Psychedelicの波は世界中を襲い、各国でそれぞれの国独自の背景を持った特異性と結びつきながら、続々と個性的な作品が生み出されていった。ドイツでも、Psychedelicの波を受けた作品が数多くリリースされていくようになったのはいうまでもない。Domは、Düsseldorfで結成された、そんなバンドの一つである。メンバーは鍵盤とギターを演奏するHans-Georg Stopka、ギターとFluteを演奏するRainer Puzalowski、ベースで歌詞を担当するLászló von Baksay、PercussionとFluteを演奏するGábor von Baksayの4人組。4人全員がVocalを担当しているのもDomの個性だ。72年に結成されたという彼らはMinor Labelから限定500枚としてリリースされた唯一のアルバムとなる本作を残して消滅してしまったようだ。初期Tangerine DreamやAsh Ra Temple、Amon Düül一派のような混沌として即興性の高い抒情を廃したようなPsychedelicな音とはまた違った、Acoustic楽器とCollageやVoiceを効果的に使った、彼ら独自のある種、瞑想的で牧歌的とも言える音世界は興味深いものがある。とはいえ、Industrial系の先駆のようなNoiseのごとき効果音や電子音が突如挿入されたり、抒情的/東洋的なフレーズを奏でるAcoustic楽器の背後で不穏に鳴り響いたりするところが面白い。抒情に流されることもなく、かといってBad Tripに陥ることもない、この辺のバランス感覚は、この時代のドイツのバンドにしては実に見事である。ほどよくExperimentalでAbstractな、Lyricalな部分と浮遊感も持ち合わせた、ドイツでは中々得難い魅力を持ったバンドである。アルバム1枚で終わってしまったのが実に惜しい存在である。
『Edge of Time』はDomが72年にリリースした唯一のアルバム。
アルバム1曲目“Introitus”。素朴で優し気なAcoustic GuitarのArpeggioで始まりFluteが郷愁を誘う旋律を奏でる。Percussionが加わり、アコギの調べと共に、マッタリと進行していく。眠気を誘う心地良さに浸っていると途中で鐘の音が鳴り、テープの逆回転やSEが不穏な響きで聴き手を混迷させる。すると荘厳なOrganが鳴り始め、再びアコギの演奏が始まり、Percussionも加わる。いつの間にか彼らの創り出す摩訶不思議な世界へ足を踏み入れてしまっている。
“Silence”はOrganとPercussionの瞑想的で心地良い響きにしばし現世を忘れてしまう。話し声や効果音や電子音が鳴り響く中、Fluteが東洋的な旋律を奏でていく。怪しげな囁き、押し寄せて引いて行くの波のような音響に包まれながら異空間で彷徨い続けているようだ。
B面も2曲のみ。まず“Edge Of Time”は不穏な効果音に埋没しそうになるが、郷愁を誘うような牧歌的な旋律が流れてくる。電子音と東洋的な旋律が混在した摩訶不思議な世界。MinimalでHypnoticな音の中で童心に帰ったような気分になったかと思えば、またしても怪しい語りが入って、何か呪術的な空気感が漂い始める。Fluteの素朴な響き、どこまでもTripしていきそうになるのを現実の世界に惹き戻そうとする不穏な電子音。後のIndustrial糸の先駆とでも言いたくなるような音の塊が押し寄せてエンディング。
アルバム最後をシメるのは“Dream”。これまたVibraphoneが幻想的な響きを奏でるイントロからAcoustic GuitarのArpeggioとOrganによるMeditativeな演奏が続く。
(Hit-C Fiore)
