憧れる60年代の東京ほど魅力的ではなかった。とは言いつつ、その遺産というものをしっかり享受してきたのも事実である。例えば音楽、UKのClubから生まれてきた音楽がほぼリアル・タイムで夜を彩っていたバブル時代の東京、それはさぞかし刺激的であったことだろう。本日ご紹介するAnimal Nightlife、如何にもなバンド名である。アルバム・ジャケットも80年代丸出しで、なるほどなと。Paul Weller兄貴絡みでなかったら、多分気にも留めることもなかったろう。しかし、やっぱり聴かず嫌いは損をする。80年代JazzLatinSoulやFunkや民族音楽がごった煮された英国の音楽がいかに魅力的であったか。Animal Nightlifeはそういった連中の中でも、あの時代にほんの一瞬かもしれないが華やかに咲いてパッと散ってしまったバンドなのだろう。艶やかであればあるほど、派手であればあるほど、終わってしまった後に残された、その祭りの後感が何ともいえない。Animal Nightlifeの、この唯一残されたアルバムを聴いていると、チョットそんな感傷的な気分にもなってしまう。確かにサウンドは、あの時代の何ともいえない人工甘味料を入れ過ぎたイナタいところがも顔を出す部分もあるけれど、楽曲は中々粒ぞろいの出来。特にアルバムA面1曲目“Native Boy”は最高。“Soul Deep”でお馴染みThe Council CollectiveLeonardo Chignoliのベースが素晴らしい。またSax奏者のBilly Chapmanはアルバム『Café Bleu』などThe Style Councilの作品に参加しており、来日公演でもメンバーとして帯同している。その辺もあってWeller兄貴Chorusでシングル“Mr Solitaire”に参加している。VocalAndy Polaris、ギターのFabianことSteve "Flid" Brown、紛らわしいがDrummerのPaul Wallerといったメンツが裏ジャケでもキメているのが微笑ましい。

 

 『Shangri-La』はAnimal Nightlife85年にリリースしたアルバム。キラキラSyntheと無条件に腰を動かすPercussionJazzyなSaxソロと艶やかな女性Chorusの組み合わせ、この微妙なダサカッコ良さは今でこそグッときますな。ジャンルも国籍も年齢も人種も関係なく楽しんでしまおうというClub Musicの姿勢が出ている作品。アルバム1枚で終わってしまったが、ある意味で80年代英国のClub Musicを代表する傑作である。

アルバム1発目は“Native Boy”。街の喧騒を伝えるSEで始まりエッチなベースと魅惑の女性Corusそしてご機嫌なHornのRiff。掴みはバッチリ、思わず惹きこまれてしまう最高のイントロである。Vibraphoneや気怠いVocal、掛け合いを演じる官能的な女性VocalもゾクゾクしてしまうMidnight Shuffle

Funkyなイントロと、やはり男女Vocalのかけ合い思わず腰が動いてしまうWaiting For The Bait To Bite”。短いけれどSaxソロもイイ感じ。

哀感漂う“Perfect Match”。これまた如何にも80年代的なキラキラSyntheサウンドが意外に新鮮で心地良い。

これまたワクワクするようなJazzyなイントロ気ままな夜遊び感覚満点の“Love Is Just The Great Pretender '85”。女性Chorusもイイ感じ。

この時代にしか生まれ得なかった洒脱なFake JazzInsomniazz”。Shuffle Baetにのって男性Vocalと女性Chorus、Saxのかけ合いがたまらない。

Latin風味の“Between Lovers”も自然に腰が動いてしまう。Bメロの展開が気持ち良い。

英国らしいChord進行にのってAndy Polaris粋なVocalが冴えわたる“Throw In The Towel (All Over Now)”。

アルバム最後をシメるのはMysteriousなイントロに続いてCoolなVocalと演奏が最高の“Bittersweet”。

Love Is Just The Great Pretender '85/Animal Nightlife

(Hit-C Fiore)