Soft MachineはCanterburyから登場したBandの代表的な存在である。しかし度重なるメンバー・チェンジによって、その音楽性は時期によって異なったものとなっている。そうはいっても根底に流れているのはいかにもCanterburyな知性的でちょっとはぐらかしたような独特の感性であり、オリジナル・メンバーがMike Ratledge一人となってしまった本作までは、かろうじてその香りは残っていたと言える。前作『Six』では脱退したElton Deanに代わって加入したGraham Collier Sextet~NucleusのOboe/鍵盤奏者Karl Jenkinsが早くも演奏のみならず作曲面でも才能を発揮してRiffを主体としたCoolでMinimalなJazz Rockを志向する新たな路線へと向かう傑作が完成された。しかし何と『Six』のリリース後にHugh Hppperが脱退してしまうのである。本作では『Fourth』や『Fifth』にDouble Bassで参加していたNucleusのRoy Babbingtonをベースに迎えて制作されている。ドラムスのJohn Marshallを含めてメンバー4人中3人が元Nucleus。つまり単純に考えるとSoft MachineのNucleus化ということになるかもしれないが、そこはRatledge先生の最後の意地とでもいうべき、Canterbury印のOrganがバンドを土俵際で踏みとどまらせている。それは同時に、本作でしか味わえない奇妙な魅力を生み出しているのである。アルバム1曲目の、わりとありがちなJazz Rockで梯子を外されつつ、2曲目以降はSpacyでMinimal、しかしどこかに英国的情緒とAmbientな風情が独自の味わいを感じさせる。次作『Bandles』は凄腕ギタリストAllan Holdsworthが参加したJazz Rock路線となり、ついにRatledgeは脱退してしまう。そこにはRatledgeがRobet Wyattや Kevin AyersやDaevid Allenと演奏していた頃は勿論、Elton DeanやHugh HopperがいたAbstractでFree Jazz色の強かった時代のSoft Machineの姿は全く感じられないのであった。
『Seven』はSoft Machineが73年にリリースしたタイトル通り7作目のアルバム。
アルバム1曲目“Nettle Bed”は7拍子と8拍子を組み合わせた変拍子のRiffにのってSynthesizerがソロで縦横無尽に暴れまくるナンバー。わかりやくすく、それなりにカッコイイ次作の布石となるJenkins作のJazz Rock。
続いてもJenkins作の“Carol Ann”。エレピとベース、Synthesizerが織り成す夢想的で心地良い音楽。
Ratledge作の“Day's Eye”。ここからA面最後まで切れ目なく続くメドレー形式の楽曲群がは個人的に本作の白眉。8/9拍子のRiffをベースが奏でエレピとTenor Saxが重なり合う。そこにRatledge先生のCanterbury印のOrganが鋭く切り込んでいくのが最高。
前曲から切れ目なく続きスリリングなキメが炸裂する、これぞSoft MachineのBone Fire”を挟み地下を這うようなNucluesなRiffが印象的な“Tarabos”。Jenkinsのソロ、そしてMarshallの怒涛のRoll攻撃にのってSharpなキメがトドメを刺す。
前曲の鍵盤の和音に被さっていく銅鑼とEffect処理されたPercussionが心地良い“D.I.S.”。効果音やテープの逆回転、Effectが摩訶不思議な空間を形成していくMarshall作のMinimalでExoticな小品。
B面はJenkins作のエレピが夢見心地のMinimalな小品“Snodland”で始まる。
続いてもJenkins作のMinimalな“Penny Hitch”は本作のもう一つのハイライト。6/8拍子のエレピと4拍子のベースがPolyrhytmで交錯する心地良いRiffにのってJenkinsのSaxやOboeが浮遊していく。
切れ目なく続く6/8拍子のJazz Rock Shuffle“Block”。RatledgeのOrganが暴れまくりCanterbury印をしっかり残しつつ
10/8拍子のRiffがNucleusな“Down The Road”。BabbingtonのEffectをかけたArcoソロがカッコイイ。
最後はAbstractな電子音が乱舞しエレピが舞うRatledge作の“The German Lesson”、Jenkins作の“The French Lesson”が切れ目なく続きアルバムは幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)