Patterns of Jazz/Cecil Payne | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  Cecil Payneは大好きなBaritone Sax奏者の一人であるが、Pepper Adamsのようにゴリゴリと吹きまくるでもなく、作編曲家としても超一流のGerry MulliganのCoolで洗練されたプレイともまた違った、人間味を感じさせる柔らかく温かいToneBop魂に満ちたフレーズを紡ぎ出していくところが魅力である。Bebop黎明期から活動していただけあって、筋金入りのBoppishなフレーズが飛び出すが、豪快に、あるいは派手にテクニックを駆使して吹きまくるでもなく、Payneはある意味素朴ともいえる、その語り口で聴き手を魅了する。New YorkBrooklyn生まれのPayneは13歳でSaxを手にし、プロとなって初めてのレコーディングはJ. J. Johnsonとの仕事であった。40年代Roy EldridgeBilly Eckstineのバンドで活躍し、Dizzy Gillespieとやる頃にはSwingからBebopへの変動期であり、Payneのプレイ・スタイルも変わっていった。50年代にはTadd DameronやIllinois Jacquetと共演しているが、Payneにとっては、同じBrooklyn生まれの一癖あるピアニストRandy Westonとの共演が大きかっただろう。またPayneのアルバムには、『Brooklyn Brothers』のように十代の頃からの付き合いで、生涯ずっと音楽仲間であり友人であったピアニストのDuke Jordanとの共演作が何枚もあり、その名コンビぶりが実にイイ感じなのである。あの熱く激動のBebopの時代を駈けぬけた戦友同志というか、過剰な装飾やこけおどしなど無用と言わんばかりの無駄をそぎ落とし風格独特の美意識を感じさせる二人の演奏には何といえない味わいがあるのである。こういう関係というのはいいもんですな。1stリーダー・アルバムとなる本作でもJordanのピアノが実に好サポートでPayneを盛り立てつつ存在感を発揮しているのが素晴らしい。またJordanと40年代からCharlie Parker Quintetで共演してきたTommy Potterのベースもご機嫌だし、やはりParkerのバンドにいたドラムスのArt Taylorも的を得たプレイである。こういう理想のリズム隊を従えてのOne HornによるA面に対しB面ではTrumpetのKenny Dorhamを迎えてのQuintetによる演奏となっている。これがまた指パッチンの熱気に満ちたご機嫌なHard Bopなのである。

 

 

 『Patterns of Jazz』はCecil Payne56年にSavoyからリリースしたアルバム。

アルバム1発目はご機嫌なSwingerThis Time The Dream's On Me”。心地良いWalking Bassにのってコテコテではなく、あくまでも爽やかにBop魂が炸裂。Tommy Potterのベース・ソロもイイ感じ。

Duke Jordanの深みを感じさせるピアノで始まる“How Deep Is The Ocean?”。むせび泣くPayneのBaritoneにグッとくるものがある。そしてJordanのピアノ・ソロ沁みますなあ。この零れ落ちるようなDandyismに酔いしれる。

ピアニストRandy Weston作の“Chessman's Delight”。哀感漂う旋律を落ち着いた演奏で聴かせてくれる。この素朴なモッサリ感が味なのだ。

Payneオリジナルの“Arnetta”はTaylorお得意のAfro-Cubanなドラミングにのって心地良くSwingするご機嫌の指パッチンJazz。Jordanの玉を転がすようなピアノも最高。

ここからはB面でKenny DorhamのTrumpetを迎えての演奏となる。再びWeston作の“Saucer Eyes”。こちらはDorhamのTrumpetとの2管による高揚感に満ちたThemeが最高なナンバーでJordanやPayneは勿論、DorhamのTerumpetが生き生きとしている

Man Of Moods”はPayneとJordanの共作。ここでもDorhamは絶好調。Minor KeyのUp TempoでDorhamが躍動する。これまでのPayneとJordanによる、良い意味で落ち着いた渋味のある演奏に、さらなる刺激を加えてバンド全体が一気にHard Bopらしい活気と熱気に満ちた演奏で盛り上がる。

Bringing Up Father”はPayne作のご機嫌なBlues。もうこうなったらHard Bop魂全開の指パッチンである。

最後をシメるのはGillespieの“Groovin' High”。全員が一体となって絶頂へ上り詰めていくような熱気に満ちたこれぞHard Bopという演奏が最高。

(Hit-C Fiore)