これはジャケットが全てを現しているというか勿論、中身の音楽もバッチリ自分のツボという奇跡的なアルバムである。繊細で抒情的な部分とJazzやFunkの要素とClassicalな旋律を巧みに織り込みながら高い技巧を駆使した複雑な展開がRock的なDynamismを生み出していくところはGentle Giant(以下GG)の強い影響を感じさせる。70年代のBrasilのRock ProgressivoのSceneからは数々の才能豊かなグループが登場したが、Terreno Baldioは演奏技術や楽曲、EnsembleのQualityの高さにおいては一歩抜きんでた存在であろう。ギタリストMozart Mello、鍵盤奏者Roberto LazzariniにVocal、PercussionのFusaことJoão Kurk、ドラムスにはJôことJoaquim Correia、ベースにはJoãoことJoão Ascençãoという5人組。Live Sound Operator専任としてClaudio Guzelaという人物もグループに帯同していた。Terreno BaldioはPolyrhythmを取り入れた捩じりまくったMagicalな展開がモロにGGな部分が目立つもののBrazilらしさも所々に感じさせるところが良い。とはアルバム全体に伺えるGG愛、GG命の姿勢は逆に潔くて清々しささえ感じるというのは贔屓目だろうか。GGもそうなのだが、さまざまなジャンルの垣根を飛び越えて高い技巧に裏打ちされた複雑で綿密なEnsembleを、さりげなく聴かせることに命をかけているところがあるが、Terreno Baldioもその精神を忠実に受け継いでいる。翌年にベース奏者を交代してリリースした2ndアルバム『Além Das Lendas Brasileiras』も、本作より若干Brasil色が強まった素晴らしい傑作となっている。結局、公式アルバムはこの2枚しか残していないようだが、ギタリストのMozart Melloは高い演奏技術を生かしてその筋では有名なMusicianとして活躍を続けている。
『Terreno Baldio』はTerreno Baldioが76年にリリースした1stアルバム。正に"Brazilian Gentle Giant"の名に相応しい作品である。
アルバム1曲目“ Passaro Azul”。カッテイング・ギターとXylophoneとUnisonでThemeの旋律をベースが奏でピアノも続く。Mozart MelloのFalsettoのVocalとギターの弾き倒しが雰囲気を盛り上げていく。リズム隊は地味ながら心地良くBottomを支えている。
イントロから抒情的なギターで心を奪われる“Loucuras De Amor”。FusaのGentleなVocalがChorusと共に典雅でClassicalな要素を含んだ曲調にマッチしている。
FunkyなRiffがGGを思わせてカッコイイ“Despertas”。抒情的なVocalの旋律もGGのKellyみたいだとだと思っていたら、3拍子に変化して躍動するリズム・チェンジも殆どGG。Synthesizerのソロもカッコイイ。
水の効果音とSpacyなSynthesizerから始まる“Agua Que Corre”。Funkyなベースラインが5拍子を奏でピアノとギターがスリリングに絡んでいく。Magmaを思わせるScatとハイトーンのVocalが炸裂し、ひたすら繰り返される。ここでもGGのKellyを思わせる典雅でGentleなVocalが最後を締めくくる。
これまたGG風のイントロで始まる“A Volta”。BrazilらしいPercussionを上手く使って疾走感に満ちた展開が始まるも、複雑でスリリングなキメを挟みながら次々に展開が変わる捻りのきいた展開はやはりGGの影響が強く感じられる。
続く“Quando As Coisas Ganham Vida”も3拍子と4拍子が入り混じるGGのTaste濃い小曲。ここまで潔くGGの方法論を徹底してくれると御見事としかいいようがない。
“Este É O Lugar”にいたっては、もはやGGのCoverと言っても良い位のPolyrhythmと捩じりまくったMagicalな展開がGG精神に満ちた作品。
アルバム最後を飾るのは“Grite”。Classicalな旋律を変拍子で奏でるところが面白い。
(Hit-C Fiore)