FranceのToulouseをベースに活動していたギタリストJean-Pierre Grassetは70年代にVertoなるBandというかProjectで活動していた。PotemkineのメンバーやMagmaの鍵盤奏者だったBenoît Widemannや、やはり後にMagmaに加わりJazz Pianistとしても知られるJean-Pierre Fouqueyらの協力を得ながらVertoとして2枚のアルバムを残している。Pôle Recordsから76年にリリースされた1stアルバム『Krig / Volubilis』は、Dominique DubuissonやXavier Vidal、Goubin兄弟といったPotemkineのメンバーが全面参加した作品で、MagmaやKing Crimson、Heldonあたりを思わせる攻撃的かつExperimentalな部分もある所謂 Zeuhl系のサウンドが印象的な作品であった。続く2ndアルバムとなる本作は残念ながら最終作となってしまったが、Benoît WidemannやJean-Pierre Fouqueyらが参加している。基本的には、前作の沿線上にあるアルバムであるが、時にGongやSteve Hillageを思わせるところも出てくる、これまた中々興味深いアルバムに仕上がっている。本作もToulouseのStudioで録音されている。Concert Dans L’œufなるMedievalなFolk GroupにいたGrassetが一体どのようにして、このような音楽性を持つようになったのか、全く分からないが、AbstractでExperi,entalな香りを放ちながら本作は意外と聴きやすい傑作に仕上がっている。Benoît Widemannが得意のMoogで存在感を発揮している他、楽曲まで提供しているのが興味深い。尚、GrassetはWidemannが79年にリリースしたソロ・アルバム『Tsunami』にも参加している。それにしてもVertoのアルバムが本作以降作られることがなかったのは残念である。それ位本作は期待を持たせる作品であったのだ。
『Reel 19 36』はVertoが78年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目“Comme La Folie”は『Larks' Tongues In Aspic』から『Red』時代のKing Crimsonを思わせる凶暴なギターとMinimalなフレーズが暴れまくるナンバー。
アルバム・タイトル曲:“19/36”はGrassetがギターやSynthesizerやEffectsを多重録音して作り上げている映像を思い浮かべてしまうサウンドが良い。
Funkyな“15 Pour Moi”は70年代後半のSteve Hillageを思わせる。ぶっとくウネりまくるベースやFunkyなギター・カッティングに疾走感に満ちたリズム隊、そしてBenoît Widemannの天駆けるMoogと心地良いOberheimの音色が最高。この曲はKahal Negümüraahtこと Widemannの作品。
“Danse A Cabanes”は魅惑の旋律を持つChampenoisに伝わるFolkloreをMoogやChoirをまじえて現代的に仕上げているのがお見事。
“Reel”はMinimalなSynhesizerのフレーズが心地良い9分近いナンバー。それが冗長に聴こえないところが素晴らしい。ArpeggioやLong Tneのフレーズを効果的に使ったGrassetの多彩なギターが素晴らしい。
Polyrhythmが冴えわたる“C'Est Loope”。ギターやDobro、Ring Modulatorなどが生み出すAbstractでExperimentalなフレーズが幾重にも重なり合いながら摩訶不思議で実に心地良い空間を創り出している。
アルバム最後を飾るのはPotemkineのGilles GoubinとGrassetとの共作となる“Carton Acidule”。これまた WidemannのMoogとギターが生み出すPolyrhythmが心地良いお気に入りのナンバー。
(Hit-C Fiore)