Faruk's Traum/Elastic Rock Band | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  そういえば犬ジャケといえば、このアルバムを忘れていたのであった。Elastic Rock BandはドイツのMissus Beastly周辺のJazz Rock Bandで、Munjuの鍵盤奏者Alex GrünwaldにMissus Beastlyの傑作『Spaceguerilla』で素晴らしいドラミングを披露していたJan Zelinka、それにギタリストのWolfgang Fahr、ベース奏者のMatthias Krügerを加えたいう4人組である。MunjuはMissus BeastlyのSax/Flute奏者Jürgen Benzが結成したバンドでGrünwaldは78年にリリースされた2ndアルバム『Moon You』に参加していた。本作はMissus Beastly周辺のメンバーの参加、Schneeballからのリリースということもあったが、ジャケットにも惹かれて手に入れたのだった。結果としてやっぱりJan ZelinkaのDrumsが最高であった。1曲を除き全曲Grünwaldの手による楽曲で、やもすれば70年代後半~80年代前半のJazz Rock/Fusionにみられる、聞きやすく爽やかで、メンバーのそれなりに高い演奏テクニックを披露するだけになりそうなところを欧州らしいCoolな部分とEmbryo/Missus Beastly関連バンド特有の多様性に満ち捻りのある構成と躍動感あふれるリズム隊浮遊感に満ちEdgeの立った上モノによる奥の深いEnsembleが救っている。アルバム1枚で消滅してしまったが、この時期のApril/Schneeballの音盤は、やはり面白い作品が多い。本作ではSunbirdsの『Zagara』にも参加していたPolandのSax奏者Leszek Zadloがゲストで数曲に参加して彩りを添えている。鍵盤奏者のAlex Grünwaldは後にベーシストWolfgang SchmidとWolfhoundなるバンドを結成したりFlute奏者Lenny Mac Dowellの『Live Tapes』に参加したりしている。

 

 『Faruk's Traum』はElastic Rock BandがSchneeballから79年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目“Sommertag”はWeather Repotの影響が強く出たナンバー。ぶっとくウネるMatthias Krügerのベースとキレの良いJan Zelinkaのドラムスが最高だけど、Leszek ZadloのSaxもイイ感じ。

Glolok's Dance”は疾走感に満ちたZelinkaのドラムスが炸裂する。Wolfgang Fahrのギターが唸りGrünwaldのエレピ・ソロが心地良く跳ねまくる。それにしてもド迫力の Zelinkaのドラミングが素晴らしい。

アルバム・タイトル曲“Faruk's Traum”はGrünwaldの流麗なピアノのArpeggioで始まる9分越えの曲。全体にCoolで清涼感漂う欧州Fusionな作風で Fahrのギター・ソロも心地良い。

Point Of View”はMatthias Krügerベース・ソロが素晴らしいMysteriousな曲調のナンバー。  こちらも9分越えながら長さを感じさせない佳曲。GrünwaldのSpacyなSynthesizerとCoolでキレの良いタッチが心地良いピアノ・ソロが冴えわたる。Fahrのギター・ソロは適度な泣きもまじえつつ端正にまとめている。この曲のみWolfgang Fahrの作品。

Für Carlos”はエレピとSynthesizerによる静謐で謎めいたイントロからベースとSynthesizerのUnison、そして躍動感に満ちたSamba調のリズムに展開しピアノ、ギターとメンバーのソロが飛び出す。これまた70年代後半~80年代前半の欧州Jazz Rock/Fusionにはお約束的な構成とはいえ、やっぱり燃えますなあ。Leszek ZadloのSaxもご機嫌で、途中の謎めいた展開も素晴らしい。

アルバム最後をシメるのは一転して穏やかでRelaxしたUnsere Altbauwohung”。Fahrのアコギが心地良く響き、ZadioのSaxも力の抜けたGentleな吹きっぷりが良い。

(Hit-C Fiore)